ソニー RX1RII レビュー|小さな巨人-フルサイズを凌駕するフルサイズ

新納翔
ソニー RX1RII レビュー|小さな巨人-フルサイズを凌駕するフルサイズ

最高峰コンデジ DSC-RX1RM2

ヤンバル残る瀬底島
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F9 1/640秒 ISO100

普段は中判デジタルをメインに作品制作をしているが、RX1RM2が生み出すデータは引けを取らないほど優秀だと常に持ち歩いている。今回は沖縄の北部に位置する瀬底島に一週間ほど行く機会があったのでじっくり使ってきた。

結構ラフな使い方をしたので念のためにRX1RM2をサービスセンターに持ち込んだ。担当してくださったSONYの方も愛用者とのことで話しが弾んでしまった。

所有しているカメラのくせにまだ現行機種だとは知らなかった。2016年発売からするとかなりのロングモデルだ。気になっている方は多いこのカメラ、ネックは正直言って価格だろう。レンズ交換もできない、同じ金額で新しいカメラが買えてしまう……しかしここまで尖ったカメラはその真価を知れば比較するものではないと分かるはずだ。

中判使いも惚れ込む画質

一体何がそこまでいいのか?
結論から言ってしまえばまさにその「画質」に尽きる。

現在筆者はSONYのミラーレス一眼を2台使っているが、それとは異なる繊細な画質。もちろん装着レンズによるところが大きいが、筆者が惚れ込んでいるFE 35mm F1.4 GMと比較しても別物。それがこんな小さなボディから出てくるとは、まさしく化け物である。

沖縄北部に位置する瀬底島。やんばる(山原)が手つかずのまま残り、沖縄の原風景が広がる場所だ。名護市からさらに車で30分、瀬底大橋を渡るとその楽園に着く。

瀬底島の海は沖縄本土とも異なる独特の色
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO100

ガンガン彩度あげてるでしょ!?と言わんばかしのエメラルド色の海。安心してください、上げてませんから!現像設定もノーマル。水面ギリギリまでカメラを下げようとしたら、あまりの透明度でどこからが水なのか分からないほどだった。

■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F7.1 1/400秒 ISO100
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F5 1/500秒 ISO100

円形絞りを採用した9枚羽根のおかげで絞ればシャープ、f5でもこのように滑らかなボケ味。スナップからポートレートまで守備範囲は広い。それとこれは筆者の感覚だが、RX1RM2のRAWデータは「極上の素材を用意しました、後はご自由にお使いくださいませ」、という感じで余計な味付けがないので編集の自由度がとても高い。jpegの質も悪くないが、せっかくなら14bitのRAWでじっくり仕上げたいところだ。

高画質の秘密

本当にどの家にもシーサーがいるんですね
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F2.5 1/800秒 ISO200

開放から半段絞っただけで周辺部まで解像感が凄い。フィルムと違い、高画質を実現するためには受光部であるセンサーにレンズから入って来た光がセンサーに対して垂直に届くことが求められる。まさにレンズ一体型ならではの恩恵だ。

アンチ浜ビーチへの道
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F10 1/640秒 ISO100

特筆すべきは広いダイナミックレンジ。ガードレールの白も飛ばず全体の描写も申し分ない。4240万画素のおかげで大伸ばしも安心である。ただ背面液晶は時代のせいか太陽の下では確認しづらいのが難点である。まぁヒストグラムで確認するようにするしかない。

■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO100

RX1RM2の場合、レンズユニットとセンサーが最適化されているだけでなく、一台一台細かく微調整されている為にレンズ交換式カメラよりもポテンシャルをいかんなく発揮できているわけだ。

さらに驚きなのは、レンズ後部とセンサーまでの距離が超極薄なこと。これによりフルサイズながらコンパクトなボディを実現していると同時に、画面全域において高クオリティな画質を得ることに成功している。

カメラはAFの速さ・描写力なども重要だが、一番なのはその瞬間にカメラを手にしていることである。RX1RM2はまさに小さな巨人なのだ。

撮影の幅を広げるマクロモード

最短撮影距離は通常では0.3mだが、レンズ鏡筒部分のマクロ切り換えリングを回すことで0.2mとかなり寄れるようになる。絞り環といいアナログギミックが随所に取り入れられていて、撮影する楽しみを感じさせてくれるカメラでもある。

■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F4.5 1/200秒 ISO160
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F5 1/3200秒 ISO100

このマクロ時のボケが特に良いのだ。とろけるようで、被写体を浮かび上がらせてくれる。RX1RM2をうまく使えば数台のカメラで撮ったのではという表現の幅がある。

細かく設定できるので、ISOオートにしてがしがしスナップするのがオススメだ。自分の心が動いた時にシャッターを押す、そんな使い方ができるカメラである。

そして時にじっくりと人物を撮る。その時RX1RM2から搭載されたEVFが役に立つ。約236万ドットというと最新機種に比べれば数値的に劣るものの、サイズのせいかほとんど粗さは気にならない。今でも十分に使っていける性能である。眼鏡をしている筆者でも見やすいと感じるクオリティである。

AFが優秀なので光学ファインダーをつけてスナップというもアリだ。

唯一の欠点

■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F9 1/400秒 ISO100

デジカメの進化は日進月歩、現行品とはいえ7年前のカメラが実際どうなのか、ここからはちょっとネガティブな面を見ていこう。まずはバッテリー問題、これは正直かなり深刻である。

メーカーの公称では約220枚撮影できるとなっているが、新品のバッテリーで150枚が現実的なところだと思う。劣化具合や使い方次第なのでなんともいえないが、発売当初からバッテリーの持ちについては色々言われていたように記憶している。

筆者は街歩きでも最低3本は持ち歩くようにしている。スローな使い方をしているのでバッテリー以外に気になる点はないが、一般に指摘されていることについて記しておく。

・手ブレ補正がない
レンズシャッター方式なので元々手ブレには強いからそこまで気にする必要はないかと思う。

・高感度ノイズ
2023年現時点で見ると高感度ノイズはやや目立つところ。しかしこれは現像ソフトなどでカバーできる問題。特にAIが入った現像ソフトが今後増えていくだろうから十分対処できると考えている。

後継機が出るのかは分からないが、筆者としては再生画像の拡大にもたつくので内部CPUの強化、USB Type-Cケーブルと高速カードに対応してくれれば特にこれで良いとさえ思っている。

孤高の存在

瀬底島で宿泊していた現地では昔ながらの平屋
■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F9 1/250秒 ISO100

レンズ一体型のフルサイズコンパクトといえば他にLeica Qシリーズがある。とはいえLeica Qシリーズに搭載されているのは28mmのズミルックス。28mmと35mmは似て非なるものである。その僅かな焦点距離の差に撮影者の意思が現れる。

RX1RM2のZEISSゾナー35mmは日常を切り撮るのにもってこいだ。フィルム時代にコニカヘキサーを愛用していた身としては、とても似た感覚を受ける。

■撮影機材:SONY RX1RII
■撮影環境:F4 1/250秒 ISO200

ラインナップが豊富なSONYの中でもここまで尖ったカメラは他にない。

公式のキャッチコピーが「感性を揺さぶる、孤高の描写力」とあるが、あらゆる意味で孤高の存在なのだ。

 

 

■新納翔ポッドキャスト番組のお知らせ

先日より「トーキョー フォットキャスト」と題してポッドキャスト番組を始めました。カメラ話から作品の裏話まで、写真やアートにまつわる様々な話をしております。音声番組なのでお気軽にラジオ感覚で聞いていただければと思います。

 

■写真家:新納翔
1982年横浜生まれ。麻布学園卒業、早稲田大学理工学部中退。2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。2007年から6年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながら取材をし、その成果として日本で初めてクラウドファウンディングにて写真集を上梓する。2009年から2年間中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」でメンバーとして活動。以後、現在まで消えゆく都市をテーマに東京を拠点として活動をしている。日本写真協会(PSJ)会員。

 

 

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