ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|パワーアップしたG Masterレンズで動物の一瞬の表情を撮る
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まずはじめに
いろいろと語る前に、まずは、パワーアップしたG Master FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIで撮影した、野毛山動物園の動物たちの写真を見て欲しい。
詳しくは、後ほどゆっくり書きたいと思う。
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今回使用しているカメラはα7 IV。
とろけるようなボケ表現と、滑らかな階調表現。
G Masterレンズならではの上質な表現力。
はじめに
「今までのものより、ぐっと軽くなった。すごくいい。」という噂を最近よく聞く。
もちろん、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの話だ。
従来のFE 70-200mm F2.8 GM OSSからいろいろとパワーアップし、従来に比べて約435g軽くなった。質量約1,045g。
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435gと言ったら、結構な重さだ。玉ねぎの中玉が約200gだから、中玉2個分以上の重さが軽くなったことになる。想像して欲しい。1本のレンズに、玉ねぎ2個くっつけて撮っているのと、外したのと。玉ねぎで表現すると笑ってしまうけれど、500mlペットボトルなら、1本分より少し少ない重さが軽くなったことになる。
さらには、
・α1装着時には最大約4倍のAF高速化を実現
・クリックの切り換えやロックもできる絞りリングを搭載
・ボディ側からカスタマイズできるフォーカスホールドボタンを3つ搭載
・ズーム時に鏡筒の長さが変わらないインナーズーム方式を採用
など、嬉しい機能が満載。
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筆者としては、望遠側で撮影したときに鏡筒の長さが変わらないのは嬉しい。ぐーんと伸びてしまう望遠レンズは、伸びる分を予想して前方を注意しながら撮らなければならないので、扱いが少々大変だ。
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早速、試してみよう。
野毛山動物園へ
快晴。10月に入り、少し涼しくなった風がひゅうと吹く、心地のいい季節。
私の住む古民家のお庭では、キバナコスモスが揺れてトンボが飛びまわり、夜はコオロギの鳴き声が響いている。夏が終わって、あっという間に秋になった。
そんな秋の日に、届いたFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの箱を開けて、持ち上げてみる。
軽い。
従来のFE 70-200mm F2.8 GM OSSを何度も使用したことがあるので、その重さは覚えている。ちなみに筆者、望遠レンズは、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを愛用している。なかなかの重さだが、従来のFE 70-200mm F2.8 GM OSSも同じくらい重い記憶がある。調べてみると、従来のFE 70-200mm F2.8 GM OSS は1,480g、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSは1,395g。従来のFE 70-200mm F2.8 GM OSSの方が、少しだけ重いとのこと。
前述したが、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの質量は約1,045g。従来に比べて、約29%軽量化したそう。29%、すごい。
JR横浜駅で京浜急行に乗り換えて日ノ出町駅を降り、野毛坂をてくてくと上ると、野毛山動物園がある。入園料無料。嬉しい。たくさんある動物園の中でも、特に、野毛山動物園のレッサーパンダが可愛くて、個人的にたまに訪れている。目の前で見ることができるのも嬉しい。
園内に入ると、秋のお花が咲いていた。
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AF感と望遠感を確かめる
まずは、レッサーパンダに会いに行こう。
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運よく、レッサーパンダは元気よく動き回っていた。時折、ペロリと舌を出す表情がたまらなく可愛い。
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レッサーパンダはかなり素早く動いていたけれど、AFはしっかりとレッサーパンダを追い続けた。α7 IVのトラッキング機能とパワーアップしたFE 70-200mm F2.8 GM OSS II のAFで、スムーズに被写体を追いかける。その効き具合は、気持ちいいくらいに俊敏。もちろん設定してある動物瞳AFも抜群に効きが良く、レッサーパンダがこちらを向いているときは瞳を追い続けていた。
トラッキング、動物瞳AF、連写、シャッタースピードをしっかりと設定したら、後は被写体がフレーミングされるように追いかけながらシャッターボタンを押し続けるだけ。たまに再生して撮影した画像を確かめると、思わずドキッとしてしまうくらい美しい写真が撮れている。素早い動物撮影の時は、保険という気持ちでF値を少し絞っていることが多いが、F2.8にしていてもキリッと瞳にピントが合った写真を撮るのは気持ち良かった。レンズとカメラの性能の高さが合致して、動物がなんと撮りやすいことか、と唸りながらシャッターを切った。
レッサーパンダは、くるくると歩き回ったと思うと、パタリと寝転んだり。
焦点距離70mmで撮影
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焦点距離200mmで撮影
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焦点距離200mm+APSCサイズにクロップして300mm相当で撮影
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ぺったりと寝入るレッサーパンダの可愛さよ。
気付くとずっとニコニコしながら撮影していた。
同じく、動物園から見える横浜の景色を撮影。
焦点距離70mmで撮影
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焦点距離200mmで撮影
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焦点距離200mm+APSCサイズにクロップして300mm相当で撮影
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1本で、幅広い表現ができる。
フルサイズカメラを使用しているならば、APS-Cサイズにクロップして撮影することを合わせて撮影すると、70mm~300mmの画角を楽しむことが出来るのでおススメだ。
被写体にグッと寄ってみる
園内には、大きな木が風に吹かれてゆらゆらと揺れ、秋のお花が咲いていた。
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あ、キンモクセイ。
ファインダーを覗きながら、とろけるようなボケ表現と滑らかな光の表現にうっとりしながらシャッターを切った。匂いがするかなと、鼻を膨らませてみたが、今日はあまり香らなかった。キンモクセイの花が香ると、ああ秋だな、台風の季節だなと思う。
集中して撮影したので、途中、ちょっと休憩しようとソフトクリームを購入した。
もしかして、撮れたりするのだろうか。
いや、被写体が近過ぎるでしょう。
そう自問自答しながら、左手で持ったソフトクリームにレンズを向ける。
ピントが合った。
撮れる。撮れた!
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調べると、最短撮影距離は70mm側で40cm。200m側では82cm。もちろん、センサーからの距離だ。レンズの長さは20cm。レンズフードの長さとカメラのセンサーまでの厚みを入れたら、レンズフード先すぐの被写体にピントが合って撮影できるイメージ。
正直、びっくりした。
手に持った被写体を望遠レンズで撮影できるなんて、想像もしていなかった。
これはすごい。
望遠レンズで、レンズフード先すぐの被写体を撮影できるなんて。
横浜の牧場の朝一番の新鮮な牛乳で作ったソフトクリームは、乳脂肪たっぷりなとてもリッチなお味で美味しかった。
トリミングを楽しむ
ガアガアガアガア
バシャバシャバシャ
ソフトクリームを食べていたら、目の前の鳥の小屋が急に騒がしくなる。
慌ててカメラを持って近づいてみると、カモが勢いよく水浴びをしていて、水の上を走るように動き回っていた。夢中でシャッターを切る。
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なんだか楽しそうにバシャバシャガアガアと飛び回っている。
かなりのスピードだったのだけど、AFはしっかりと追いついていた。
実は上の3枚、トリミングしたものだ。
下の3枚をトリミングしている。
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トリミングしてもなお美しい画像。
動く動物をあえて広く撮影しておいて、後ほどトリミングしてしっかり構図をきめる。フルサイズならではの強みだなと思う。
ちなみに、今回トリミングしているのは3枚のみ。
他は、撮影した時のままだ。
いろいろな撮影を楽しむ
今回、いろいろな動物をいろいろ撮影した。
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撮っていても、再生しても、やっぱり気持ちのいい滑らかな階調感。そして、とろけるようなボケ感。このレンズで撮ると、何と言うか、湿度感があるようなしっとりとした空気感が漂う、そう思う。さらに、動物の表情が背景から浮き立ち、それぞれの存在感がリアルに写る、そう思う。
おわりに
パワーアップしたG Master FE 70-200mm F2.8 GM OSS II。
かなり軽くなって、AFは俊敏。描画表現は息をのむ美しさだ。
ソニーで発売している望遠レンズはいろいろある。もっと軽いものもあれば、もっと望遠のものもある。
前述したが、筆者、望遠レンズでは、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを愛用している。望遠側400mmに慣れている分、今回のレンズだとあともう少し望遠にしたい……という欲求が頭の中に何度かよぎった。例えば、テレコンバーターを使用してより望遠にして撮影するのもいいだろう。
でも、野鳥などの小さい鳥や動物を撮影したいという人には、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSがよりおススメだ。200mmだと野鳥などは予想以上に小さく、ぽつり、としか写らない。でも、そこまでの望遠は必要とせず、日常を望遠で撮りたいという方には、今回のレンズはとてもおススメのレンズだと思う。
また、ソニーには、FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSSというGレンズもある。今回レポートしたFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの開放値F2.8まで明るくはないけれど、望遠側は300mmを撮ることが出来る。さらには、重さ854gと、もっと軽いレンズだ。「とにかく軽い望遠レンズが欲しい」という人にはおススメのレンズだ。
まとめると、
G Master FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは、
「望遠レンズを持っていない。でもどうせ買うならいいレンズが欲しい。」
という方におススメのレンズだ。
ペットや人など、動きの速い被写体を望遠で撮りたい人に、特におススメしたい。
もちろん、動かない風景を望遠で撮りたい人にも。
ぐんぐんと進む秋。
そして、その後には寒い冬がやってくる。
美しい日本を、G Master FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIで残して欲しい。
そしてぜひ、この美しい描写力のレンズで、動物撮影にも挑戦して欲しい。
■撮影協力
野毛山動物園
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。