ソニーα7S IIIレビュー | ビデオグラファーを喜ばせる撮影機能が満載!
はじめに
ソニー フルサイズミラーレスカメラのα7シリーズの高感度モデルとなるα7S IIの後継機、α7S IIIが登場しました。最新αシリーズの高機能が搭載され、更にビデオグラファーを喜ばせる撮影機能が沢山詰め込まれています。今回機材をお借りして薄暗い空間でのポートレートや夜のドライブシーンをムービーと一部スチールで撮影してレビューしていますので、是非ご覧ください。
プロジェクションマッピングを撮影してみて
プロジェクションマッピングの映像を撮影する場合、色々角度や設定を変えて工夫をこらして撮影しないと、その場で見た通りに光の動きや色味を再現するのが難しく、実際の雰囲気とかけ離れた映像になってしまう事が多々ありますが、今回α7S IIIでの撮影では、目で見たのと近い映像をいとも簡単に撮る事が出来たのは驚きでした。これは有効画素数約1210万画素の新開発の裏面照射型CMOSセンサーによる高感度時のノイズ低減性能やダイナミックレンジが広くなったことが影響しているのかもしれません。
光りの当たる場所やモデルに映り込む色が刻々と変化してましたので、バランスの良い画が撮れるように4K/120fpsで少し長回しで撮影を行っていたのですが、カメラが熱を持っているのを殆ど感じませんでした。これだけの時間α7IIIで撮影していれば、カメラのグリップを握る右手や、底を支える左手に熱を感じてくるのですが今回はそれが殆どなく、α7S IIIの優れた放熱性能を感じました。この性能はα7S IIIの放熱構造によるもので4K/60Pの設定で1時間動画を撮影し続ける事が出来るようなので、安心して撮影に集中できます。
テスト動画後半のモデルの顔に黒い波の影が重なるところでは、瞳AFで撮影をしているのですが、動く影に引っ張られる事なく、しっかりと人物の瞳を捉え続けてくれました。少し意地悪なテストではありましたが、そのおかげでα7S IIIに搭載されているリアルタイム瞳AFの精度の高さを知る事が出来ました。
薄暗い屋外での撮影性能
薄暗い屋外でのテスト撮影を行う為、夕方18時頃から撮影を開始しました。事前にロケハンを行いモデルの顔を照らす照明が必要と考え、準備機材にはLED照明を用意していましたが、当日α7S IIIで撮影を始めてみると、おや、おや、なんと?街灯や遠くの街明かりを背景に入れた状態でも、モデルの顔を自然な明るさで捉える事ができ、またその色味と雰囲気がとても気に入りLED照明なしで撮影を行うことにしました。ISO感度は12800に設定して撮影しましたが終始ノイズが気になる事なくモデルの肌をとても美しく捉えてくれました。
時間が経過し撮影の途中で空が一段と暗くなり、街灯や街明かりが目立つようになった頃には色味も大きく変化していました。ホワイトバランスは最初から最後までオートに設定していましたが、そのような大きく色味の変化がある中でも安定して目でみた色を再現してくれていました。これは今回カメラ正面の軍艦部右下に搭載された「可視光+IRセンサー」によって、難しい光源下でも、より正確なホワイトバランスをオートで得ることができるようになっていて、動画撮影ではとてもありがたい機能です。
後半の空が暗くなっている時間は19時をまわった頃でしたが、ここでも地明かり以外は使用していませんが、十分に自然な明るさでモデルの表情を捉え続けています。またここでは手持ちでモデルの歩幅に合わせて筆者も追いかけて撮影を行いましたが、今回新搭載されたアクティブモードを使う事で、ブレを大きく減らし撮影する事が出来ました。このアクティブモードは5軸、5.5段の光学手ブレ補正に加えて、ブレを補正してくれるもので、画角は僅かにクロップされますが、今回使用してみて、驚く程効果的にブレを補正してくれるのを感じました。
色変化が大きい薄暗い環境で制作したショートムービー
撮影が難しいプロジェクションマッピングや夕方から夜にかけて色変化の大きな状況でモデル撮影することでα7S IIIの性能テストを行ってきましたが、その時撮影した映像をBGMと合わせてショートムービーにしてみました。動画は4K/120fpsのスローモーションで撮影し、最終出力で60fpsや30fpsに変化させて映像に躍動感を与える演出をしています。また今回カメラ内に搭載された10種類の色表現が可能クリエイティブルックという機能があり、これを使用することでよりシネマライクな表現を行うことができました。このショートムービーではビビット(VV)を使用しています。
AF性能と、ローリングシャッター歪みの低減
夜走行する車のフロントガラスからの映像を撮影する為、知り合いに運転してもらい、助手席側から手持ちで撮影を行いました。高速道路で目の前を走る車にAFを合わせましたが、ボディーカラーが黒色で背景の暗闇と同化した状態であったにも関わらず、素早くピントを合わせ、そのまま追従してくれ、AF性能の高さを感じました。
映像の後半は、橋を走行中に遠くのビル群を撮影しています。このように横に流れる映像を撮影すると通常、ローリングシャッター歪みによりビルがぐにゃりと曲がって見えたりするのですが、α7S IIIではその歪みが低減されており、ビルはほぼまっすぐの状態で撮影する事ができました。
夜のドライビングシーンを撮影したショートムービー
こちらのショートムービーは、週末の夜に彼女を迎えに行くというコンセプトで制作しています。全体にわたりLED含め様々な光の中で撮影を行いましたが、オートホワイトバランスの性能が高く、終始目で見た色味に仕上がっています。またシネマライクな色表現が可能なクリエイティブルックにより、映像にしっとりとした質感と深みを与えてくれています。
オートフォーカスの移動を調整する「AFトランジション速度」と「AF乗り移り感度」は、筆者自身が朝、目を開けて見たものが、ぼんやりした状態からちゃんと見えるまでの速度で調整を行い、出来るだけ自然に見えるようにしてます。
今回とても感動したのが、液晶モニターの色再現性能になります。α7IIIでの撮影では、実際に撮影した色味と液晶モニターでの色味が少し違うように感じる事がありましたが、今回それが解消し、外部モニターでチェックする事なく、液晶モニターでスピーディーに撮影後のチェックをする事ができました。また液晶モニターはバリアングルになっていますので、撮影の自由度が増しています。
静止画での撮影
α7S IIが登場した5年前と比べると、その後に登場したカメラの高画素化が進み、1210万画素と聞くと静止画撮影するには画素数が少なくないか?と思う方もいらっしゃるのではないかと思います。実際に写真展で展示する事を考えると難しいかもしれませんが、WEBで閲覧するには十分なサイズだと思いますし、カメラのキタムラでも4切より少し大きいサイズ迄でをプリント推奨サイズとして紹介しており、このくらいのサイズでのプリントをされる方には十分な画素数であると考えます。
1枚のファイルサイズは1MB以下となり、とても取り扱い易く便利ですし、画素が少ない分、画素ピッチが広くなり、光をしっかりと受光することで高感度撮影時にノイズを低減する事ができます。
動画撮影時に撮影したスチール画像は、動画編集時に被写体に徐々に寄って行くズームのシーンや横に移動するパンのシーンの時に静止画を利用して編集を行うことがあります。α7S IIIは静止画も動画も4Kと同じ大きさの為動画とスチールが共存しやすく、動画編集時に撮影した静止画を便利に扱うことができます。
写真家:中西学
日本国内から海外まで、その時の時事を撮影することを専門する。その他、風景、ポートレートなど撮影ジャンルは多彩。また、ドローンやVRなど最新機材を使いこなし動画クリエーターとしても活動。写真家目線での映像技術を得意とする。
・公益社団法人日本写真家協会 正会員(JPS)
・一般社団法人日本UAS産業振興協議会 会員(JUIDA)
・ソニーα アカデミー講師(札幌校、銀座校、名古屋校、大阪校、福岡校)
・クラブツーリズム講師
・DJI CAMP スペシャリスト
α7S III発売前のソニーストア銀座での先行展示取材記事はこちらからご覧頂けます。