佐藤俊斗 × ポートレートVol.12|光で作り出す美しさを表現。スタジオ撮影編

佐藤俊斗
佐藤俊斗 × ポートレートVol.12|光で作り出す美しさを表現。スタジオ撮影編

はじめに

今回のテーマは、初となるスタジオでの撮影テクニック。
なぜ今回スタジオをテーマに選んだかというと、僕自身、仕事の幅が広がっていくにつれて必然的にスタジオでの撮影が多くなってきたからです。

スタジオといっても、自然光が綺麗に入る場所もあれば、ファッションを撮影するようなシックでオシャレな家具が置いてあるようなスタジオなど多種多様。

そんな中で今回は、シンプルかつ、ライティング一つで作風が変わる「白ホリスタジオ」で撮影してきたので、ライティングの方法などを詳しくご紹介していきます。

シンプルで美しい繊細な自然光を表現したライティングと、上品な艶感を演出したビューティーの2パターンをテーマに、スタジオでしか撮影できない作品をご紹介していますのでぜひ最後までご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/4 ISO200

自然光ライティング

白ホリスタジオがどのようなスタジオかは皆さんご存知でしょうか。

とてもざっくり言うと真っ白で何もない空間。
上記でお話ししたような自然光が入る環境ではなく、またオシャレな家具なども基本的にはありません。
ということは、真っ白い何もない空間である白ホリで人物を綺麗に撮影するためには「光を一から作る」必要があります。
イメージに合わせた光量や、光を当てる角度や高さ、さらに光の硬さや当てる距離感など全てが重要な要素になっています。

その中でも特に僕は「光の硬さ」と「距離感」を重要視していて、それが自分の好きな質感を作り出す第一ステップです。
先程お伝えしたように、光量や角度などによっても質感が変わってくるので一概には言えませんが、僕の場合は「柔らかめかつ、芯のある光源」をメインライトにして組み立てていくことが多いです。

やや矛盾した内容ですが、写真を用いて実際に説明していきましょう。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/4.5 ISO200

こちらの写真は何灯の照明を使用しているでしょうか?

正解は2灯です。
ライティングを組む上での基本的な考え方として念頭に置いてほしいのが、ライティングは太陽と同じ原理ということ。
作品のメインとなる光源を決め、その光によってできた影をどのようにアプローチするかが大切になってきます。

面光源と点光源

今回目指したのは、透明感あふれる美しさ。
光は基本的に硬いものですから、柔らかい光を作り出す為には、どのアクセサリーを使用してどのようにディフューズするかが大事になってきます。

肌の透明感を出すには、自然光のような大きくて柔らかい光を作ることが必要なので、紗幕(しゃまく)という薄手の幕を使用し、被写体のやや左斜め前にセッティングしました。

優しくて綺麗なカーテン越しの光のように、紗幕を使うことで広く拡散された柔らかい光を作ることができます。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/4.5 ISO200

影へのアプローチ

メインライトを決めた後、次に大切なのが影へのアプローチ(フィルライト)。
今回はメインライトによってできた顔右側の影を、どのように持ち上げるかが重要になります。

この時、右側に白カポックを置いてみたのですが、それだけだと影がまだ暗い印象だったので、カポックに向けて色温度を合わせた定常光を1灯、光量を50%で入れてみました。

ではなぜ、カポックに向けてライトを入れたのでしょうか?
それは、カポックに入れることで反射したバウンス光が、面光源としてナチュラルで大きな光になるからです。

次に、背景の明るさにも注目してみると、明るく持ち上がっているように見えませんか?
この背景の明るさや色味を作るのは、被写体をどこに立たせるかがとても重要です。
壁に寄りすぎても背景に影が写ってしまい、前に出過ぎても背景に影が落ちるので暗くなってしまいます。

今回は比較的狭めなスタジオでしたので光が回りやすかったこともあり、背景から1.5mほどのところに立ってもらいました。このようにスタジオの広さに応じた光量や距離感調整もとても大事なポイントです。

ビューティーライティング

では次に、こちらの写真をご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/11 ISO250

テーマはビューティー。

誰もが一度は憧れるビューティーの撮影では、とても繊細でより計算し尽くされた光を作る必要があります。
いわゆるストロボは瞬間光といわれ、定常光と比較しても光量が桁違い。
そのためビューティーはもちろん、ファッションや広告の撮影など幅広いシーンで使われる照明機材です。

今回のライティングは、ストロボを2灯使用しています。
普段は1灯で撮影することもありますが、そこにもう1灯プラスすることによって格段に上質な肌感を表現することができます。

今回はストロボにそれぞれMとLサイズのアンブレラをつけて撮影しました。

次の写真をご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/11 ISO250
■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/11 ISO250

ここでのポイントはサイズ違いということ。被写体の目の中を見てみると、アイキャッチが2つあるのが分かりますよね。
左上の大きく見えている光、これがメインライトで右下にあるのがフィルライト。

メインライト自体、瞳に映り込んでいるものは大きく見えるのでLサイズかな?と思った人もいるかもしれませんが、これは距離感によるもので実はMサイズのアンブレラ。

メインライトは被写体の正面左上、そして被写体から近い距離で打ち、フィルライトは正面右下から、被写体から離した距離で打っています。

ここで大切なことはメイン、フィルライトの「光の芯」をしっかりと被写体に合わせること。
このように配置にすることによって、1灯の時より更に光量が増し、さらにメインライトでは補えなかった首元などまで光を照らすことができます。

メインライトは、少しポイント光になるような小さめのサイズを選ぶことが大切です。
「やや硬めで芯のある光」を当てることで、肌に艶感を与えてくれます。

フィルライトは、メインよりも一回り大きなアンブレラを使用するのがポイント。LLサイズ、もしくはまた別のアクセサリーを使用するとまた違った光質になります。

このように2灯の光を、ほぼ真正面から左右の高さや位置を変えて打つことによって、明暗差がナチュラルで美しい肌質を表現することができます。

さらに、ビューティーの撮影ではよく使用されるテーブルを配置して首元から顎のラインまで影を持ち上げつつ、白カポックを被写体の左右に置くことでより光が回る環境を作りました。

そして今回は、被写体の細かなディテールや美しさをより引き立てるために、背景には光が回らないよう、1カット目とは距離感を変えてやや手前(背景から離れた位置)に立ってもらい撮影しました。

それにより、背景がグレーに落ちて被写体とのコントラクトが綺麗な写真になっています。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 f/11 ISO250

おわりに

今回はスタジオ撮影のこだわりをお話してきましたが、いかがでしょうか?

僕が実際に仕事で実践している一部の作例ですが、ライティングは奥が深くまだまだ無限大です。
撮影環境やシーン、作品のイメージなどに応じて「どのような光を選択し表現できるか」がとても重要だと思います。
皆さんも自分好みの質感を見つけつつ、様々な表現に挑戦してみてください。

 

 

■モデル:茅乃えれな

■写真家:佐藤俊斗

 

 

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