ずるくて最高なソニー FE 50-150mm F2 GM の描写力

wacamera
ずるくて最高なソニー FE 50-150mm F2 GM の描写力

はじめに

あなたにとっての標準画角は何ミリだろうか。24mm?35mm?50mm? 人それぞれ使いやすい標準域は違うと思うが、一般的には50mmという声が多い。実のところ私自身も40-50mmが人間の視界に1番近いのではないかと思っている。多くの写真家が標準域のレンズを所有している中で標準から望遠までをカバーするレンズは、さして多くない。私が知る限りでは24-105や28-135あたりだが、いずれもF値は4だ。ソニーのカメラを使い始めて9年が過ぎた私は、長い間「明るくて標準から望遠までをカバーするレンズが欲しい」と思っていた。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/640秒 ISO100 焦点距離 54mm

標準域から始まるF2の世界

まさかこんなレンズが出てしまうなんて。FE 50-150mm F2 GMのアナウンスを聞いて待望のレンズだと心が躍った。自身にとってワクワクするレンズが久しぶりということもあり、高揚感と共に実際発売前より使用させてもらったファーストインプレッションをあげていこうとおもう。

1.見た目に反して意外にも軽く感じる
2.インナーズームが快適
3.フォーカスを外すということを知らない
4.単焦点に匹敵するほどの滑らかなボケ感

常に感覚で撮影している私は難しい光学設計の話はできないが、このレンズが私になにをもたらしたかを話していこうと思う。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/800秒 ISO100 焦点距離 89mm

普段から単焦点レンズを愛する私はFE 135mm F1.8 GMを愛用している。旅先にも35mmと135mmだけで挑むほど相棒のレンズだ。
さすがに135mmのレンズを超えることはないだろうと思って覗いた50-150mmだったが、F2とF1.8の違いは私の肉眼ではわからなかった。
もちろん撮り比べると差はあるのかもしれないが、体感ではわからない。こうなってくると、私が135mmを愛していた理由すらも薄れていく気がした(いや、そんなまさか、と思ってはいるが) 。50mm域では普段通りのスナップも楽しめる。もちろん中望遠ポートレートもたまらない。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/5000秒 ISO100 焦点距離 50mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/1250秒 ISO100 焦点距離 139mm

懸念していた重さだが、50mmと85mm、135mmのレンズ交換がいらないと考えると総重量は軽い。愛用の50mmと135mmを持っていくと考えればそう変わらないことに気がついた。また、これは設計に携わっているSONYの社員の方に聞いたのだが「レンズの重心を根元(ボディ側)にすることで体感として重く感じにくく」なっているのだそう。

更にインナーズームによって、画角変更は非常にスムーズであった。単焦点に慣れすぎているため寄り引きをついつい足で変えてしまうクセがある私だが、それよりも速くサッと画角変更できるため撮影のテンポを損なわず快適だった。

そして相変わらずのオートフォーカスの速さ、的確さ。仕事では1時間に400~600枚の人物を撮影しなければならず、動き回りながら歩きながら撮影している私にとってオートフォーカスの正確さは最重要ポイント。瞬時にフォーカスが合う瞬間は心地よいを超えて神業のように思える。

なんと言ってもF2通しという点。明るさとボケ感を与えてくれる素晴らしいF値に感無量だ。今回、海外のスナップにも使ってみたのだが、心置きなくサクッといい絵が残せてしまったため、自分のスキルが上達したのかと錯覚するほどだった。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/3200秒 ISO80 焦点距離 50mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/8000秒 ISO125 焦点距離 150mm

150mmの圧縮を使いながら裏路地を歩く友達を撮ったり、カーブミラーに映る自分たちを背景を入れ込みながら50mmで撮影する。
また、ビーチに行けば高台の上から透き通った水の中で遊ぶ観光客を背景処理しながら撮れるし、50mmにサッと変えて入道雲が広がる南国のビーチ全景をおさめることができる。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/3200秒 ISO50 焦点距離 150mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/8000秒 ISO50 焦点距離 50mm

もちろん日が沈んだ後のショーなんかもF2が頼もしい。夕焼けと共に残せたのもこのレンズだからだろう。暗くなってきたら躍動感を出すためにスローシャッターにして絞ってもオートフォーカスは相変わらず機敏に動いた。なんと便利なレンズなのか。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/125秒 ISO100 焦点距離 50mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/8 1/8秒 ISO100 焦点距離 150mm

ポートレートにも最高

冒頭にも数枚のポートレートを載せたが、個人的にはポートレートだけではなく旅のお供にも良いし、スナップにも使えてしまう万能レンズだと思っている。しかし画角からしてもポートレート撮影は避けては通れまい。

どの画角でもピントの合っている部分の芯はしっかり描写してくれているのに、そのすぐ後ろからの滑らかなボケ感は単焦点にも引けを取らないと感じる。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2.2 1/1600秒 ISO100 焦点距離 150mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/1000秒 ISO50 焦点距離 150mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2.2 1/400秒 ISO100 焦点距離 50mm

あえていうならばF2はポートレートにちょうど良い。F1.2や1.4は瞳にピントを当てると鼻や奥の目など、すぐにボケてしまう。もちろん表現方法の一つだからそれが悪いという気はないし、個人的にもF1.4で撮るポートレートは好きだった。「だった」とあえて過去形で書いたのは、このレンズを使ってから「やはりF2くらいが良いな」と思うようになったからだ。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 50-150mm F2 GM
■撮影環境:f/2 1/2000秒 ISO100 焦点距離 73mm

50mmと150mmの楽しみ方

あまりセットで考えることのない50mmと150mmの画角。同じ場所から撮り比べてみると作品から伝わる印象もガラリと変わる。
50mmの引きでは状況から光のトーン、私と被写体の距離感も伝わるが、150mmにすると非常にアーティスティックな絵作りになり、撮り手の伝えたい思いがストレートに表現されている。

50mm

150mm

また、このレンズでお花を撮ってみると、また一つ別の楽しみを見つけてしまった。単焦点の35mmや50mmでも近づけばお花自体は大きく撮れるものの画の歪みはどうしても出てくるだろう。しかし同じ位置でカメラを構えながら150mmにした途端、ファインダーにすっきりとした花畑が広がる。

50mm

150mm

通常よくある便利ズームレンズで150mmあたりにするとF6.3になることからこのレンズで150mmにした上でF6.3とF2でも撮り比べてみた。

F2

F6.3

あれ、F6.3でも美しい…?! もちろん美しいボケ感はF2のほうだが、F6.3のほうも心地よい気がするのは私だけだろうか?(ちなみにこの2枚はノーレタッチである。)
「やはりF2には勝てないね」と言いたかったのに、なぜだか気に入ってしまったF6.3。絞っても開放でも全方位美しいということなのかもしれない。

ズームレンズは仕事以外で普段使わなかった私。このレンズ一つで散歩や旅をする楽しさを知ってしまった。これからこれ1本で出かけることも多くなるだろう。ひとつで何役分にもなると思うと心強く、早くまた次の旅に出てみたいと思わせてくれる。

 

 

■写真家:wacamera
広告業界で7年半勤務後、写真スタジオ、ウェディング撮影を経てフリーランスフォトグラファーになり12年目。初めて仕事で行ったフィンランドで英語が話せなかったことに涙し、英語を再勉強。二度の短期母子留学を経て世界各国の企業とのコラボレーション企画を受けながら国内だけでなく世界中を旅しながら撮影を行っている。得意とするのは童話のようなメルヘンで幻想的な色使いと世界観の創造、叙情的スナップ。プライベートでは1児の母。

 

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