ソニー FE 70-200mm F4 Macro G OSS II レビュー|ズーム全域でハーフマクロ撮影を実現、テレコンバーターに対応した望遠ズームレンズ
はじめに
フルサイズEマウントレンズとして早期に登場したFE 70-200mm F4 G OSSが待望のリニューアル!先代も高画質かつF4ならではの軽さが気に入って筆者も長らく愛用してきました。しかしながら弱点があったことも事実。後に詳しく触れますが、そのあたりを払拭しての登場に発表直後から使うのを楽しみにしていました。その魅力に迫るべく、今回のレビューを風景写真家目線でお送りいたします。
外観と操作性
Gレンズらしい高級感ある白い鏡胴。サイズは最大径82.2mm(フィルター径72mm)×長さ149mm。インナーズーム方式の先代から伸縮方式になったことは大きな変更点のひとつ。そのおかげで70mm側での全長が2.6cm短縮されています。たった2.6cm?と思うかもしれませんが、実際レンズを手にとると随分と小型化されバッグへの収まりが良くなったことを実感します。
ズーミングの操作感はスムーズそのものです。重量は794g(三脚座別)先代モデル比で46g軽くなっています。同焦点距離F2.8のGマスターレンズと比べてみると、やはり小型軽量さが際立ちますね。
花型のレンズフードと三脚座が付属していますが、やや三脚座の剛性感不足を感じることがあり、筆者的にはカメラ側を三脚に固定した方が使いやすいと感じました。そもそも小さく軽いレンズなのでその使い方でも全く問題は無いでしょう。α7R Vで使用した場合のボディ側とレンズ側での手ブレ補正協調制御にも対応。防塵防滴に配慮された設計となっています。
鏡胴に配置されているスイッチ類について順に見ていきましょう。まずはAF/MFの切り替えスイッチ、AFの合焦距離範囲を限定するフォーカスレンジリミッターは3mより遠い距離の被写体を追う時やマクロ域に限定してピントを合わせたい時に便利です。フルタイムDMFのON/OFFスイッチを新たに搭載。AF-Cでもピントリングを回せばピントの微調整が出来るようになったことで、大幅に使い勝手が向上しています。手ブレ補正のモード切り替えスイッチにはMODE3が追加され、不規則に動く動体にも対応しやすくなりました。
その他、手ブレ補正のON/OFFスイッチとフォーカスホールドボタンが3か所。伸縮式となったことに伴いレンズを70mm側で固定するロックスイッチが装備されていますが、持ち歩き時にレンズの自重で鏡胴が伸びることはありませんでした。なお絞りリングは非搭載となっています。
描写性能
先代から光学設計を一新。高度非球面AAレンズ、非球面レンズ、ED(特殊低分散)ガラスとスーパーEDガラスを贅沢に採用した本レンズの描写を項目別にまとめました。
解像度
今回はすべての写真を高画素機のα7R Vで撮影していますが、開放F値からズーム全域において周辺の細い線までしっかりと解像します。以下の写真4枚は高速シャッターを切るためにすべて開放(F4)で撮影していますが、どの焦点域でも周辺部まで高画質なのがわかります。
絞り込めば更に解像感が増し、木々や葉など細かな絵柄が多いシーンで存分に力を発揮してくれます。小さく軽いので風景撮影との相性は抜群です。
最短撮影距離とボケ
レンズ名に【Macro】と入っているだけあって、本格的な近接撮影が楽しめるのが本レンズ最大の特徴。最短撮影距離は望遠側42cm、広角側26cm。特別な切り替えをすることなく全ての焦点距離で最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能です。ズーム全域で同じ倍率で撮れるということは絵作りにとって大きなアドバンテージ。
ただ単に被写体を大きく撮るだけではなく、主役の大きさはそのままに「望遠側を使って圧縮効果や大きなボケを得る」や「広角側を使ってその場の空間や雰囲気を写し込む」等、背景を意識した撮影ができる事を意味します。絞り羽根の枚数は9枚。円形絞りの採用と合わせて望遠レンズらしい大きなボケ表現が楽しめます。画面周辺になるにつれ口径食が見受けられますが、これはどんなレンズでも発生する現象なので仕方がないと言えます。どうしても気になる場合は1段階絞る、もしくはAPS-Cモードを活用する等の工夫をすると良いでしょう。
以下の2枚は望遠側200mmと広角側70mm、どちらも最短撮影距離、最大撮影倍率で撮影したものです。ひまわりの花びらは同じような大きさに写っているのに背景の入り方(広さ)が違うことに気づくでしょう。ズーム全域においてハーフマクロ撮影が出来るので撮り方に自由度が増します。
望遠側と広角側のワーキングディスタンスの違いです。200mm側は被写体から離れて撮れるので昆虫などの撮影にも重宝するでしょう。逆に70mmでは相当に近寄ることになりますのでレンズフードは外しておきましょう。
逆光性能
ドラマティックなシーンは逆光であることが多いのですが、コーティングの最適化により耐逆光性能は良好。強い光を放つ太陽にレンズを向けても、コントラストの低下やゴーストを気にすることなく撮影ができます。
その他
開放での撮影時、カメラ側の「周辺光量補正」が切の状態だと周辺光量落ちを感じますが、むしろ作画に生かせば良いでしょう。気になる場合はカメラ側の「周辺光量補正」をオートにすれば全く問題ありません。また、本レンズを装着するとカメラ側の「歪曲収差補正」を切に変更できないことから、補正無しの素の状態では樽型もしくは糸巻き型の歪みがあるのかと想像できます。
しかしながら、歪みをカメラ内の電子補正に頼ることでマクロ機能を搭載しつつ小型化を実現できているとすれば納得のいく話ですし、ファインダー像では線がまっすぐな状態で見えているので、普段使用していて気になることはありません。
※カメラの初期設定では周辺光量補正はオートに設定されています。
AF性能
最新のXDリニアモーターを4基搭載、こちらも大幅なアップデートがなされています。先代レンズと比べると動く被写体はもちろん、最短撮影距離付近から無限遠までのピント移動も素早く行えます。純正レンズならではのスピーディーなAFは作動音もなくスムーズに合焦。その他、ズーム中のフォーカス追随やα1との組み合わせによる秒間最高約30コマの高速連射にも対応しました。
また、リニアレスポンスMFの採用によりマニュアルフォーカスによるピント合わせも快適です。
テレコンバーターに対応
200mmでは望遠が足りないと思うことも多いのですが、先代レンズはテレコンバーターに対応していませんでした。その点、新型はきちんと対応。また2倍のテレコンバーターを使用すれば、等倍マクロ撮影が可能です(1.4倍テレコンバーター使用時の最大撮影倍率は0.7倍)。今回は1.4倍のみ使用しましたがマスターレンズの描写力が高く、画質の低下を感じることはありませんでした。
まとめ
先代の不満点がすべて払拭された新型のFE 70-200mm F4 Macro G OSS II。今回は10日間ほどの短い試用期間でしたが、その進化を存分に感じました。本レンズがあればマクロレンズを持ち歩かなくてもほとんどの被写体に対応できるでしょう。前述したテレコンバーターの併用までを考えればさらに対応シーンが広がります。
またインナーズーム方式から伸縮方式へと変更、小型化を実現したことも英断だと感じました。全方位から見てもスキのない新レンズだけにFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIとの比較でも本当に甲乙つけがたい選択となりそうです。
その上で・・・
最後に筆者が感じたFE 70-200mmのF4 GレンズとF2.8 GMレンズ。向き不向きの目安を書いておきますね。
F4が向いている方
・とにかく小型軽量が良い
・マクロ領域の撮影に興味がある
・暗い所での撮影が少ない。もしくは暗い場合は三脚を使用する
F2.8が向いている方
・重量と大きさが気にならない
・マクロ領域の撮影をすることがほとんどない
・少しでも大きくぼかしたい
・暗い所での撮影が多い
結局は「マクロ領域での撮影」or「レンズの明るさ」そのどちらを取るのかが決め手となりそうです。既にFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIを持っている方でも、マクロ撮影が出来る小型軽量の望遠レンズとして本レンズと使い分けるのもアリではないでしょうか。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師