ソニー FE 40mm F2.5 Gレビュー|山本まりこ
はじめに
近所の夏ミカンの花が一斉に咲き出し、辺りいっぱいに爽やかな香りが漂っている。
春が深まってきた。
そんな春の先月、ソニーから3本のレンズが同時発売になった。
FE 24mm F2.8 G
FE 40mm F2.5 G
FE 50mm F2.5 G
の3本だ。
3本に共通するのは、小さい・軽い・単焦点・Gレンズということ。
外形寸法(最大径×長さ)は、3本共通で68mm×45mm。
重さは左からそれぞれ、162g、173g、174g。
小ぶりなタマネギが一個約200g、500mlのペットボトル飲料水が約540gだから、小さな玉ねぎより軽く、500mlのペットボトルの約1/3の重さという事になる。兎にも角にも、圧倒的な小型・軽量設計が施されているレンズ3本だ。略して、小型軽量レンズトリオ。
この3本は外形寸法が統一されているため、ジンバルに装着した状態でもレンズ交換が容易で動画撮影にととても便利。さらには、フィルター径が49mmで統一されているため、動画撮影で必須のNDフィルターや他フィルターも3本共用出来るのも嬉しい。
ちなみにGレンズとは、非球面レンズ・EDガラス・ナノARコーティング技術・操作性に優れたボディーデザインや形状など、描写性も信頼性もワンランク上の品質基準を目指しソニーの光学技術を結集して設計されたレンズのこと。
フードを着けて3本並べてみる。
それでも小さくて軽い。
この3本のレンズについてそれぞれレビューを書くことになった。
どのレンズから書こうかなと迷ったけれど、一番気になるレンズから始めることにした。
FE 40mm F2.5 Gだ。
理由は、40mmという画角が気になるから。
カメラを学ぶならまずは標準の50mmと言われるその画角より広く、筆者も良く使っている35mmという画角よりも少し狭い画角。
楽しみだ。
最短距離撮影 / ボケ力を大胆に楽しむ
昨年主宰している写真教室の生徒さんたちにいただいた花束が、美しくドライフラワーになったので小分けにしてアトリエに飾った。
本当に美しいお花。ありがとう。
まずは、最短撮影距離にて撮影。
F2.5と控えめな解放値であるけれども、ドライフラワーが凛としていてトロリとボケた背景が美しい。
▼AFで撮影
▼MFで撮影
このレンズの最短撮影距離は、AF(オートフォーカス)撮影時は28cm、MF(マニュアルフォーカス)撮影時は25cm。つまり、MF時は3cmより近くに寄って撮影が出来る。だから、MF撮影時により被写体が大きく写るということ。ちなみに、最短撮影距離とは、イメージセンサー面からピントを合わせた被写体までの距離のこと。
見比べてみると、MF時の方が少しだけ被写体が大きく写っている。花束の右奥にトロリとボケて写っている扇風機、MF撮影時の方が3cm寄れている分より柔らかく写っている。
この時、撮影しているカメラはα7C。
フルサイズから、APSCサイズにクロップして撮影してみた。
▼AFで撮影(APSCサイズにクロップして撮影)
▼MFで撮影(APSCサイズにクロップして撮影)
焦点距離40mmの単焦点レンズ、MFで最短撮影距離に寄り、APSCサイズにクロップして撮影すると、ここまで大胆にボケ力を表現して撮影することが出来る。
ちなみに、小型軽量レンズトリオで焦点距離が近いFE 50mm F2.5 Gの最短撮影距離は31cm(MF時)、最大撮影倍率は0.21倍(MF時)。FE 40mm F2.5 Gの最短撮影距離は25cm(MF時)、最大撮影倍率は0.23倍(MF時)なので、FE 40mm F2.5 Gの方が、被写体を大きく撮ることが出来る。簡単に書くと、FE 40mm F2.5 Gの方がFE 50mm F2.5 Gより広い画角のレンズだけれども、より被写体に近くに寄れてより大きく撮れるということ。
これは、楽しい。
スナップ撮影も楽しいことが予想できる。
スナップ撮影が気軽に
多摩川のお気に入りのお散歩スポットへ。
東急東横線多摩川駅の周りには、古墳群含む多摩川台公園が広がっていて、その脇に多摩川が流れている。春には多摩川沿いの桜並木の桜が一斉に咲いてピンク色に包まれる。緑が生い茂り川が悠々と流れていて空が広い。東京であることをふと忘れてしまう、そんな場所。
桜が散り、葉っぱが生い茂った並木を眺めて春が進んでいるなあと思いつつカメラを手にする。軽い。カメラはα7Cなので、カメラもレンズも小さくて軽い。もはや、APS-Cサイズのカメラを思わせるコンパクトさと軽さ。フットワーク軽くスナップ撮影したい人には最適だ。山歩きにも、向いているだろう。
暖かい風がひゅうと吹き、人々の笑う声が聞こえる。
春を撮る。
柔らかいボケだなあ。
こんなに小さくて軽いレンズがこんなに優しいボケを作るんだとしみじみしながらシャッターを切る。
このレンズなら、カメラを気軽に楽しみたい人にも向いているなと思う。これからカメラを始めたい人にもおススメだ。小さくて軽いから持ち歩きやすいし、柔らかいボケが撮れるから写真表現も楽しいだろう。スナップが、気軽で楽しくなるレンズだ。
「広く」か「寄る」か
次は、焦点距離40mmということを、幅広く表現してみたいと思う。
40mmで広い風景を撮る。
次は、寄ってみる。
焦点距離50mmだと表現しづらい「広い」が少しだけ表現しやすく、「寄り」は気持ち良く表現することができる。
1本で、いろいろな角度から被写体を表現することが出来る。
単焦点レンズと言うと、お花を撮るレンズ、お料理を撮るレンズ、人物を撮るレンズなどと決めて撮影することも多いけれど、このレンズは幅広く使用することができそうだ。
「1本だけレンズを持ってスナップ撮影に行こう」
そんな時にこのレンズを選ぶと、フットワーク軽く様々なシーンを撮影できるだろう。
夕刻にて
さっきまで暖かった風がちょっと冷たくなってきた。
太陽が沈み空の色が刻々と変わっていく。
少し暗くなってきた空の下でも、AFはすこぶる快適。
そして、とにかく小さくて軽いから、たまにカメラを持っていることを忘れそうになるくらい身軽。
おわりに
「小さっ、軽っ。えっ。」
それが、FE 40mm F2.5 Gを最初に手にしたファーストインプレッション。
こんなに小さくて軽いレンズでどこまで撮れるだろう、物足りないのではないだろうか、そう思ったことも確か。でも、さすがのGレンズとあって、その表現力は豊か。フットワーク軽く美しい作品が撮れるのは最大の魅力だ。そして、先述した小型軽量レンズトリオの他の2本のレンズ(FE 24mm F2.8 G・FE 50mm F2.5 G)とフィルターを共用したり、ジンバルに装着したままレンズ交換を容易にしながら動画撮影できるのはかなりのさらなる魅力だ。
ちなみに、動画も撮影してみた。
まず思ったのは、カメラを持つ手が楽だということ。もちろんそれは、小さくて軽いから。だから、手持ちで手ブレせずに撮ることが出来るのも気持ち良かった。しかも、片手で撮影できてしまう。三脚やジンバルを使わなくてもある程度は美しい動画を撮ることができた。もちろん、三脚やジンバルを使った方がなめらかな動画を撮れるだろう。でも、動画をこれから始めてみたい、そんな人にはこのレンズは、何も買わずに動画撮影に挑戦できるとても魅力的なレンズだと思う。
小型軽量レンズトリオの他の2本のレンズ(FE 24mm F2.8 G・FE 50mm F2.5 G)も撮影してみた。その3本で撮影にも出た。驚くほど、カメラリュックが軽かった。三脚もジンバルも持たずに撮影に出た。今まで動画撮影となると、大きな動画用三脚を2本、そして、カメラリュックにぱんぱんとなるくらいのレンズを背負って山を登っていた。帰ってくるころには肩がパンパン、家に帰る頃にはぐったりしてお風呂に直行、口もきけないくらい疲れて寝入る、そんな毎回だった。レンズトリオでの動画撮影は、日常に背負っているリュックの重さと変わらないくらいだったので、山道も軽々、撮影も楽々だった。帰って来てからも元気。これは動画撮影の革命かとも思った。
動画撮影を始めてみたい、そう思っている人には特におススメのレンズだ。
筆者も、このレンズと一緒に、レンズトリオと一緒に、もっと深い山を歩いてみたい、そう思う。
レンズトリオの他の2本のレンズ(FE 24mm F2.8 G・FE 50mm F2.5 G)もこれからレビューを書くので、楽しみにしてくれたら嬉しい。
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。
小型軽量レンズトリオの24mm、50mmの記事も是非ご覧ください
■「ソニー FE 24mm F2.8 Gレビュー|山本まりこ」の記事はコチラから
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