はじめに
前回は冬景色についての撮影ポイントをお送りしたのですが、今冬は暖かく春の訪れが早いですね。きっと桜の開花も例年以上に早まるのではないでしょうか?そこで今回は、日本の春の象徴でもある桜の撮影についてのポイントをテーマにお送りいたします。
桜の露出(ソメイヨシノやその他、白っぽい桜)
基本はプラス補正
桜には色んな種類がありますが、代表的なものと言えば「ソメイヨシノ」ですよね。日本各地、あらゆるところにあり、その明るい花色を見ると春の訪れを実感します。色は淡いピンクなのですが、実際には白に近いとも言えます。前回の雪の撮影ポイントでも触れたのですが、白っぽく明るい色にカメラを向けた場合、オート露出(絞り優先オート、シャッター優先オート、プログラムモード)で露出補正が0の補正なしの状態だと全体的に暗く写ってしまう傾向があります。そのため画面全体を桜が占めるような構図では露出をプラス傾向にする必要があります。ミラーレスカメラの場合はファインダーや液晶を見ながら補正を調整。一眼レフタイプの場合は1枚撮影してから画像を確認、露出を判断すると良いでしょう。
プラス補正が不要なことも
ただし桜以外の色が多くを占めるような場合ではプラス補正を控えめ、もしくは補正の必要がない場合もあります。また春先に咲く河津桜やソメイヨシノより遅れて咲く八重桜のように、ピンク色が濃い花に関しても同様でプラス補正が不要な場合もあります。
時にはマイナス補正も
桜の花が白いといっても逆光状態などで背景が影になっている場合は、プラス補正ではなくマイナス側に補正する必要があります。色による補正が必要なのか?明暗の強弱による補正が必要なのか?シーンごとの露出感覚をつかめるようになるのがベストです。
桜の色表現
前述のように桜はピンクと言っても結構白っぽい色をしています。それゆえ色をしっかりと出すのが難しい花だとも言えます。私自身は繊細なありのままの桜色を表現するため、後述の作例で触れる、時間帯による光の色や光の方向を上手く利用して「自然かつ良い色」が出るように心がけていますが、どうしても色を出したい場合、ホワイトバランスの設定画面でマゼンタ方向に色調整したり、撮影後の画像処理によってマゼンタを加えたりすることで桜をよりピンク色に描くことも出来ます。
また各カメラに搭載のピクチャーモード(風景モードやビビッドモードなど)を使うと鮮やかな写真となります。しかしながら、実際にはあり得ないような色に仕上がった写真を見ることも多々ありますので注意が必要です。それぞれの撮影スタイルによって「自然な写真」or「映え写真」を目指すのか?そこは好みもあるので何とも言えませんが、目の前に広がる風景の色をしっかりと目に焼き付け、その姿を描く事が出来るようになるのが写真上達への近道だと考えています。撮り方が良くない写真でも安易に色をプラスしたりコントラストを上げたりすれば良いとの考え方は、例えるなら「濃い味の料理に慣れてしまい、素材の味を損なってしまう」ことにつながり、上達を妨げてしまうこともありますので節度を持って行いましょう。
右の作例は小さな画面で見ると一見、桜のピンク色が濃く色鮮やかに見えますが、しっかり見ると木々の色や芽吹き始めた柔らかな緑までが赤っぽくなっており不自然。やはり自然なのは左の作例だと言えます。色の強調には注意が必要で、あくまでも「隠し味」程度にとどめておくのが良いでしょう。
時間による光の色の移り変わりを意識しよう
光の色について簡単に解説すると下記のようになります。
●日の出前や日没後 → 青っぽい光
●日の出直後や日没間際 → オレンジっぽい光
●晴天の日中 → 白い光
●ライトアップ → 照らす光源の色によって光の色が変わる
ホワイトバランスを太陽光や昼光に設定しておけば、その時間帯による光の色を生かした写真が撮れます。この時ホワイトバランスがオートになっていると、光による色をカメラが勝手に変えてしまいますので注意が必要です。ホワイトバランスに関しては過去の記事で詳しく触れていますのでそちらも併せて参考にしてくださいね。
あくまで私の基準なのですが・・・
●上品で艶やか(あでやか・つややか)な色表現を望む時は日の出前や日没後のやや青っぽい光の時間帯
●より鮮やかに桜色を強調したい場合は日の出直後や日没間際のオレンジっぽい光の色の時間帯
●可憐で控えめな桜色を表現したい場合は晴天日中の白い光の色の時間帯
に撮影する事を心がけています。以下の写真を参考に皆さんも撮影する時間帯を考えてみてくださいね。
光線の向きを意識する
桜に限ったことではないのですが、やはり光の向きは重要。自然な色合いでしっかりと色を出したい時にはサイド光が基本。より印象的に表現したいと思ったときは逆光を選びます。順光は正しい色表現ができるのですが、どうしても陰影に乏しくなるため立体感や奥行き感に欠けますし、桜の色がより白っぽく表現されてしまう傾向にあります。
天候を考えて撮る
桜の見頃時期は案外短いもの。開花した後、平年並みの気温で推移した場合、一週間ほどで満開を迎えます。
気温が高ければ数日で一気に花が開き、満開の期間はそう長く続きません。週末にしか撮影に出られないという方はその時に撮っておかないと翌年まで撮れないなんてことも・・・。 撮影に行った時、上手く撮りたい天候条件になってくれれば良いのですが、なかなか上手くいかないことも多いです。そこで自分が天候条件に合わせた撮り方をする。もしくは天候条件に合うような場所を、撮影地に選ぶことを意識してみましょう。
散り始めもねらい目
満開のピークを過ぎても美しい写真が撮れるのは桜ならでは。風にはらはらと舞う桜吹雪や水面に浮かぶ花筏にもトライしてみましょう。
まとめ
桜の撮影ポイントについてお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?目で見ていると美しい桜も「写真にするとイマイチ」と悩んでいる方も多いと思います。今回の記事を頭の片隅に置いて、今年の桜撮影にのぞんでいただけると嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師