風景写真の引き出しを増やす!|その4:構図 編

高橋良典
風景写真の引き出しを増やす!|その4:構図 編

はじめに

連載でお送りしている「風景写真の引き出しを増やす!」第4回目は「構図」編です。私たちが肉眼でものを見る時、それらは立体的に見えていますよね。一方、写真を見る時はどうでしょうか?プリントでもパソコンやスマートフォンの画面でも平面を見ているにすぎませんよね?そういう意味では写真や映像は立体や空間を平面に置き換えて表現をしているということになるわけです。そこで今回は平面での構成において重要な役割を果たす「構図」についてお伝えしてまいります。

構図の考え方

早速ですが、目の前の風景に感動して撮影したのに後から写真を見返してみると今一つ・・・という経験をしたことはありませんか?少なからず「ある」とお答えになる方がおられるでしょう。肉眼で風景を眺める時は漠然と広い範囲を見渡すことが多いのですが、それと同じように写真を構成するとただ単に広いだけでポイントの無い写真になってしまいがち。画面構成においてどう表現したいかということを考えながらフレーミングすることが必要です。

と言われても特に初心者の方はどうすればよいのか困ってしまいますよね。でも大丈夫!代表的な構図を頭に入れ、普段から意識するようにすればぐっと構成力が上がります。ここからはそれら「よく使う構図」を紹介していきましょう。

構図の種類

三分割構図

最もよく聞くのがこの構図と言っても良いでしょう。画面を縦横共に三分割にして、そのライン上にポイントを置くと構図のバランスが取りやすくなります。色々な構図がありますが、初心者の方は、まずこの構図を頭に入れて実践するのが良いでしょう。以下の4枚は赤いラインを意識してポイントを配置したものです。

空を少な目に雲海の広がりを主役に構成しました。見せたい部分を多く画面に取り入れるという意味でも
三分割構図は理にかなっていると言えます。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE16-35mm F4 ZA OSS
■撮影環境:焦点距離 26mm 絞り優先AE(F9.5、1/200秒、+0.5V補正) ISO400 太陽光
※参考 空と雲海を半分ずつで構成すると雲海の広さが感じられず中途半端な印象になってしまいます。
蜘蛛の巣に引っかかった枯れ葉を左1/3に配置。画面右のぼかした木へ視線を誘導しています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE50mm F1.8
■撮影環境:焦点距離 50mm 絞り優先AE(F2、1/2000秒、+2EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
三分割構図を意識すると風景をバランスよく構成しやすく、隙のない画面構成が可能です。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 192mm 絞り優先AE(F13、1.5秒、-1EV補正) ISO100 太陽光 CPLフィルター
鹿を右1/3、背景の木を左1/3になるようにフレーミングしました。鹿が動けば木との間隔が変わってしまうので自分も動きながらその距離感を調整しています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 111mm 絞り優先AE(F4、1/350秒、-1EV補正) ISO1600 太陽光 CPLフィルター

二分割構図

画面を二つに分ける二分割構図は主役がどちらなのかが伝わりにくくなる傾向があり、マイナスに働くこともあります。(前述の三分割構図での「雲海」の写真のように)しかし画面を半分ずつ構成するのがダメなわけではありません。むしろ水面の映り込みなどでは、シンメトリーがより強調されますし、主役を強調したい時など、画面の中心線付近に主役を配置するとより強い印象で描く事が出来ます。

新緑が芽吹き始めた頃の爽やかな風景。凪の水面に鏡のように映る様子を上下シンメトリーでまとめています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 26mm 絞り優先AE(F11、1/8秒) ISO100 太陽光 CPLフィルター
落葉の帯を画面の中心に構成。画面の中央線付近に主役がある時にも使えます。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 200mm 絞り優先AE(F11、1/15秒、-2EV補正) ISO800 太陽光 CPLフィルター

日の丸構図

この記事をお読みの皆さんの中に「日の丸構図は良くない」と思っている方がいらっしゃるのではないでしょうか?でもそんなことはありません。確かに日の丸構図は画面構成が単調になりがちで奥行感にやや乏しい構図だとも言えますが、被写体によって上手く使えば、そのシンプルさゆえに主役がストレートに目に飛び込んでくる作品となります。

ただ眺めているだけでも、強い存在感を放つ奈良県宇陀市の又兵衛桜。その様子が伝わるよう日の丸構図で大きめに捉えています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 101mm 絞り優先AE(F4.5、1/350秒、-0.5EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
奥行感が出しにくい日の丸構図ですが、空間の広さが感じられるように木を小さめに扱いました。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:焦点距離 232mm 絞り優先AE(F5.6、1/500秒) ISO400 太陽光 CPLフィルター

三角構図

画面の中に三角形を描く事で奥行感を感じさせることが出来ます。地形や被写体の形が三角形になっている所を探すのはもちろん、広角レンズの上すぼまりや下すぼまりの特性を生かして三角形を作り出しても良いでしょう。

川の流れの三角形が奥行き感を作り出します
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 166mm 絞り優先AE(F11、1.5秒、-1EV補正) ISO100 太陽光 CPLフィルター、ND8フィルター
三角形で構成できそうな木の根っこを探し撮影しています。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 24mm 絞り優先AE(F13、1/10秒、-1EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
超広角レンズでローアングルから上を仰ぎ見て撮影。広角特有の上すぼまり効果によって三角構図で構成することが出来ました。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 16mm 絞り優先AE(F13、1/60秒、+1EV補正) ISO800 太陽光 CPLフィルター
こちらは上の写真と逆パターン、超広角レンズで見下ろすことで逆三角形を構成しています。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE16-24mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 17mm 絞り優先AE(F11、1/200秒、+0.5EV補正) ISO800 太陽光 CPLフィルター

対角線構図

被写体を対角線に沿わせるように配置する構図は無駄のない画面構成や奥行感の演出(視線誘導)にも有効で前後対比の構図としても使えます。対角線とは言いますが厳密に対角である必要はなく概ねで構いません。

実際の桜の枝はもう少し真っすぐなのですが、対角線に合わせてカメラの傾きを調整しています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 200mm 絞り優先AE(F8、1/200秒) ISO100 太陽光 CPLフィルター
倒木の大きさを対角線構図で表現しました。広角系のレンズを使うとより遠近感が強調されます。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 29mm 絞り優先AE(F16、2秒、-0.5EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
対角線を境に前景と後景を対比させ、風景の奥行感を描いています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 20mm 絞り優先AE(F13、1/30秒) ISO100 太陽光 CPLフィルター

S字構図

曲線を画面に取り入れると奥行感の表現が出来るのですが、地形や物の形がS字状や曲線状になっている必要があり、被写体に依存すると言えます。

道がS字状になっている箇所を探して撮影。奥まで道が続いていく様子を印象付けています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 59mm 絞り優先AE(F8、0”5秒、-1EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
探してみると川の流れもS字状の曲線になっている所が多いです。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 59mm マニュアル露出(F16、1秒) ISO160 太陽光 CPLフィルター
曲線で構成されている棚田は遠近感が出しやすく構成しやすい被写体だと言えますね。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 55mm 絞り優先AE(F16、1/20秒、-0.5EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター

放射状構図

画面内の1点から線が放射状に出ている。もしくは1点に集まっていくように見える構成です。

林や森の中に入って真上を見上げてみましょう。広角レンズや超広角レンズを使ってなるべく低い位置から狙うことでより木の高さが強調されます。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 16mm 絞り優先AE(F9.5、1/6秒、+2EV補正) ISO800 太陽光
森の中に現れた光芒。美しい放射状の形を描いてくれました。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 44mm 絞り優先AE(F9.5、1/15秒、-0.5EV補正) ISO100 太陽光 CPLフィルター
シダの葉はその形自体が放射状になっており、造形的に撮影しやすいと感じます。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 16mm 絞り優先AE(F11、1/20秒、-1EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター

トンネル構図・額縁構図

トンネル構図というくらいですから周りが暗く、向こう側の明るい所に主役を探しましょう。その明暗差が画面に奥行きを生み出してくれます。そのような場所を見つけられるかどうかがカギですが、そう頻繁にあるものでもなく、根気強く探すことが必要です。

薄暗い木立から桜を覗き見る印象でまとめました。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE55mm F1.8 ZA
■撮影環境:焦点距離 55mm 絞り優先AE(F2、1/45秒) ISO400 太陽光 CPLフィルター
こちらも薄暗い所から狙っています。トンネル部分の暗部がツツジの赤色を引き立てています。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 121mm 絞り優先AE(F4、1/1000秒、-2EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター

パターン構図

自然界には規則正しく模様が並んでいるような被写体があります。結構色々なところに有りますので見つけてみて下さいね。そのリズム感を損なわないよう画面の四隅まで気を配ることがポイントです。

広大な干潟の一部、その美しいパターンを切り取りました。模様がハッキリとするよう陰影の付く逆光で撮影しています。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE24-70mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:焦点距離 70mm 絞り優先AE(F16、1/1000秒、-1EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
秋に刈り取られなかった稲穂にびっしりと霜が降り真っ白になっていました。その模様をハイアングルから俯瞰気味に狙いました。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE20mm F1.8 G
■撮影環境:焦点距離 20mm 絞り優先AE(F8、1/30秒、+1.5EV補正) ISO800 太陽光
竹林はパターン構図でまとめやすい被写体のひとつ。降りしきる雪をパターンに加えました。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 105mm(APS-Cモード、フルサイズ換算157mm) 絞り優先AE(F4、1/125秒、+1EV補正) ISO400 太陽光

まとめ

ここまで代表的な構図を紹介してきましたが、もちろん上記に当てはまらない構図もたくさんありますし、定番をベースにアレンジしたり、いくつかを組み合わせたりと行きつくところ構図に関しての発想は無限で決まりがありません。

定番構図は上手く画面構成する上で大きな手掛かりとなるものですし、まとめるのが上手くいかないと悩んでいる人にとって大いに参考になるものですので頭に入れておくと良いのですが、そればかりだと個性がなくなってしまいます。ですので、自分の中に「こう撮りたい!」と明確なアイデアが浮かんでいる場合は、定番の構図に当てはまらなくても全く構いません。

それらにとらわれることなく是非、自由な発想でも撮影をしてみて下さい。そうすれば思わぬ自分のセンスに気付くことが出来るかもしれません。その上でもし余裕があれば定番構図でも押さえると良いでしょう。最後に構図について一言でまとめると・・・

「定番構図は重要。しかし自分の意思が最優先!」

の気持ちで作品作りに取り組んでくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。

実際の撮影シーンでは複数の構図を組み合わせることも多く、この写真では「日の丸構図」「三角構図」「パターン構図」が組み合わさっていると言えます。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 19mm 絞り優先AE(F13、1/160秒、-0.3EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター
高台から見下ろした高度感を得るため、一般的な三分割構図よりも空を狭めにして、地上風景を広めに描きました。
■撮影機材:ソニーα7R III + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 20mm 絞り優先AE(F16、1/45秒、-0.5EV補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター

【終了】寸評のご応募について

今回の「風景写真の引き出しを増やす!|その4:構図 編」で紹介している構図で撮影した風景写真をテーマに、これはうまく行った、逆にうまく行かなかったと感じる写真がありましたら是非その時の状況と合わせて編集部に投稿してみませんか。ご投稿頂いた写真の中からいくつかの写真に対して高橋良典さんが寸評を行い、次回の記事で掲載する事を予定しています。皆さまの風景写真の学びの機会にご活用頂ければと思います。

・お一人さま1点までのご投稿でお願いします。
・応募締め切りは2023年2月8日(水)迄となります。
・過去に撮影した写真でも応募できます
・応募ページにある規約をご確認の上、ご応募をお願いします。

応募ページはこちら
https://pro.form-mailer.jp/fms/cb867ae4273438

 

 

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