ソニー ECM-M1 レビュー|8つの収音モードを備えたオールラウンダー小型ショットガンマイクロホン

坂井田富三
ソニー ECM-M1 レビュー|8つの収音モードを備えたオールラウンダー小型ショットガンマイクロホン

はじめに

今回のレビューは、新しく登場したαシリーズなどで活用できるソニーの撮影用マイク「ECM-M1」です。「ECM-M1」は、さまざまな撮影シーンで高音質に録音できる、世界初の8つの収音モードを備えたオールラウンダー小型ショットガンマイクロホンで、収音モードを直感的にダイヤル操作で切り換え可能になっている、使い勝手の良い小型・高性能のマイクとして新登場しました。

従来のソニーの撮影用マイク「ECM」シリーズよりも、オールマイティーに使用でき、さらに初めての方にも簡単に扱えるのが魅力的なポイントです。そんなソニーの撮影用マイク「ECM-M1」の魅力と使い勝手を紹介します。

ECM-M1と他モデルとの違い


ソニーの撮影用マイクのショットガンタイプでは、今回新発売になった「ECM-M1」の他に「ECM-B1M」、「ECM-B10」、「ECM-G1」の3タイプのモデルがあります。「ECM-M1」の機能や魅力をお伝えする前に、各モデルの違いなどをおさらいしたいと思います。

ECM-M1 ECM-B1M ECM-B10 ECM-G1
発売年月日 2023年7月 2019年9月 2022年7月 2022年8月
最大外形寸法(約)ウィンドスクリーン、突起部を除く 幅 40.0mm
高さ 72.2mm
奥行き 64.4mm
幅 27.4mm
高さ 81.8mm
奥行き 99.3mm
幅 27.4mm
高さ 81.7mm
奥行き 79.3mm
幅 28.0mm
高さ 50.8mm
奥行き 48.5mm
質量(約)本体のみく 65g 77.3g 72g 34g
使用温度 0 ℃ – +40 ℃ 0 ℃ – +40 ℃ 0 ℃ – +40 ℃ 0 ℃ – +40 ℃
チャンネル音声出力 アナログ 2ch
デジタル 4ch
シュー形状 マルチインターフェースシュー マルチインターフェースシュー マルチインターフェースシュー マルチインターフェースシュー
本体電源供給方法 マルチインターフェースシュー マルチインターフェースシュー マルチインターフェースシュー マルチインターフェースシュー
デジタルオーディオインターフェース
形式 バックエレクトレットコンデンサー型 バックエレクトレットコンデンサー型 バックエレクトレットコンデンサー型 バックエレクトレットコンデンサー型
モノラル / ステレオ モノラル
ステレオ
モノラル モノラル モノラル
収音モード ・鋭指向性
・単一指向性
・全指向性
・後方鋭指向性
・鋭指向性(前+後)
・鋭指向性(前/後)
 セパレートSTEREO
・超鋭指向性
・鋭指向性
・単一指向性
・全指向性
・鋭指向性
・単一指向性
・全指向性
・スーパーカーディオイド
フィルター ・ノイズカットフィルター
・ローカットフィルター
・ノイズカットフィルター
・ローカットフィルター
・ノイズカットフィルター
・ローカットフィルター
アッテネーター
周波数特性 40 Hz – 20 000 Hz 40 Hz – 20 000 Hz 40 Hz – 20 000 Hz 50 Hz – 20 000 Hz

「ECM-G1」は、エントリーモデルのショットガンタイプのマイクロンフォンです。小型軽量でカメラ本体から電源供給もできるケーブルレスタイプでマイク側での設定などは特に無いモデルです。お手頃の価格で、Vlogでの自撮りや友人、家族など人物の声を収音するのに適しているモデルです。

「ECM-B10」は高性能な「ECM-B1M」の実質後継モデルで、大きな違いはマイクユニット数。「ECM-B1M」のマイクユニット数8個に対して、「ECM-B10」のマイクユニット数は4個になりマイク部分の長さが少し小型化されたモデルになります。

今回新発売になった「ECM-M1」はマイクユニット数が4個であるものの、今までのモデルには無かった「デジタル4チャンネル記録」に対応していたり、「ステレオを含む全8つの収音モード」に対応していたりする多彩なマイクになっています。

ECM-M1の8つの収音モード


「ECM-M1」の最大の特徴である8つの収音モードの切り替えは、直感的に切り替えができる「収音モードダイヤル」の採用によって簡単に変更する事ができ、初めて使用する方にも分かりやすくなっています。

 

▼8つの収音モード

アイコン 収音モード 想定される使用ケース
鋭指向性 マイク正面の特定の範囲の音声を、感度差なく明瞭に収音できます。残響を抑えた収録が可能なため、室内での撮影に向いています。被写体が本機の近くで話すような動画の撮影/配信などにおすすめ。
単一指向性 マイク前方の音を幅広く収音できます。会議や打ち合わせなどの収録におすすめ。
全指向性 すべての方向の音を等しい感度で収音します。環境音を含めた収録などにおすすめ。
後方鋭指向性 マイク前方の音を抑えつつ、後方の音を収音できます。風景を撮影しながら、ナレーションを入れたい場合などにおすすめ。
鋭指向性(前+後) マイク左右の音を抑えつつ、前方と後方の音を等しい感度で収音できます。前方の被写体の音声を収録しながら、撮影者の音声もあわせて収録できるため、インタビュー撮影などにおすすめ。
鋭指向性(前+後)セパレート マイク左右の音を抑えつつ、前方(チャンネル1)と後方(チャンネル2)の音を等しい感度で収音できます。後から前方と後方それぞれの音量を調整できるため、収録した音声を編集したい場合におすすめ。
ステレオ 左側(チャンネル1)と右側(チャンネル2)の定位を強調することで、臨場感のある収録ができます。レースや電車のような移動する被写体や、音楽ホールでのコンサートなどの撮影におすすめ。
超鋭指向性 適応ビームフォーミング技術により、マイク正面の目的音を取り込むと同時に、マイク正面以外の不要な音を強力に抑制します。川のせせらぎや鳥の声など、遠方の環境音を適度に残したまま、被写体の近くの不要な音声などを抑えて収録したい場面におすすめ。

8つの収音モードの切り替えによって、今まで以上に簡単に様々な収録に対応できる機動性の高いマイクになっているのが大きな特徴です。

実際にすべてのモードを使うことは少ないと思いますが、様々シーンに対応できるので、より多くのユーザーにとって使いやすい事は間違いないと思います。様々シーンに対応できる収音モードを直感的にダイヤルで選べるのは非常に魅力的です。

インタビュー収録の際には、「インタビュイー」だけの音を収録する場合は「鋭指向性」や「超鋭指向性」モードを使用し、「インタビュアー」の音も収録する際は、「鋭指向性(前+後)」や「鋭指向性(前+後)セパレート」などを使用するなど、現場で簡単に対応する事ができます。
「鋭指向性(前+後)セパレート」で収音した場合、前方(チャンネル1)と後方(チャンネル2)を分けて収音するので、編集の際のそれぞれの音量調整などが容易になります。
α6700 + E 18-135mm F3.5-5.6 OSS + ECM-M1「鋭指向性(前+後)セパレート」収録動画

「鋭指向性(前+後)」モードなどお仕事などにも使用できる「ECM-M1」ですが、「ステレオ」モードで収音できるのも魅力のポイントです。特に音楽関係の収音をされる人にはとても魅力的な機能です。「ステレオ」モードでは音楽関係の他、レースや電車のような移動する被写体の収録にも臨場感あふれる収音が可能になり、撮影した動画をグレードアップしてくれます。

「ステレオ」モードでの収音では、「チャンネル1」で左側と「チャンネル2」で右側の音声を収録します。
α7 IV + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + ECM-M1 「ステレオ」収録動画

ECM-M1のデジタル4ch記録

「ECM-M1」は、対応できるカメラに制限がありますが、デジタル4ch記録の設定を利用する事によって、1チャンネルおよび2チャンネルに選択した収音モードで収音しながら、同時に予備として3チャンネルに全指向性(固定)、4チャンネルに全指向性(‐20dB固定)で収音することができるので、鋭指向性などのモードで収録しながらも、同時に全指向性パターンのセーフティ記録ができるのは、非常に安心して使うことができます。

デジタル4ch記録ができる対応カメラは、2023年7月時点ではα1 /α7R V /α7S III / α7 IV / α6700 / ZV-E1 / FX3 / FX30となっています。また、デジタル4ch記録を使用するにあたっては、マイクをつけた状態でカメラ側の設定を変更する必要がでてきます。


動画撮影メニューから、「撮影」-「音声記録」-「マルチインターフェースシューの音声設定」を選択して、「48kHz/24bit 4ch」に設定変更を実施します。


この設定変更を実施する事で、4chでの収録ができるようになります。


2chでの収録時モニター画面上では、1・2のインジケーターが表示されていますが、


4chに設定を変更すると1・2・3・4の4つのインジケーターがモニター上に表示されるようになります。

実際に音声設定を「48kHz/24bit 4ch」で設定した収録データを編集ソフトで展開した音声イメージが下記の様になります。

マイクの設定:鋭指向性(前+後)セパレートで収録しているので、1chがマイク前方の音を収音し、2chがマイク後方の音を収音、3chは全指向性で収音し、4chが全指向性(‐20dB固定)で収音しているのが、はっきりと音声データの波形で確認することができます。

α7 IV + FE 70-200mm F2.8 GM OSS + ECM-M1「鋭指向性(前+後)セパレート」 収録動画

まとめ

ソニーの小型ショットガンマイクロホン「ECM-M1」は、初めて外部マイクを使用する人にも、がっつり使用するヘビーユーザーにも使いやすい高性能なショットガンマイクロホンです。特に直感的に切り替えができる「収音モードダイヤル」のアイコン表示の採用は非常に安心感があり、シーンによって簡単に収音モードを切り替えができ動画撮影における音声収録のクオリティをアップしてくれます。

入門的なシンプルのショットガンマイクロンフォンよりも少々値段は高くなりますが、小型軽量で簡単に操作ができ、αのボディから電源供給もできるケーブルレスタイプの「ECM-M1」は、動画撮影をするユーザーには非常に魅力的なショットガンマイクロンフォンです。

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

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