「極上」の柔らかさと強さで描く奄美大島 | ソニー FE 28-70mm F2 GM レビュー

はじめに
今年の1月、約10年ぶりに奄美大島に撮影に行くことになった。
ソニーの2つのカメラと5つのレンズと共に。
そのレンズの中の1つが、2024年12月に新発売になったFE 28-70mm F2 GMだ。
焦点距離28mmから70mmの幅で開放値F2.0通しを誇るGMレンズ。
聞いただけでも、ゾクゾクする。
F2.0通しのGMズームレンズという、まるで王様のような響きに期待が高まる。
行きの飛行機では、輝く空と海が広がっていた。
どんな旅になるのか。
果たしてどんな写真が撮れるのか。
ずっしりとした重量感を手で支えながら、私は期待に包まれていた。

FE 28-70mm F2 GMの仕様
奄美大島に行く前に我が家に届いたFE 28-70mm F2 GMが入った箱。
待ってましたとばかりに開封する。
ん…
!?
お、大きい…
お、重い…
これが、正直なファーストインプレッション。
小型化が進む現代のカメラとレンズ界の中でそれは大きく重く、私の手にズドンと重さがのしかかった。
この重くて大きいレンズで奄美大島を旅するのかと頭の中が一瞬グレー色に支配されそうになったが、でもしかし、ソニーさんの最新技術が詰まった新発売のレンズだ。もしかしたら、今まで感じることが出来なかったような新しい感覚で写真を撮ることが出来るかもしれないと、旅のリュックにそっとレンズを入れた。

さあ、仕様を見てみよう。
名称:FE 28-70mm F2 GM
型名:SEL2870GM
焦点距離:28-70mm
レンズ構成:14-20(群-枚)
開放絞り:F2
最小絞り:F22
絞り羽根 :11枚
最短撮影距離:0.38m
最大撮影倍率:0.23倍
フィルター径:86mm
テレコンバーター1.4x非対応
テレコンバーター2.0x非対応
外形寸法:最大径x長さ92.9 x 139.8mm
質量:約918g
また、XDリニアモーターによる静粛なフォーカシング、フォーカス時のブリージングを抑制し、動画に求められるなめらかな表現が可能になり、αシリーズカメラの「ブリージング補正機能」に対応している。
筆者が普段愛用しているズームレンズは、FE 24-70mm F2.8 GM IIだ。
重さと大きさは、695g 、87.8 x 119.9mm。
2つのレンズを比べてみると、FE 28-70mm F2 GM の方が223g重く、径は5.1mm長さは19.9mm大きい。数字で見ると、少し重く、少し大きい、といった印象。ちなみに223gってどのくらいなのかと調べてみると、カップ麺の焼きそば爆盛りサイズの重量と出てきた。なるほど。
F2.0通しは、少し大きく、少し重い、うん、それは設計上そうなるだろう。
それは理解した。
とすると、
・単焦点レンズに迫るF2.0通しのズームレンズの迫力
・広角側が焦点距離28mmスタートの使用感
・重さと大きさはどう感じるのか
そのあたりが最も気になるところだなと思いながら奄美に向かった。
筆者が愛用しているGMズームレンズ。
こちらも併せてお読みいただけると嬉しい。
旅のなか
奄美大島は、鹿児島県の離島で鹿児島市と沖縄本島のちょうど真ん中あたりに位置する。
奄美大島と、少し南にある加計呂麻島を約一週間旅した。
奄美大島の1月の日中は、いつも曇っていて、どんよりとしている。
でも、一日の中で太陽が輝く時間が数回ある。トータルすると一日数十分といった短さだが、その瞬間は、世界が一気に輝きだす。光に包まれて華やかに輝きだす。
シャッターを、切る。







遠くの被写体にピントを合わせたときの、手前の被写体のトロトロなボケ感がたまらない。また逆に、手前にピントを合わせたときの背景のトロけ具合も気持ちいい。それは、言葉にすれば「極上」だ。
そして、太陽が陰った時の日陰でのシャープさも、気持ちよく描ける。
トロける柔らかさ、そして、真逆のシャッキリとした硬さも自由自在に描ける。
柔らかいも硬いも、自由自在に描くことが出来る。
驚いたことに、旅のなかでレンズを持っていると、そのホールド感がたまらなくいいと感じた。
レンズとカメラのバランスがいいのか、手に気持ちよくフィットするというか、持っていれば持っているほど、その大きさと重さを感じなくなる使い易さだ。
あれだけ大きくて重いと思ったのに。
ギャップがすごいな
ギャップって、こういうことなんだろうな
そう思いながらレンズを眺める。
それが、セカンドインプレッション。
望遠側でとろけるボケを描く
1月の冬でも、ハイビスカスがたくさん咲いていた。
ダウンジャケットを着ていてもちろん寒いのだけれと、鮮やかな色彩に南国が香って気分が躍る。
F2.0通しのズームレンズ、望遠70mm側のボケをしっかり体感してみようと思い、望遠側にして被写体にググっと寄った。
最短撮影距離は、0.38m=38cm。


背景の緑がまるで何か分からないくらいまでトロリとボケた。
まるで単焦点レンズを使用しているような圧倒的なボケ感だ。


ワンちゃんも、夕飯のパパイヤの漬物も、背景からすうっと浮き出て、一気に主役に躍り出る。
さすが絞り値F2.0の迫力。
次は、風景を望遠70mm側で撮る。
望遠の圧縮効果を利用して、背景をキュッとまとめて撮影した。




筆者は、望遠側で撮る風景写真がとても好きだ。
超望遠レンズを使用して、風景写真を撮ることもある。
風景を望遠側で撮ると、景色が圧縮された中にも壮大感が詰まる。
広角側とはまた一味違う風景写真になる。
広角側で撮影した写真に開放感や力強さがあるとすれば、望遠側で撮る風景写真には柔らかさが加わった強さがある写真になる、そんな気がしている。
これは、カメラとレンズの独特な表現の世界なのだと思う。
人間の視野には、もっと広い景色が広がっていて、目の中に映っている。
だけれども、望遠側で撮影するということは、撮影者の意思によって切り取られた限られた世界で表現される。もちろん広角側も同じく切り取られた世界なのだけれど、望遠側で切り取るのはものすごく限られた小さな世界になるからだ。目の見える中のほんの一部の世界が、そこに写り込む。だけれども、壮大。そこが面白いと思っている。
F2.0のトロける極上の開放感、柔らかいも硬いも自由自在、とにかく美しい。
手のジャストフィット感は、強まるばかり。
旅の途中、重さも大きさも、それはもうほとんど感じなくなってきた。
良好とは言えなかったファーストインプレッションからの、二次曲線ばりに上がっていく好感度のギャップが激しい。
人にギャップを感じると、その人を好きになりやすいとよく言うけれど、レンズも同じなんじゃないかと思う。
どんどん興味が湧くし、どんどん好きになってきている。
広角側で撮る
焦点距離28mm広角側で撮る。




標準ズームレンズと言えば、広角側焦点距離28mmスタートが定番。もう少し広角側を写したいと思う気持ちがあるのは否めないが、焦点距離28mmは、広すぎない気持ちのいい広さの風景が撮れる。このレンズと旅をしてもっと広角側が撮りたい場合は、素直に広角レンズを持参するのがベスト。
暗がりを撮る



夜や朝方の暗がりの中でも、F2.0という開放値があるから、ISO感度をそこまで上げなくても撮ることができるというのがこのレンズの強み。
車の中から朝方の暗がりを撮っても、真っ暗な夜の中の灯りの中でも、F2.0で気持ちよくシャッターを切ることが出来た。
旅の終盤、重さも大きさも、そんなことはもう全く思考に入ってくることはなかった。
ああ、
もう、
このレンズ大好き。
ずっとそばにいて欲しい。
最後はそう愛しく見つめていた。
おわりに
奄美大島は、美しかった。
そして、FE 28-70mm F2 GMは、それを極上に美しく表現することができるレンズだった。
最初に気になっていた
・単焦点レンズに迫るF2.0通しのズームレンズの迫力
・広角側が焦点距離28mmスタートの使用感
・重さと大きさはどう感じるのか
はどうだっただろう。
その回答とすれば、
F2.0の表現力の美しさにすっかり惚れ込み、
もう少し広く撮りたい気持ちは否めないものの広角側28mm側で気持ちよく撮影し、
旅の最後の方には、その重さと大きさは全く気になっていなかった。と言うよりむしろ、最初感じていた大きさと重さが衝撃だったことが信じられないくらいに忘れていた。
その証拠に、5本持っていたレンズの中で、旅の中で1番多く使用したレンズとなった、という結果になった。
それはやはり、その表現力の高さと使いやすさに魅了されたから、ということになるだろう。
ちなみに、持って行ったレンズは、下記の5つ。
・FE 28-70mm F2 GM
・FE 16-25mm F2.8 G
・FE 70-200mm F4 Macro G OSS II
・FE 40mm F2.5 G
・FE 85mm F1.4 GM II
上記したが、一番多く使用したのはFE 28-70mm F2 GM、次に、FE 70-200mm F4 Macro G OSS IIをだった。被写体によって使うレンズは変わるだろうけれど、でも、一番多く使用するということは、やっぱり撮り易く、そして何よりも自分が思う世界を撮ることが出来ると感じるレンズだから無意識的に選んでいるのだと思う。
FE 28-70mm F2 GM
写りは極上。
そして、お値段も極上。
柔らかさと硬さを自由自在に美しい作品を撮れる極上レンズ。
是非手に取って試してほしい。





■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。