ソニー α9II レビュー | プロが見たα9からの進化ポイントとは?
α9IIがついに発売
筆者は日頃からα9を使っており、新型のα9IIはもちろん興味があり、購入を検討しているカメラです。発表前からいろいろな憶測や噂が飛び交っていたため、ワクワクして発表を待っていた方も多かったのではないでしょうか。
しかし、実際に発表されたα9IIは、見た目がα7RIVで中身がα9といったように感じ、内容も業務用に便利な機能が付加されただけにしか見えないかもしれません。しかし実機を使ってみると、α9IIはハッキリとα9から進化している事が感じられるカメラです。
α9とα9IIどこが変わったのか
α9とα9IIではよく見られる基本スペックにはあまり大きな変化はありません。有効画素数約2420万画素、AF測距点693点、連続撮影速度約20コマ/秒などはスペックの変化がありません。
それではどこが変わったのでしょうか?
Point.1 外観の変化・操作性が改善
より使いやすく!
・露出補正ダイヤルにロックボタンが付き誤動作を防げるようになった
・操作ボタン類のストローク量が大きくなりボタンが押しやすくなった
・グリップはサイズこそ大きくは変わらないが、シャッターボタンの位置が変わり持ちやすくなった。
・α7RIVと同等のボディ形状になった為、α7RIVとタテ位置グリップ(VG-C4EM)が共用可能
Point.2 メカニカルシャッターの強化
α9で弱かった機能が改善!
・メカニカルシャターの連写性能が10コマ/秒にアップ
・フリッカー軽減機能の搭載
Point.3 ボディ内手ブレ補正が少し強化
α9IIは手ブレ補正アルゴリズムの改善によって、α9の5段分から少し向上して5.5段分の補正効果へと強化されています
Point.4 メモリースロットの改善
α9IIはUHS-II対応のSDカードでも2枚挿入可能なデュアルスロット搭載。α9では対応できていなかったメディアの記録先を自動で切り替えることも可能なリレー記録に対応改良されました。
またメディアスロットの1・2の位置関係も改善されて直感的にも使いやすくなったと感じます。
Point.5 通信機能の強化
主に業務用での使用がメインの機能になりますが、通信機能が大幅にアップされています。これによって報道関係での使用に使われるシーンが多くなってくると思われます。
・有線LANで100BASE-Tから1000BAES-Tにアップグレード
Point.6 音声メモ機能の搭載
画像に音声を添付できる音声メモ機能に対応。撮影した画像にカメラ本体で最大60秒の音声メモ(WAVEファイル)の録音ができるようになりました。通常の撮影情報以外に様々な情報を付加できる魅力的な機能ではないでしょうか。
全体的には、α9IIは先に発売されたα7RIVのボディ形状の合わせて要所要所が強化され、α9を業務的に使用用途部分の特に強化した意味合いが強く感じられます。しかし裏返してみれば2017年5月26日に発売されたα9自体が先進的なスペックを持っていて、通常用途でも現時点では最高水準を維持できている証拠なのだとあらためて実感します。
気になるフリッカー軽減機能の搭載
今回撮影したバスケットボールのプレーは、室内競技のため、撮影するのが非常に難しいスポーツです。動きの速い選手のプレーをブレないように撮影する為、本来シャッター速度をあげて撮影をする必要があります。試合会場のアリーナにもよるのですが、アリーナの照明によっては厄介な現象が発生する場合があります。
厄介な現象とは「フリッカー現象」!
フリッカー現象は、上の写真のように写真にシマシマのムラ模様がでてしまう現象で、室内の蛍光灯、LED照明等の人工の光源が原因となります。
蛍光灯やLED照明など、人工の光源下で高速シャッターを使用して連写をすると、光源の種類によってはフリッカーが発生して、露出ムラや色のバラつきが発生する場合があります。
フリッカー対策としては、通常はシャッタースピードを東日本なら1/100秒、西日本なら1/120秒より遅く設定して写真を撮ることでフリッカー現象を軽減する事できますが、それでは動きの速い選手を捉えきることが非常に難しくなり、ブレた写真を量産する事になってしまいます。
α9IIは、このフリッカーの発生を検知してシャッターを切るタイミングを制御することで、露出ムラや色のバラつきを軽減する「フリッカー軽減機能」が搭載されました。
「フリッカー軽減機能」は室内スポーツを撮るうえではとても助かる機能です。α9ではこの機能が無かった為、かなりシャッター速度に気を使いフリッカーが発生していないか、細心の注意を払いながらの撮影をしていました。しかし、α9IIではその心配が減って室内のスポーツでも、安心して撮影に集中ができるようになりました。
α9とα9IIの差が出たプロバスケットボール撮影
先の説明したフリッカーに対応できる「フリッカー軽減機能」を使うには一定の設定条件があります。それはα9系の得意な電子シャッターでは使用できない事です。α9系の最高連写20コマ/秒は電子シャッター使用時に発揮します。
α9のメカニカルシャッターの連写性能は5コマ/秒でフリッカー軽減機能はありませんでした。α9IIになりメカニカルシャッターが強化され、連写性能が10コマ/秒にアップ、そして待望のフリッカー軽減機能も搭載したことで、室内スポーツ撮影に安心感を与えてくれました。野外のスポーツはもちろん、室内スポーツにも十二分に対応できる万能タイプのカメラにバージョンアップを果たしたと思います。
ドリブルをしている何気ないシーンではあるが、ボールに注目してください。プロの選手がドリブルするボールはコートに跳ねた瞬間、ここまでボールが変形する力強いドリブルです。
この瞬間を撮るには、やはり連写機能が必須になります。フリッカーを気にせず高速シャッターで撮影できるメリットは十分に感じられました。
■撮影環境:シャッター速度1/1600秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離200mm
浮いたボールのせめぎあい。選手の足がフロアーから浮いています。こういったシーンでもフリッカー現象を気にすることなく高速シャッターを使用できるの非常に有難いです。
■撮影環境:シャッター速度1/1600秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離70mm
ゴール下の攻防はバスケットボール撮影の中でも一番醍醐味を感じられるシーンです。α9IIのコンティニュアンスモードによる高速AFは撮影に信頼と余裕を与えてくれます。
■撮影環境:シャッター速度1/320秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離70mm
■撮影環境:シャッター速度1/1250秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離147mm
■撮影環境:シャッター速度1/400秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離77mm
■撮影環境:シャッター速度1/800秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離70mm
■撮影環境:シャッター速度1/800秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離70mm
■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF4 ISO3200 焦点距離105mm
ゴール下の攻防の選手の動きは上下に動く事が多いので、迫力ある写真を撮るにはタテ位置構図が有効になります。動きの速いスポーツシーンでのタテ位置撮影には、タテ位置グリップの装着をおすすめします。
今回はソニーα9II用のタテ位置グリップ(VG-C4EM)を装着して撮影をしました。このタテ位置グリップは縦位位置での撮影が容易になるだけでなく、バッテリーを2個セットする事が可能な為、長時間の撮影でもバッテリーの残量を気にせず撮影ができる安心感をもたらしてくれます。
バスケットボールの試合も盛り上げてくれるのは、選手だけではありません。タイムアウトのタイミングやハーフタイムなどにアリーナを盛り上げてくれるチアリーダーさんたちも、とてもフォトジェニックな存在です。
横浜ビー・コルセアーズ 公式チアリーディングチーム「B-ROSE」。笑顔がとてもステキなため夢中で撮影してしまいました!
■撮影環境:シャッター速度1/1000秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離70mm
特にハーフタイムのチアリーディングのショーは、動きも激しくとても魅力的なショーです。ぜひバスケットボールの試合を見に行ったら、ハーフタイムの時間は休憩に行くのではなくチアリーディングのショーもぜひ見て欲しいですね。
■撮影環境:シャッター速度1/1000秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離77mm
選手以上にスピーディーな動きのあるダンスは高速シャッターが必須です。長い髪の動きをしっかりと表現して撮影するのには、1/1000秒のシャッタースピードは欲しい状況です。
■撮影環境:シャッター速度1/1000秒 絞りF2.8 ISO3200 焦点距離86mm
室内アリーナでのバスケットボール撮影のコツは、フリッカー対策・シャッター速度の設定がとても重要な要素です。
フリッカー軽減機能のあるカメラであれば、その機能を最大限に活用して高速シャッターで撮影できます。フリッカー軽減機能が無ければシャッター優先設定で、シャッター速度1/100秒程度でフリッカーを抑える撮影の仕方をします。ただこの場合は選手が激しい動きをしていれば当然ブレてしまう速度になります。
ですので、最初にアリーナの会場に入ったら試合が始まる前の練習時間を利用して、いろいろなシャッター速度で撮影し、フリッカーの出具合を確認してみましょう。アリーナによってはフリッカーが出にくい照明もありますからね。
使用するレンズは撮影できる場所によりますが、選手と近いバスケットボールのでは、24-105mmクラス(35mm換算)のズームレンズが一番使いやすいレンズではないかと思います。少し選手から離れた場合は、70-200mm(35mm換算)クラスのズームレンズが最適です。
一番良いのは24-200mmぐらいの高倍率のズームレンズが一本あると撮影はとても楽になりますね。
撮影のポイントして、あまりアップで狙いすぎない事です。選手の動きが激しいバスケットボールで迫力あるアップの写真を撮りたくなるのですが、上下左右に動きのスピードが速いため、アップで狙いすぎるとすぐにフレームアウトしてしまう場合が多くなります。気持ち少し引いた感じで撮影する方が確実です。
まとめ
α9IIはスポーツを撮るにはとても魅力的なカメラに仕上がっています。まさに2020年の夏のスポーツの祭典に合わせてきたカメラと感じました。今までの弱点だったメカニカルシャッターを強化し室内スポーツ撮影も安心して使えるスキのないカメラで、まさに万能なスポーツ選手のようなカメラだと思います。
■撮影協力:横浜ビー・コルセアーズ
■公式HP:https://b-corsairs.com/