風景写真の引き出しを増やす!|その10:夏の風景を楽しもう
はじめに
梅雨入りの遅い今年ですが7月に入れば本格的な夏ですね。でも夏の間はどうしても撮影から遠ざかり気味・・・。その理由は「花などの被写体が少ない」「やっぱり暑い!」などなど。でも夏ならではの特徴を生かせば撮れるものはたくさんあります。そこで今回は「夏の風景を楽しもう!」と題してお送りしてまいります。
夏の撮影のおすすめ
早朝や夕方の時間帯
近年の夏は猛暑になることが多いため、日中は熱中症の危険を伴う事も。少しでも太陽の低い時間帯に撮影する事で暑さのリスクを回避することが出来ます。そして低い角度の光によって陰影がつくので風景の立体感や奥行き感を描くことが出来ます。早朝は真夏でもすがすがしい空気に包まれ条件変化にも富んでいます。運が良ければ朝もやや霧、また雲海が出ることもあり、雨が降った翌朝は特におすすめです。
梅雨明けすぐの7月20日ごろを例にすれば関東から関西にかけての日の出の時間は4時30分~5時頃。日の出の早い地域では4時前には明るくなり始めます。早起きは辛いですが日の出前から撮影を始め、気温が上がりきる前に撮影を切り上げるのも良いでしょう。また夕方も日没時間が近くなると少しは暑さも少しマシになってきます。夏に多い夕立やその直後もシャッターチャンスです。日が傾き始める頃、外の様子(特に空)を見る癖をつけておきましょう。
朝露のおりた早朝の田んぼに蜘蛛の巣が光ります。陰影を生かし、背景が日陰になるようカメラの高さを調節して撮影しました。
朝もやの森に朝日がさしこみ幻想的な世界となりました。木々の隙間から太陽を見せるよう左右のカメラ位置を考えて撮影しています。輝度差の大きなシーンは露出が難しいため数枚露出を変えて撮っておくのが良いでしょう。
雨の翌朝、雲海を予想して出かけました。気温が高い夏は沸き上がるような雲海や霧になることが多いです。
夕日が森を赤く染め上げます。朝夕の色温度が低く赤っぽい光は日常の風景をドラマティックに変えてくれます。
夕立の最中や雨のやみ際に日差しがあれば太陽の反対側(順光側)を見てみましょう。虹が見られる事が多いです。CPLフィルターを、虹が最も濃く写る箇所に調整しています。調整を間違えると虹が薄くなったり、消えてしまったりするので注意が必要です。
夕立の後、ひまわりに残った水滴をマクロレンズで撮影しました。慎重なピント合わせが必要です。
日の出と日の入りの位置は季節によって変わります。夏は真東より北側から朝日が昇り、真西より北側に太陽が沈みます。写そうとする風景と太陽の位置関係を考えると夏しか撮れない場所があるので狙ってみましょう。スマートフォンのアプリなどを使えばおおよその太陽の位置が予測できますので便利です。(写真は夕日を撮影したものです)
高地での撮影
海抜が高い場所では夏でも涼しいです。日なたは暑くても日陰に入ると案外涼しいため、避暑のつもりで行ってみるのも良いでしょう。山岳地域では高山植物のお花畑が広がる季節でもあります。
チングルマの広がりを超広角域で描きました。「梅雨明け十日」にあたる期間では比較的カラッとした気候で抜けるような青空の日が多い印象です。山岳風景などを撮影するのにも向いています。強い日差しの反射を抑え、色鮮やかに描くことが出来るPLフィルターは必須。PLフィルターの使い方に関しては過去の記事で詳しく触れていますので以下を参考にしてくださいね。
※「梅雨明け十日」とは梅雨が明けた直後、安定した天気が10日ほど続くことを指します。あくまでも目安で年によって必ずしもそのような天候にならないこともあります。
残雪のかたまりが氷山のようにも見えます。風が穏やかだったので映り込みと上下対称の構成としました。WBを下げて青味の色調で撮影。雪の冷たさを強調しました。海抜2000mを超えるようなところでは真夏でも雪が残っています。
朝から晴天でも高地では午後になって霧が発生することが多いです。霧を生かしてふんわりと描きました。
水辺
水に近いところは日中でも清涼感たっぷりです。少しくらい水しぶきがかかってもすぐ乾きますので、カメラの水濡れ対策をした上でダイナミックに迫ってみるのも良いでしょう。
水流を描くにはシャッタースピードが重要。水量に合わせてシャッタースピードを調整しましょう。
極力滝に近づくことで降り注ぐ水しぶきをダイナミックに捉えました。カメラやレンズはもちろん自分もしぶきを浴びるのでレインウェアを着用、カメラには厚手のタオルを巻きつけています。またレンズ前にも水滴がつくので撮影するごとにブロアーで吹き飛ばしています。撥水タイプのフィルターを装着しておくと便利です。
その他、夏の季節感を撮る
ここからは夏に撮影した、その他の写真を例に解説します。ぜひ参考にしてくださいね。
夏の花の代名詞とも言えるひまわりには太陽と青空が似合います。絞った時に出来る光条と組み合わせてギラギラとした日差しを表現しました。逆光で花芯が暗くなってしまうのでDレンジオプティマイザーを使っています。
※Dレンジオプティマイザー
ハイライトに対して落ち込みがちなシャドウ部分をカメラ内で明るくしてくれる機能。各メーカーのカメラにも呼び名は異なりますが、同じような機能が搭載されています。
ひとつ上の写真とは違う雰囲気に。こちらは日陰のひまわりを狙って涼しげな色調でまとめました。背景は日なたです。明暗の強弱がつく所を探せば同じ花でも様々な表現が楽しめます。
水辺に咲くスイレンは見た目にも涼しげな盛夏の花。午後になると閉じてくるので午前中の撮影がおすすめです。カメラ位置を低く構えることで映り込みと背景のボケを強調しました。CPLフィルターを回して映り込みの濃さを調整しています。
ハスが密集する様子を超望遠レンズの圧縮効果で表現しました。主題の花の背景に同系色の花が重ならないようカメラ位置を探りましょう。
主題のハスに背景の入道雲を組み合わせることでより季節感を伝えました。この写真は午後からの撮影ですが、ハスの花は昼以降になると閉じてきます。開いている状態を撮るには時は早朝~10時ごろまでに行きましょう。
ハスのつぼみをあえて影で描いてみました。いろいろな撮り方ができるのがハスの面白さです。目線を変えて探してみるといろいろな撮り方が見つかります。
水をはじくハスの葉の上は、雨上がりに面白い模様や美しい水滴が見られるのでおすすめです。
まとめ
今回は夏の撮影についてお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?夏期は春や秋と比べると撮影回数が減ってしまうのは仕方がないところなのですが、記事を参考にして撮影に出かけていただけると嬉しく思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師