ソニー E 50mm F1.8 OSS|APS-Cセンサー対応の単焦点中望遠レンズ

宇佐見健
ソニー E 50mm F1.8 OSS|APS-Cセンサー対応の単焦点中望遠レンズ

はじめに

E 50mm F1.8 OSSはAPS-Cセンサー搭載ミラーレス一眼α用の単焦点レンズです。50ミリと聞くと標準レンズを連想しがちですが、35ミリ判換算では焦点距離は1.5倍され75ミリ相当の中望遠レンズとなります。

フルサイズセンサー対応のEマウントも含めた単焦点50ミリレンズという括りでは、F1.2やF1.4など更に明るいレンズに加え、本レンズ同様にF1.8仕様のレンズもラインアップされているため少々ややこしいのですが、その違いは製品名の頭につくアルファベットで区別ができます。

Eの一文字から始まるレンズがAPS-Cセンサー機専用のレンズです。マウントの仕様が共通のためフルサイズセンサー機にも装着は可能です。しかし、その場合はカメラボディの撮影メニューで「APS-C S35撮影」が「入」または「オート」に設定されている必要があります。

FEの2文字で始まるレンズは、フルサイズセンサーをカバーするイメージサークルを有するレンズを意味します。APS-Cセンサーαにも装着した場合は、特にメニュー設定等の必要は無く1.5倍相当の焦点距離のレンズとして撮影が可能です。

今回はEマウントレンズラインナップの中ではあまり目立たない存在ながらも、APS-Cセンサー搭載ミラーレス機専用設計でコンパクトかつ軽量で扱いやすいE 50mm F1.8 OSSの魅力を紹介します。因みにAPS-Cセンサーソニー製α専用ということでは「単焦点」の「中望遠レンズ」はこのE 50mm F1.8 OSSレンズが唯一の存在となります。

スペック

型名 SEL50F1.8
レンズマウント ソニー Eマウント
対応撮像画面サイズ APS-Cフォーマット専用
焦点距離 50mm(35mm判換算75mm相当)
レンズ構成 8群-9枚
開放絞り F1.8
最小絞り F22
絞り羽根 7枚(円形絞り)
手ブレ補正 レンズ内手ブレ補正方式
最短撮影距離 0.39m
最大撮影倍率 0.16倍
フィルター径 49mm
外形寸法 最大径x長さ φ62×62mm
質量 約202グラム
E 50mm F1.8 OSSにフードを付け、α6600に装着した画像

外観や操作性

ミラーレス一眼αの前身NEXシリーズ時代に発売されたこのレンズは、ミラーレス機の小型軽量の優位性だけでなくファッション性も推していた当時のデザインのため、最新機種のレンズとは少々外観の雰囲気も異なります。また、シルバーのカメラボディも販売されているα6400に合わせシルバー鏡筒のカラーバリエーションも用意されています。

フォーカスリングのローレット部も含めアルミニウム合金の外装を採用しているため、持つとヒンヤリとした感触が手に伝わります。小ぶりですが剛性も高く、最大径・全長ともに62ミリと手に収まりの良い鏡筒サイズなためα6000番台のAPS-Cセンサー機のボディーとのバランスは良好です。

光学式手ブレ補正機構を内蔵しているので、カメラのボディ内手ブレ補正と合わせて強力な手ブレ補正効果が規定できます。なお、手ブレ補正に関するスイッチは省略されているため鏡筒での操作系はピントリングのみのシンプルなつくりです。

専用のフードは深めで遮光効果も高く、装着時全長は約40ミリほど伸びますが、手が大きめの男性ユーザーはフード装着状態のほうがレンズを保持する指が余ることもなく、取り回しの安定感が増すはずです。もちろん携行時は逆付けが可能です。

レンズ先端には49ミリ径のフィルターが装着可能。とくに日中屋外で絞り開放を多用したい場合に、環境の明るさ次第ではシャッター速度が追いつかず露出過度になってしまう場合もあるので、光量を落とせるPLフィルターやNDフィルター、また人気のブラックミストや色調を調整するエフェクト系のフィルターも使用可能です。

基本的には合焦点のシャープさと、中望遠レンズで絞りを開け気味に設定することで得られる大きなボケ味のとの対比を楽しむのがこのレンズの醍醐味です。今回は中望遠の少々狭い画角で目についた光景をスナップ的に切りとってみました。このコンパクトで軽量な50mm一本だけの組み合わせでの撮り歩きはとにかく軽快です。

また、今回は普段の撮影でもほとんど使用しないタッチ液晶で測距点決定という方法を積極的に試してみました。普段使用しているフルサイズと割と重量級なレンズと違い、この50ミリはα6600との組み合わせでも700グラム強程度の軽さ。
これならばカメラを顔から離し、伸ばした手の先で背面液晶を見ながら自由なアングルで構図を決めるライブビュー撮影でも余裕でカメラをしっかり保持できるので、思いついたままサクサク撮れてかえって具合が良いのです。
EVFでの構図決定やAF測距という通常の撮影スタイルと比較しても、環境光が明るすぎて背面液晶見えにくい状況でないかぎり直感的に決定できて軽快な撮影フィーリングを損なわずスナップ撮影を楽しめました。

それでは作例をさっそくご覧いただきましょう。

作例

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/400秒 ISO100

1月半ばの寒さでは散歩で見かける花は少ないですが、流石にアブラナ科の花は逞しいですね。背後の紫は花弁が少々傷んだパンジーだったので絞り開放で大きくぼかしました。地面方向に向けての撮影なのでEVF撮影ならしゃがむ必要がありますが液晶タッチでもしっかり合わせたい部位にピントが来ています。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/500秒 ISO100

サルスベリの実。この撮影ではコンティニュアスAFで画面中央の実を捉えながら左や下の実にもなるべく合焦するようにアングルを探り、かつ背面液晶で画面全体の構図バランスを見ながら撮影。最短でもハーフマクロと呼ぶには撮影倍率が少々低いレンズですが開放絞りで主役を引き立たせられるので近接撮影ではマクロ撮影的な雰囲気が楽しめます。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/5.6 1/400秒 ISO100

窓からの強い日差しがグラス越しに光束となりテーブルに投影されていました。もう少し焦点距離が短いいわゆる標準レンズ的な画角のレンズやズームレンズを装着していたら敢えて撮ろうとは思わなかったかもしれません。試しに75ミリ相当の画角で覗いてみたら、光の力強さが開放F1.8の被写界深度でちょうどよい雰囲気のまま構図に収まったという感じ。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/1600秒 ISO100

3万円台で買えるお手頃レンズです。描写性能という点を求めるなら迷うことなく上位クラスのレンズを選択すべきなのでしょう。絞り開放ではやはり価格なりのシャープネスの甘さは否めませんが、激しく劣るわけではありません。贔屓めに言うならその僅かなゆるさが生々しさを感じさせないこのレンズの味ということで良いでしょう。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/320秒 ISO100

最短撮影距離は0.39メートル。EVF撮影であれば着席したままで目の前に置かれた皿の料理撮影が可能です。もっとクローズアップしたい場面もあるかもしれませんが雰囲気だけを伝える目的なら十分でしょう。49mmの小径フィルターが装着できるので安価に手に入れられるクローズアップレンズを組み合わせるのも面白いかもしれません。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/80秒 ISO250

F1.8の明るさと4段相当のレンズ内手ブレ補正機構搭載もあり、室内でもさほどISO高感度に頼らずに撮影が可能な点は心強いところです。色収差が目につく場面もありますが、この価格で単焦点中望遠レンズのボケ味を得られることのほうがメリットとして大きいと思います。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/800秒 ISO100

7枚の絞り羽根による円形絞りはF2.8くらいまで絞るとボケの形に少し角が感じられるようになってきます。玉ボケに丸さを求めるのであれば絞り開放もしくは絞ってもF2.0くらいが良さそうです。画面周辺に向かうにつれ口径食も目立ちますがこれはある程度仕方がないことでしょう。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/1.8 1/4000秒 ISO100

ここまでの作例は近接撮影気味のシチューションだったので、少し撮影距離を離した写真を見てみましょう。背景ボケも合焦点からの繋がりは自然です。風雨にさらされてくすんだ黒い塗装面や、赤茶色のサビ部分の質感描写も忠実に再現できています。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/2.8 1/2500秒 ISO100

更に少し離れてピントを合わせたススキまでの撮影距離は3~4メートルといったところ。1段絞ってもこのくらいの撮影距離なら背景はまだ適度にボケて主役を浮かび上がらせてくれます。記憶の中のワンシーンを覗いているような雰囲気のある描写と思います。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/8 1/200秒 ISO100

前の作例と同じような構図で線路を写していますが、こちらではF8.0まで絞っての撮影。被写界深度が増し、さらに望遠レンズの圧縮効果も加わっていますが、超望遠レンズのようなベタっとした印象ではなく立体感や距離もしっかり感じさせるリアルな奥行きの表現ができています。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/5.6 1/640秒 ISO100

手前の船までは40メートル程度の距離ですが、F5.6に絞っただけで画面全体をほぼシャープに写せています。また左奥に小さく写る旅客機を拡大してみると垂直尾翼にうっすらですが赤い鶴のマークが確認できるくらいの解像力を有しています。廉価判と侮ることのできない単焦点レンズの実力です。

■撮影機材:ソニー α6600 + E 50mm F1.8 OSS
■撮影環境:f/2.8 1/4000秒 ISO100

最後は再び絞りを開けた写真。顔なじみですが普段あまり近寄らせてはくれないどころか限界距離を越えるとすぐに軒下に隠れてしまう猫。強い西日が眩しくて私のことをあまり気にしていないだけかもしれませんが、無理な接近はせず中望遠の画角でいつもより大きな姿を撮らせてくれました。

まとめ

小型軽量というだけでなく、新品でも3万円台とリーズナブルで手にしやすい価格は魅力でしょう。特にキットズームしか所有していないユーザーには「初めての交換レンズ」「初めての単焦点レンズ」「初めての中望遠レンズ」「初めての大口径レンズ」として様々な面で取り組み甲斐のある存在と思います。

35ミリ判換算75ミリ相当の中望遠レンズならではの画角は、大胆なフレーミングと明るい絞開放F1.8レンズにより浅い被写界視度による大きなボケ味を堪能できるだけでなく、絞り込めば被写体をしっかりシャープに写しとめることができます。

明るいF値とISO高感度を組み合わせれば、照明光下や窓からの外光だけで室内でもそこそこ速いシャッター速度での撮影も可能なので屋内のペット撮影や、フラッシュ光などを当てたくない赤ちゃんや小さなお子さんの撮影にも最適なレンズといえるでしょう。

 

■写真家:宇佐見健
1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。専門誌出版社、広告代理店を経て独立。撮影ジャンルは360度全天球、水中、旅、風景、オーロラ、ポートレート、モータースポーツ、航空機、野鳥etcと多岐に渡る。カメラ誌等では新製品機材の実写インプレッションやHOW to関連、カメラメーカー工場取材取材など多方面の記事を執筆中。

 

 

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