ソニー FE 85mm F1.4 GM×ペット撮影|小川晃代

小川晃代

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はじめに

 ソニーの「FE 85mm F1.4 GM」は人物のポートレート撮影で王道の中望遠レンズです。重さは約820g。私が使っているα7R IVやα9 IIのボディとの組み合わせも良くしっくりきます。決して軽いレンズではありませんが、普段70-200mmレンズを使用してペット撮影をしている私にとっては、軽いと感じてしまいました。

 高い解像力と美しいボケ味なので、一度使うとやみつきになるレンズ。今回はこのレンズでペットのポートレート撮影をしてみました。

ペットのポートレート撮影

 まずはバッチリカメラ目線のわんこを撮影。パグは顔周りに黒い部分が多いので、暗い場所だと特にピント合わせが難しい被写体なのですが、しっかりとシャープにピントが合ってくれました。解像感が高く、黒い部分も階調豊かに表現されています。また、毛の質感やパグの特徴であるしわの感じもしっかり再現されています。

 奇声を出して一瞬こっちを見た瞬間に連写で撮影。いろいろな事に興味がある子がカメラを見てくれるのは一瞬なので、ペット撮影ではこの一瞬を撮り逃さずに撮れるかどうかが一番のポイントです。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 1/250秒 ISO100

 普段は元気なイメージのパグ。ついさっきまでは元気に遊びまわっていましたが十分に探検もしたので、ちょっと疲れたのかな?ウトウトと眠りそうな雰囲気。せっかくなので少しイメージを変えてシックで落ち着いた感じで撮ってみました。どんなイメージにしたいかは色味がすごく重要になってきますが、重厚感がありながらも全体的には重たすぎず、ゆったりとした時間の流れを感じるような空気感を表現出来たと思います。斜め背後から固い光が当たっていて少しコントラストの強い場所ではありましたが、せっかくくつろいでくれたのでわんこに場所を移動してもらうわけにもいきません。逆光により暗くなってしまった顔周りは下からレフ板を当てる事で解消しました。

 結果、目にキャッチライトも入り大きな目がより強調されたと思います。また、この子はまだ生後10ヶ月という事もあったので、いろいろな事に興味津々。その好奇心旺盛でキラキラとした輝く瞳もしっかり表現出来ました。ペットのポートレート撮影は、人間のモデルさんのようにポーズをつけたり場所を決めて撮影する事もありますが、基本はわんこの性格に合わせてこちらが動いて撮影をする事が多いです。わんこ次第で、遊びながら撮影をしたり、又は一通り遊んだ後に撮影をしたりとその子に合わせて撮影をしていきます。今回のようにわんこが落ちつく場所が出来たのであればその場で瞬時にフレーミングをして撮影するのが大事です。こんな時に一瞬の表情を逃さないようしっかりとピントが合ってくれたのは心強かったです。

 大きくてキラキラした瞳。この子の可愛さを表現出来た1枚。

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■撮影機材:ソニー VLOGCAM ZV-E10 + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.6 1/1000秒 ISO320

 こちらも同じ場所で撮影した写真。木の枝のオブジェを手前に入れ込んだ所、良い感じの前ボケになってくれました。こっそりと覗き見している感じが表現出来たかなと思います。窓ガラスの模様がキレイだったので、窓を入れ込んだ縦位置で撮影した1枚。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 1/500秒 ISO400 露出補正+1.0

魅力は大きなボケ味と圧縮効果

 このレンズの魅力は何よりも大きなボケ味。美しいボケを持つ作品はパッと見ただけで見るものをぐっと引き込んでくれます。こちらはカヤックの先端にいるわんこ。わんこの瞳はキレイに写り、カヤックは大きくぼけています。大きくぼけた赤と背景の青や緑が写真を華やかにし、その中でわんこがシャープに浮かび上がっていますね。水遊び後の写真ですが、太陽で半分乾いた毛の感じもしっかりと写せています。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 1/3200秒 ISO100 露出補正+0.7

 水遊び中のわんこをあえて広くフレーミングして撮った写真がこちら。中望遠の圧縮効果が効いていて遠くにある山々がぐっと手前にあるかのように写せています。また、実際には他にも湖にカヌーが浮いていたのですが、入らないよう撮ればまるでこの湖と山を独り占めしているかのような気分に浸れます。この写真を見てわかるようにピントが合っている範囲はとても狭いです。その分手前と奥がキレイにぼけているので立体感のある美しい仕上がりになっています。手前にも大きなボケを入れたかったのでカメラは水面近くまで下げて撮影しました。

 この日はおひさまが顔を出したり雲に隠れたりと明るさがころころと変わる日でしたが、ちょうどわんこの泳ぐあたりにうっすらと光が差し込んだ良い状況でした。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 1/6400秒 ISO100 露出補正+0.7

 この圧縮効果が好きで私は望遠寄りのレンズを使う事が多いのですが、例えばこんなシーンでも落ち葉と猫の関係が良く撮れていると思います。公園内で下がコンクリートのため、シチュエーションとしては良くある平凡な状況です。しかし、FE 85mm F1.4 GMの圧縮効果で奥まで続く並木がぐっと引き寄せられ、木々の隙間がなくなり密集感が出ました。また、全体的にグリーンで埋め尽くされた事で人工的なコンクリート部分が目立たなくなって、自然と調和しているナチュラルなテイストで仕上がっています。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.6 1/1000秒 ISO400 露出補正+0.3

 この公園に行く度にこの道で出会うにゃんこ。時々散歩で人間やわんこが目の前を通りすぎていきますが気にしない様子。ここがお気に入りのくつろぎスポットのようです。

ボケの利用方法

 公園の野良猫をワイルド感たっぷりに撮りたいなら多めの前ボケが効果的です。写真はこちらが見ている事にも気づかずくつろぐ猫たち。大あくびの瞬間を捉えました。場所的には猫がバッチリ見える所でしたが、手前にある低めの木の葉を探し、その葉でレンズ前を覆うような形で撮影しています。大きな前ボケと背景のボケ味に囲まれ、顔部分だけが鮮明に写っているのでより立体感が出て猫を浮き上がらせて写せました。顔部分だけはシャープに写したかったので、顔が葉で隠れないようしながら、前ボケ多めで撮影。

 ボケ味が大きいと美しいだけでなく、背景の粗も隠せるので便利です。特に室内での撮影では生活感が出てしまい、写真を見た人も主役の方ではなくその背景の方に気をとられてしまいがちです。ですが、背景が大きくボケてくれれば、主役のみに集中してもらえます。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 1/320秒 ISO125 露出補正+0.3

 こちらは和室での1枚。ちょうどくつろいでくれた場所がふすまのすぐ前。標準ズームレンズで撮ってみると、ふすまと子犬の距離が近すぎて、ふすまの柄が強調しすぎるしボケないしでこの子犬の可愛さが全く伝わりません。ですがFE 85mm F1.4 GMで撮れば、ふすまの柄が何だかお洒落なランダム模様の背景紙の前で撮ったかのように写り、全体的に優しい雰囲気になりました。

 少しレトロでそれでいてさわやかな空気感もあります。ちらりと見えた子犬の白目が無邪気だけどあざと可愛さを兼ね備えていて、この子の良さを引き出してくれました。特に演出した訳ではなかったのですが、毬で遊び疲れた1シーンを狙ったかのように写っていますね。

 ペットを撮る時は基本、ペットの目と同じくらいの位置にカメラを構えて撮影します。この子は畳に顎をつけてかなり低い位置だったのでカメラも畳においた状態で撮影をしています。

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■撮影機材:ソニー α9 II + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 1/800秒 ISO3200 露出補正+1.7

 こちらも室内での1シーン。興味津々で近づいてきたにゃんこを撮った1枚。シャープに合った瞳や顔部分から体にかけてのボケ味が滑らかで自然ですね。全体的にナチュラルなペット写真が好きな私にとってこのボケ感はたまりません。光が少しだけ差し込む窓際で撮影。こちらを見る美しい瞳に吸い込まれそう。

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■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.8 1/400秒 ISO500 露出補正+0.3

まとめ

 FE 85mm F1.4 GMはきりっとシャープなピント面とそこからつながる柔らかいボケ味、主役を引き立たせるのに欠かせないレンズです。やわらかいボケ味が好きな私にとって、このボケ感はたまりません。85mmという焦点距離と中望遠レンズの圧縮効果は特に屋外のペット撮影で重宝します。開放値がF1.4なので暗い場所も安心。これからの時期、イルミネーションポートレート撮影でも頼りになるレンズです。

■写真家:小川晃代
トリマー・ドッグトレーナー資格を保持し、ペットや野良猫等小さな生き物撮影を得意とするペトグラファー。2006年に動物に特化した制作会社とペット&キッズ専門の写真スタジオ「アニマルラグーン」を設立。現在はカレンダーやカタログ、写真絵本の撮影をはじめ、写真教室の講師やペットモデルコーディネーターとしても活躍。

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