ソニー FX30 レビュー|シネマカメラを日常に ~ 山城淳一 ~

山城淳一
ソニー FX30 レビュー|シネマカメラを日常に ~ 山城淳一 ~

はじめに

こんにちは。acud.の山城淳一です。
今回は発表された時からとても気になっていたカメラSONYのCinema Line FX30を使用して感じた、気に入った点や魅力などをお伝えします。作例と普段使用しているFX3、α7 IVとの比較も交えご紹介します。

■機材:SONY FX30 + SONY E 15mm F1.4 G
■設定:XAVCS-I 4K 24p 240Mbps 4:2:2 10bit

ファーストインプレッション

まず一番印象的だったのは、リーズナブルな価格です。カメラのキタムラオンラインで税込244,240円(2022/12/19時点の価格)と、シネマカメラとしてはかなりお求めやすい価格で、FX3と比べ約半分の値段というのは驚きました。

カメラとしては、重さは562gとSONYのCinema Lineの中では最軽量で、4K 120フレームで撮影できるところが特に気に入ったポイントです。外観はほぼFX3と同じで68g軽く、α7 IVと比較した場合は11gほど軽い仕様です。

(左)FX3、(中央)FX30、(右)α7 IV

また、FX3と同じ筐体を使用しているので、FX3ユーザーはアクセサリーやXLRハンドルユニットなどを共有できるのが嬉しいところです。

センサーはAPS-C(Super35mm)なので、フルサイズと比べ軽くてコンパクトなレンズが多く、純正やサードパーティ製の豊富なレンズ群を使用できるのはFX30の強みです。また、画角は狭くなりますが、画質の面で優れるフルサイズのレンズも使用できることを考えると、シネマカメラとして非常に魅力的なシステムだと感じました。

画質については、普段APS-C(Super35mm)のカメラを使用することがないので、フルサイズと比べて出てくる絵のクオリティはどうなのだろうと単純に疑問があったのですが、使ってみてそれは払拭されました。出てくる絵はクオリティが高く、機能もFX3と同等かそれ以上の部分があり、使っていてストレスのないカメラでした。

■機材:SONY FX30 + SONY E 16-55mm F2.8 G
■設定:XAVC HS 4K 120p 280Mbps 4:2:2 10bit

スチル面では単写しかできないなど、FX3、α7 IVと比べると機能は劣りますが、有効2600万画素の新型の裏面照射型CMOSセンサーと画像処理エンジンBIONZ XRのおかげでクオリティの高い画質が得られます。

FX3を持っている方はサブ機として、これから動画を始めるビデオグラファーやクリエイターの方はメイン機として心強い味方になってくれるシネマカメラです。

SONY FX30 + SONY E 16-55mm F2.8 G

FX30おすすめ機能

ブリージング補正(※FX3にはない機能)

ブリージングとはピント位置が変化した時に画角の広さが変わってしまう現象のことを言います。FX30ではこのブリージングを補正してくれる機能が備わっていて、画角が変わることなく自然にピント面を変化させてくれます。注意点として、補正してくれるのは対応の純正レンズ装着時に限られます。また若干画角がクロップされます。

僕がメインで使用しているFX3にはこの機能がなく、よく動画撮影で使用するレンズFE24mmF1.4GMは比較的ブリージングが起こるので、この機能はとても嬉しい機能です。

クリエイティブルック

クリエイティブルックとは映像の見た目・印象を変えるフィルターのような効果を与えられるプリセットのことです。FX30には10種類のルックが搭載されています。撮影後にPCでカラーグレーディングをするのが苦手な方や億劫な方、Log撮影は少し敷居が高いという方におすすめの機能です。撮影をする時にコントラストや彩度などをカメラ内で調整して簡単にシネマティックな映像に仕上げることができます。10種類のルックがあるので、大体の方がお気に入りのプリセットが1つは見つかるはずです。

全画素超解像ズーム

全画素超解像ズームとはSONY独自の全画素超解像技術を使用して、デジタル的に画質劣化の少ない画像処理でズームを行う機能です。4K動画は1.5倍、FHD動画は2倍までの超解像ズームが行えます。

ワンオペで撮影しているとレンズ交換などは極力少なくして、撮影をスムーズに行いたい時が多々あります。そんな時は全画素超解像ズームを使用して画角を変化させ、バリエーションのある動画素材を撮影するようにしています。FX30はズームレバーが上部についていて、簡単にズーム操作を行うことができるので、単焦点レンズを装着しているときなどは積極的に使用すると良い機能です。

注意点としては、全画素超解像ズームを使用した際はAFのエリア設定は無効になり、モニターに表示される点線の枠内の部分でAFを行います。

シネマカメラで日常を残す|Cinematic Vlog 01

使ってみて感じたのは、FX30は日常に寄り添えるシネマカメラだということ。カバンに放り込んで、遊びに持って行くのも良いですし、日々の暮らしや思いを記録したり、趣味や仕事の作品撮りをしたり…。FX30は日常をシネマティックに残すことができるサイコーのカメラでした。

FX30はクオリティの高い映像、最新の手ブレ補正や優秀なAFなどの性能、手に取りやすい価格と三拍子揃ったシネマカメラです。誰でもシネマカメラで簡単に日常を残し思い出にできる時代、なんて贅沢なのでしょう。

今回FX30を使用していて、ふと思い出したことがあります。25年前にSonyの家庭用MiniDVビデオカメラを手に入れて、夢中で日常を撮影していた日々の事。今見返したその時の日常は、かけがえのない思い出です。

日常をテーマに撮影した冒頭の動画を見ていない方は是非ご覧ください。

冒頭の動画→シネマカメラのある暮らし01

シネマティックポートレート|Cinematic Vlog 02

FX30は4K120フレームで撮影が可能ですので、24フレームで5倍スローモーションの映像表現ができます。シネマティックポートレートやシネマティックVlogなどで、スローモーションを多用した映像表現を行いたい場合は4K120フレームで記録できるFX30はおすすめです。

注意点としては4K120フレームの場合、画角が約1.6倍にクロップされるところです。16mmの場合は約26mm(フルサイズ換算 約39mm)になります。クロップが気になる場合は4K60フレームの設定にすれば、クロップ率が約1.04倍となり、ほぼ気にならなくなります。2.5倍スローモーションで十分な場合は4K60フレームの設定で撮影すれば良いです。

■機材:SONY FX30 + SONY E 16-55mm F2.8 G
■設定:XAVCS HS 4K 120p 280Mbps 4:2:2 10bit

おすすめユーザー & 比較 (FX30・FX3・α7 IV)

SONY FX30+SONY E 15mm F1.4 G

FX30はこれから映像のスキルを身につけたい方や本格的にビデオグラファーを始める方には最高のカメラです。FX3の機能をほぼ全て受け継ぎ搭載していますし、クロップはされますが、制限時間なしに4k120p 4:2:2 10bitで録画できます。アクティブ手ぶれ補正や優秀なAFなどの機能も充実し、価格もFX3と比べて半額程度なのでとてもリーズナブルです。また、FX3に搭載されていないブリージング補正やフォーカスマップ、PPLUTカスタマイズの機能も備わっています。

スチル面ではメカシャッターがなく、電子シャッターのみの単写となり、メカシャッターのあるFX3やα7 IVと比べると機能は見劣りしますが、出てくる絵は約2600万画素の新型 裏面照射型CMOSセンサーと画像処理エンジンBIONZ XRのおかげでクオリティの高い画質が得られます。

 

SONY FX3との比較

FX3は、4K120フレームのクロップ率が約1.1倍と低いところや、高感度性能が高いので暗い低照度の撮影環境でも低ノイズの映像を撮影できる点が優れています。暗い環境でも積極的にムービー撮影を行う場合や、G Masterレンズなどのフルサイズ用レンズを最大限に活かしたい場合はFX3をおすすめします。

スチル面では、メカシャッターを搭載し、連写などの機能も備わっていますので、ある程度はスチル撮影にも対応可能です。画素数が約1210万画素と控え目なので、WEBやSNSに使用する目的で使用すると良いです。

 

SONY α7 IVとの比較

α7 IVはスチルをメインにVlogなどカジュアルにムービーを撮影するクリエイターにおすすめです。カジュアルとは言っても4K60フレーム (1.5倍クロップ)で撮影ができ、2.5倍スローモーションが可能ですし、ブリージング補正やフォーカスマップ、アクティブ手ぶれ補正など動画に関する機能も備わっていて、本格的なムービー撮影が可能です。

スチルに関しては3300万画素のフルサイズセンサーから出てくる絵は解像感があり文句なしです。また当然ですが、FX30やFX3にはないEVFがあり、スチルに関する機能は格段に上です。α7 IVはスチル・ムービーの両方をこなすクリエーターにおすすめです。

■機材:SONY α7 IV + SONY FE 24-70mm F2.8 GM II

 

スペック比較

FX30 FX3 α7 IV
キタムラ税込価格
(2022/12/19時点の価格)
244,240円 462,040円 292,950円
センサー APS-Cサイズ 35mmフルサイズ 35mmフルサイズ
有効画素数 動画: 約2010万画素、
静止画: 約2600万画素
動画: 約 1030万画素
静止画: 約1210万画素
約3300万画素
動画 4k120P (約1.6倍クロップ)
4k60P (約1.04倍クロップ)
4k120P (約1.1倍クロップ)
4k60P (ノンクロップ)
4k60P (1.5倍クロップ)
手ぶれ補正 イメージセンサーシフト方式5軸補正
5.5段
イメージセンサーシフト方式5軸補正
5.5段
イメージセンサーシフト方式5軸補正
5.5段
長時間撮影 冷却ファン搭載 冷却ファン搭載
ISO感度 ・動画撮影時: ISO100-32000相当
・静止画撮影時: ISO100-32000 (拡張: 下限ISO50、上限ISO102400)
・動画撮影時: ISO80-102400相当
(拡張:上限ISO409600相当)
・静止画撮影時: ISO80-102400 (拡張: 下限ISO40、上限ISO409600)
・動画撮影時: ISO100-51200相当(拡張: 上限ISO102400)
・静止画撮影時: ISO100-51200
(拡張: 下限ISO50、上限ISO204800)
全画素超解像ズーム 4K 1.5倍、HD 2倍 4K 1.5倍、HD 2倍 4K 1.5倍、HD 2倍
モニター 7.5 cm (3.0型)
約 236万ドット
7.5cm (3.0型)
約 144万ドット
7.5cm (3.0型)
約 104万ドット
メカシャッター あり あり
EVF あり
ブリージング補正
フォーカスマップ
あり あり

まとめ

シネマライン最軽量のFX30はカジュアルに持ち出せる日常に寄り添うシネマカメラだと感じました。日々の暮らしや思い、遊びに趣味や仕事など…。様々なシーンをこれ一台で記録したいと思わせてくれます。

今回FX30を使ってみて、昔家庭用MiniDVビデオカメラで日常を撮影するのに夢中になっていたことを思い出しました。これからはコンパクトで持ち出しやすいシネマカメラで、積極的に日々の暮らしを切り取っていこうと考えています。また、軽くてバリエーションも豊富なAPS-Cのレンズも気になり始めたので、色々と調べてみます。

FX30、気になる方は是非、チェックしてみてください。最後まで、お読みいただきありがとうございました。

 

 

■執筆者:山城淳一
福岡県在住。デザイン事務所を運営。地域や自治体、企業の思いを形にするクリエイティブな企画を得意とする。Beginning of cultureをテーマに写真、動画、WEB、SNS、イベントを複合的に展開し、それぞれの場所で新たな要素を生み出し続けている。

 

 

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