ソニー FE 400-800mm F6.3-8 G OSS レビュー|限りなくGマスターに近い超望遠ズームレンズ

山田芳文
ソニー FE 400-800mm F6.3-8 G OSS レビュー|限りなくGマスターに近い超望遠ズームレンズ

お気に入りポイント

今回は2025年3月19日に発売された新しいレンズ、ソニー FE 400-800mm F6.3-8 G OSSのレビューをさせていただきます。αレンズとしてはじめて800mmまでをカバーするこのレンズは、野鳥を撮る人にとってはど真ん中といってもいいレンズだと思いますので、野鳥作品をご覧いただきながらレビューを進めてまいります。

その前に、まずは撮る道具として、個人的に気に入っているポイントを3つに絞ってご紹介します。

ひとつめは、フルタイムDMFスイッチがついているところです。これによって、カメラのメニュー画面から入っていかなくても片手で瞬時に切り替えをすることができます。この「フルタイムDMF」は、AFに設定していてもフォーカスリングを回せばMFでピント合わせが可能になる機能です。AFでピントが合いにくいシーン、背景や木の枝などの障害物にピントが引っ張られるシーンで重宝します。

次がフォーカスレンジリミッターです。FULLと10m-NEAR、∞-8mの3つに切り換え可能ですが、∞-8mの「8m」というところが、400-800mmのレンジを鑑みたときに実にいい落とし所だと思っています。

最後は、三脚座がしっかりしているところです。僕は野鳥撮影時に三脚を使用することが多いので、三脚座がしっかりしていることは非常に安心感があり、撮影に集中することができます。

αレンズではじめて800mmまでをカバー

このレンズが発売される前までは、FE 600mm F4 GM OSSとFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの2本が600mmまでをカバーしていて、ソニーEマウントのレンズの中ではいちばん長い焦点距離のレンズでした。ですので、今回発売されたFE 400-800mm F6.3-8 G OSSは、αレンズとしてはじめて800mmまでをカバーするレンズになります。

まずは800mmという焦点距離ががどれぐらいかイメージしやすいように、400mmと800mmの写真を横並べで比較した写真を見てみましょう。

左:400mm 右:800mm
カメラ位置を三脚で固定することで撮影距離を同じにして、400mm(左)と800mm(右)でカワウを撮り比べた。横に並べると一目瞭然、800mmはかなり距離感が圧縮されている。被写体に近づけないシーンならなおさら800mmの超望遠が活きるだろう。

400mmはゆとり構図で

400mm~800mmは2倍ズームで、それほどズームレンジが広いわけではありませんが、ズームレンジを変えることで、レンズ1本でいろいろな表現を楽しむことができます。800mm側に注目されがちですが、400mmにして鳥の周囲のスペースにゆとりをもたせて撮影することで、800mmとはちょっと違う表現も楽しめます。

こちらは400mmで撮影したジョウビタキです。

SNSにアップしてスマホで見るならば、これだとジョウビタキの配分は小さいけれど、写真を大きく使うならこれぐらい周囲にゆとりがある方がベター。
■使用機材:SONY α1 II + FE 400-800mm F6.3-8 G OSS
■撮影環境:400mm F8 1/15秒 ISO640

600mmはポートレートっぽく

野鳥を趣味で撮影している人は600mm前後のレンジをいちばんよく使うように僕は感じているので、600mmにして撮影したカットも見ていただきます。

こちらのルリビタキを撮る際も三脚を使いました。しかもシャッターは手押しせずにレリーズを使って、ルリビタキがとまっている(ように見える)瞬間に電子シャッターにして撮影することで、全てのブレが0に近い状態になるようにしました。こうすることで、はじめて解像性能の検証ができます。

で、このカット、いかがでしょうか。
フォーカスポイントの瞳はもちろん、カメラ位置から瞳までの距離と同じ距離にある背の羽毛もすこぶるシャープに描写されています。背景のボケも柔らかで心地良いところが好感を持てます。Gレンズという位置づけではありますが、限りなくGマスターに近いGレンズだという印象があります。

背景を大きくぼかして見返りのポージングで撮影。隠れGマスターのようなイメージのレンズなので、このようにボケを活かしたポートレート的なカットを撮る時にも積極的に使いたいレンズだ。
■使用機材:SONY α1 II + FE 400-800mm F6.3-8 G OSS
■撮影環境:600mm F11 1/30秒 ISO640

800mmは寄って切り取り

僕の野鳥撮影作法は、

1.ブラインドなどを使って隠れて撮る
2.カメラを周囲にカモフラージュさせて、自分はカメラからうんと離れて遠隔操作で撮影する
3.飛翔写真の場合は身体丸出しで撮ることもある

の3つです。

したがって、普段の使用レンズは野鳥を撮る人にとっては短いと言われている24-70mm、70-200mm、300mmといったレンズを多用し、400mm以上の焦点距離を使う頻度は少ないのです。そんなこともあって、これまで800mmという焦点距離はほとんど使ったことがありませんでしたが、今回このレンズの800mm側を使ってみて、スゴい引き寄せ効果に病みつきになっています。

800mmにして、カワウのバストアップを撮影したカットをご覧ください。

池にいたカワウを800mmにして撮影。
野鳥を撮影する時は通常、鳥が現れる前にブラインドなどを使って隠れてから出現を待って撮る必要があるが、このカワウは警戒心がそれほどなかったので、身体丸出しでも鳥への圧はそれほど大きくないと判断、隠れずに撮影した。800mmだとこれぐらいの寄り表現も可能となる。
■使用機材:SONY α1 II + FE 400-800mm F6.3-8 G OSS
■撮影環境:800mm F11 1/60秒 ISO800

AFの精度と追従性能を検証

使用前に「リニアモーターを2基搭載して、静かで高速なフォーカシング」、「α9 IIIの120コマ/秒のAF/AE追随高速連写にも対応」とお聞きしたので、AFには大きな期待をしながら、精度と追従性能を試してみました。

このレンズの約2475gという質量は、FE 300mm F2.8 GM OSSのように衝撃的に軽いというわけではありませんが、長時間でなければ十分に手持ちで撮影することが可能です。今回はウミネコの飛翔シーンを手持ちで撮影しました。

以下3点、検証結果をご覧ください。

飛んでいるウミネコの成鳥。横向きに飛んでいるということもあるが、ピントが背景の海に引っ張られることもなく、正確に追従を続けてくれた。次の行動が予測できているのが大前提ではあるが、それができていれば、横向きの飛翔でAFが外すことは考えにくいレベルだ。
■使用機材:SONY α9 III + FE 400-800mm F6.3-8 G OSS
■撮影環境:400mm F8 1/3200秒 ISO500
こちらに向かって飛んでくるウミネコの若い個体を撮影。結構なスピードで飛んでいるが、ボディの演算スピードも相まって、AFの追従が遅れることはなかった。
■使用機材:SONY α9 III + FE 400-800mm F6.3-8 G OSS
■撮影環境:400mm F8 1/4000秒 ISO800
400mm側でも、翼の一部がフレームアウトするほどの至近距離を飛ぶウミネコを撮影。フォーカスレンジリミッターをFULLに設定して撮影したが、AFが遅くなった印象はなく追従し続けてくれた。
■使用機材:SONY α9 III + FE 400-800mm F6.3-8 G OSS
■撮影環境:400mm F8 1/4000秒 ISO500

まとめ

いかがでしたでしょうか。キリリとシャープに像を結んで、ボケは柔らかでなめらか。Gレンズという位置づけではありますが、まるでGマスターのようなレンズです。AFも静かで高速ということもあって、野鳥をはじめ、動きものを撮る全ての人におすすめしたいレンズです。

 

 

■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)、『写真は構図でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)など。最新刊は『SONY α7C II 完全撮影マニュアル』(技術評論社)。

 

関連記事

人気記事