佐藤俊斗 × ポートレート vol.3|被写体の美しい捉え方

佐藤俊斗
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はじめに

桜のシーズンはあっという間に過ぎ去り、暖かい気温と心地よい風が清々しく感じられる初夏となりました。連載3回目となる今回のテーマは「被写体の美しい捉え方」で、梅雨入り前の不安定な天候の際にも安定して撮影がしやすいスタジオでの撮影になります。

この日の天気は曇り。曇りの日ならではの柔らかい光で、しっとりとした儚げな雰囲気を演出しました。

モデルは、女優の永尾まりやさんにご参加いただきました。美しく切り取るためのポイントや細かな拘りを詳しく解説していきますのでぜひ参考にしてみてください。

撮影場所についての考え方

皆さんは、被写体を美しく撮影したいと考えた時にどのような場所を選んで撮影しますか?

私の場合は、「自然光が綺麗なスタジオ」を選び撮影を行っています。スタジオはロケ撮影とは異なり撮影環境に強く左右されない場所であり、イメージ通りの撮影を行いやすく自分自身の切り取り次第で、表現の幅を大きく広げることが出来ます。

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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/2.8 1/160秒 ISO400 焦点距離70mm
■モデル:永尾まりや

まず1枚目。上の写真をご覧ください。

被写体を美しく切り取るためにはまず、どの角度からどのように映すかを考えながら撮影をする必要があります。正直どの角度から撮影しても綺麗だったのですが、その美しさをより表現できるベストな角度を探りながら仰向けになってもらい、儚げな視線と手元に動きをつけて撮影しました。

ここで用いたのはクロスフィルターです。クロスフィルターを使用することによって肌の質感を柔らかく捉えることができ、ふんわりとした春夏らしいメイクや衣装の雰囲気をより一層引き立てることができます。そして光の向きは半逆光で捉え、背景の奥行きとバランスで立体感を演出しています。

1枚の写真に対する考え方として、被写体を美しく捉えながらも、どれだけ写真としての魅力や自分自身の拘りを表現出来るかで、写真の完成度が左右されるので幅広い視野を持って写真を撮ることが大切です。

美しさを表現する要素

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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/2.8 1/125秒 ISO400 焦点距離70mm
■モデル:永尾まりや

次に、上の写真をご覧ください。こちらの写真では拘りポイントが何点もあるのですが、予想してみてください。

意識したポイントは写真の角度や余白、視線と表情の切り取り、ポージング。それぞれ細かな要素が詰まっていますので項目ごとに詳しく解説していきます。

・角度と余白
寄り写真において、実は意外と難しいのが切り取るバランスです。そもそも寄り写真とはどのくらいの画角から撮るのが寄りなのか?そして焦点距離どのくらいで切り取るのが最適なのか?

それは撮影者や撮影環境によっても大きく変わってくると思いますが、今回の場合は脚立を使い、真上から70mmの焦点距離で切り取りました。

この際に被写体を美しく捉えるポイントは以下の2点です。
・顔周りに余白を作ること
・顔の向きに角度を付けて切り取ること

余白を作ることで、顔周りがスッキリとした印象になりバランスの取れた構図になります。アングルにおいては、角度を付けて撮影することで顔立ちに立体感と奥行きが生まれてコントラストをはっきりと付けることができます。

・視線と表情の切り取り
視線、表情の切り取りにおいてはとても奥深くその視線一つで印象が決まり、表情は表現そのものを伝えるとても重要なものです。カメラ目線でも、永尾まりやさん特有の儚げな視線と言葉では表現出来ない雰囲気をしっかりと逃さないよう、この瞬間を切り取りました。撮影する際のポイントは、目の力などが自然と抜けた曖昧な瞬間を狙って撮影することを意識しています。

花を取り入れる

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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/2.8 1/200秒 ISO400 焦点距離70mm
■モデル:永尾まりや

美しさを表現する上でのプラスアルファの要素として、花を取り入れて撮影するのも1つの表現に繋がります。今回は季節を意識して初夏らしい青色の花を取り入れてみました。

花を入れるメリットは被写体を引き立てる要素の他に、季節感やメイクの色味を映えさせることも出来ます。花選びの際は、直感で選んで花だけが悪目立ちしてしまったり、逆に地味すぎても良くないですよね。衣装やメイクの色味、被写体の肌質などにも合わせた花を選ぶことが重要と言えるでしょう。

この写真ではあえて顔の角度を思いっきり反転させて切り取ってみました。
花を添えて撮影することにより肌の透明感やメイクの色味が際立ち、世界観のある写真に仕上がりました。
上記で説明した余白や角度などの大事な要素も抑えてますので、その辺りも含めて写真をご覧ください。

動きを付けて空気感を切り取る

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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/3.2 1/160秒 ISO400 焦点距離44mm
■モデル:永尾まりや
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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/3.2 1/160秒 ISO400 焦点距離44mm
■モデル:永尾まりや
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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/3.2 1/125秒 ISO400 焦点距離55mm
■モデル:永尾まりや

寄り写真とは異なり、引きの写真は全体の雰囲気やあらゆる情報が伝わるため、撮影するのが実は結構難しかったりします。私自身、写真の細部に対しての意識がとても強いので、引き写真の完成度をより高めるためにも隅々まで見渡す幅広い視野をもって「被写体の一瞬を切り取る」ようにしています。

そうすると、必要以上の情報は入れずに良い動きや瞬間を的確に切り取ることができます。

1枚目の写真は、余白と背景の奥行きを意識して、被写体の表情や髪の動き、スカートから足先まで細かく自分の視覚で捉えながら切り取りました。

2枚目の写真では印象的なスカートの動きに着眼をして、あえて足元にフォーカスをして撮影しています。

3枚目の写真では椅子を使い大きな動きをつけて撮影しました。静寂さと大胆な動きがマッチして躍動感のある写真になっています。

以上の事から、美しさの表現においては「表情で見せる」だけでなく、情景や雰囲気、体温までが伝わって来るような写真で「魅せる」ことも大事な1つのテクニックです。

アザーカットの重要性

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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/2.8 1/320秒 ISO400 焦点距離36mm
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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/2.8 1/640秒 ISO400 焦点距離36mm
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■撮影機材:ソニー α7R IV A + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:f/3.2 1/125秒 ISO400 焦点距離70mm

最後に、アザーカットとして花の写真を撮影したものを何枚かご紹介します。昔から「被写体と花」を一緒に撮影することは世間一般的によくあると事だと思います。

私自身も数え切れないほど、「被写体と花」を撮影しているのですが、そこには私なりの考えがあります。ただ単に花を持たせたら可愛い、映えるから花を持ってもらっているという訳ではありません。花が持つそのものの魅力は、その1輪ごとにそれぞれ違い、花自身が沢山の美しさや輝きを持っています。花が意味する花言葉や、その魅力をどう伝えようかという意識を向けながらシャッターを切っています。

冒頭では、プラスアルファとして花を使用したという言葉を使いましたが、逆も然り、花を撮ることにプラスの要素として人物を写すという言い方も出来ます。両方の魅力を重ね合わせて撮ることによって、お互いを引き立たせてくれます。

私がここで伝えたいのは、被写体を美しく撮ろう、という意識と全く同じ感覚で花を撮っている、ということです。花の向きや美しい角度を捉えることも、大切な意識の1つといえるでしょう。

まとめ

今回はスタジオ撮影でのテクニックを紹介しましたが、いかがだったでしょうか。自然光を上手に利用して、透明感のある柔らかい雰囲気をいかに完成度を高めて撮影できるか、私のこだわりを解説しました。

どんな撮影シーンにおいても、微細な動きに注目しながらも、様々な角度から俯瞰してその場を見渡すことが大切です。
今後のスタジオでの撮影の際に是非参考にしてみてください。

■モデル:永尾まりや

■写真家:佐藤俊斗

「佐藤俊斗 × ポートレート」の連載記事はコチラ

■佐藤俊斗 × ポートレート vol.1|光の捉え方
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485296339/

■佐藤俊斗 × ポートレート vol.2 | 春を印象的に映し出す桜撮影テクニック
https://www.kitamura.jp/shasha/article/486127176/

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