ソニー FE 20mm F1.8 G レビュー|写真も動画も撮れる小さな巨人!Vlog最高レンズ
大口径の広角単焦点レンズが発売!
2020年3月13日にソニーからEマウント用の単焦点レンズFE 20mm F1.8 Gが発売されました。
製品名の最初にFEとある通り、α9 IIやα7R IV、α7 IIIといったフルサイズEマウント対応のレンズで、高い描写力や光学性能を持つ「Gレンズ」の称号が与えられています。
ソニー純正の広角単焦点レンズでは、本レンズと同様にコンパクトで高い描写性能を持つG MasterレンズのFE 24mm F1.4 GMや、コンパクトな設計ながらも2種類のコンバーターレンズが装着可能でカスタマイズ性が高いFE 28mm F2があります。
FE 28mm F2に「FEウルトラワイドコンバーター(SEL075UWC)」を装着すると、21mm(開放F値は2.8)相当となり、魚眼を除く純正の単焦点レンズとしては最広角でした。しかし本レンズはそれをも抜き、最広角の広角単焦点レンズとなりました。
20mmで開放F値が1.8というスペックを聞くと、まず星空撮影での使用をイメージする方が多いのではないでしょうか。もちろん広角の焦点距離を活かした風景撮影でも大活躍することが期待できます。
動画撮影においては自撮りをしても広角で撮れることや、軽量であらゆる撮影機材とも相性が良いことから、ビデオブロガーやYouTuberからも注目されているレンズです。
軽量コンパクトなボディ
初めて本レンズを手に取った時に感じたのは、「小さく軽い」ということです。
20mmの広角であることに加えて開放F値が1.8、さらに高い描写性能を求めて、特殊ガラスも使用されているGレンズでありながらもこのサイズ感は驚きです。
私の感覚ですが、これまで持ったことのあるソニーレンズでは、同じ広角単焦点レンズのFE 24mm F1.4 GMや、プロカメラマンの坂井田さんの「ペットの猫を素敵に撮る方法」で、無印ながらも高い評価を得たFE 35mm F1.8。ズームレンズではα7 IIIのキットレンズであるFE 28-70mm F3.5-5.6 OSSが近いように感じました。
公式の商品ページを見ると、レンズの重量は約373g。α7 IIIボディと合わせても約1kg弱、α6600と組み合わせでは約800gと非常に軽量なことが分かります。
ボディとの組み合わせで軽いと、持ち運びが楽になるので嬉しいことはもちろんですが、風景撮影や星空の撮影時に三脚や赤道儀を使用することも考えると嬉しいですよね。
耐荷重をオーバーすると転倒しまうことや、長時間撮影している時にブレてしまうことが考えられます。
特に星空の撮影では、星空写真家の成澤さんが書かれた記事でもお伝えした通り、三脚の上にポータブル赤道儀とカメラを載せるため、より耐荷重に注意する必要があります。
しかしこれだけ軽ければ、安心して撮影に臨めますね!
フィルターが使用できる
本レンズは開放F値が1.8と明るい広角レンズでありながらも、レンズ前面にねじ込み式のフィルターが使用できます。
風景の撮影ではNDフィルターやPLフィルター、星の撮影ではソフトフィルターを使用することが多いと思います。
広角レンズの中には、レンズの前面が出ている“出目金レンズ”で、ねじ込み式フィルターが使えないことがあります。ねじ込み式フィルターは簡単に取り付けられるので、使えるだけでも嬉しいです。
フィルター径は67mmでソニー純正レンズではE 16-55mm F2.8 Gや、FE 85mm F1.8、別メーカーのレンズではタムロンの28-75mm F/2.8 Di III RXDなどと同じで、多くのレンズとフィルターを共用できます。
高い描写性能
ソニー純正のEマウント用レンズは大きく4種類に分けられており、どのレンズもいずれかのカテゴリーに属しています。
本レンズは玉ボケや、背景ボケを美しくする円形絞りを採用していることはもちろん、あらゆる収差を抑制する高度非球面AAレンズを使用するなど、高い光学設計で作られた「Gレンズ」に属しています。
Gレンズの他にはソニートップクラスの光学性能で作られたG Masterレンズや、ドイツの名門カールツァイスと共同開発したツァイスレンズ、どこにも属していない無印のレンズがあります。
高い光学設計のGレンズ
本レンズは高度非球面AAレンズ(以下、AAレンズ)が2枚採用されています。
非球面レンズなので収差を抑えるのはもちろんですが、AAレンズを2枚採用したことで、より効率よく収差を抑えることが出来ます。
それだけでなく、レンズ前群に大口径のAAレンズを採用することで、開放F1.8の大口径でありながらも小さくコンパクトなサイズに仕上がりました。
広角レンズで起こりやすい湾曲収差。ボディの歪み補正機能も相まって、歪みが非常に少ないです。
周辺部まで解像感が高いため、広い景色も気持ちよく切り抜けました。建物も撮影しやすいです。
玉ボケの内側が玉ねぎの断面図のように見える球面収差。非球面レンズを採用した時に起こることが多い収差ですが、本レンズはよく抑えられています。
外側に行くにつれてレモン型になる口径食も比較的少ないです。円形絞りなだけあって玉ボケは美しい円形で、外側にかけても綺麗な円形を維持しています。
点光源の一部で、鳥が翼を広げたように写ることが代表的なコマ収差。星の撮影をされる方にとって気になると思います。
写真はメーカー公式ページにも掲載されている作例ですが、周辺部まで収差がよく抑えられていることが分かります。
ボケ味も期待できる
広角レンズで風景や星を撮られる方だとあまり意識しないかもしれませんが、20mmとはいえ開放F値が1.8と聞くと、ボケ味がどのようなものか気になるところです。
ボディはフルサイズミラーレスカメラのα7 IIIを使用して撮影しましたが、被写体と背景の距離次第では大きなボケ量のある写真も撮影できます。
AFを使用した撮影では最短0.19mまで寄れるので、ボケを作りやすいのですが、被写体もかなり大きく写るので注意が必要です。
本レンズは絞り開放・F8に絞った撮影でも、逆光のシーンにおけるゴーストやフレアの発生は少ないと感じました。太陽を構図に入れて撮影する時や、スナップ・ポートレートの撮影をする方にとっては嬉しいですよね。
それにしても開放からピント面がキレッキレで、つぼみや葉の部分を見ると細かな毛もしっかり解像していることが分かります。恐るべし。
動画撮影にも使いやすい!
スマートフォンやタブレットで、いつでもどこでも見られるYouTubeやVlog(ビデオブログの略)が非常に人気で、動画が身近な存在になったと感じます。
最近では旅行の思い出の記録を写真だけでなく、動画で撮る方も多いと思います。
編集ソフトの敷居が下がったこともありますが、高画質な映像が簡単に撮れるようになったことが大きな理由でしょう。
本レンズは室内でも広く撮影できることや、光量が足りなくてもF値で補えることから、ビデオブロガーやYouTuberからも高い評価を受けており、注目されています。
手持ちで撮影する場合、動画は写真以上にカメラを構える時間が長く、ブレもより鮮明に分かってしまいます。そのため少しでも軽い方が楽ですよね。
ジンバルやワイヤレスリモートコマンダー機能付きのシューティンググリップ(GP-VPT2BT)などは、耐荷重もあるため、重量は気になるところです。
いずれにしても本レンズは軽いため、どちらの撮影スタイルでも疲れにくく、楽に撮影できることでしょう。
本レンズはGMasterレンズや、ツァイスレンズの多くに採用されている絞りリングを搭載しています。
本体右側には絞りリングのクリック感をオンとオフに切り替える、絞りリングクリック切り換えスイッチがあります。
クリック感をオフにすることで、動画撮影中に絞りを変更しても操作音が入りにくくなり、明るさの調節もよりしやすくなります。
絞りはF1.8からF22まで設定することができ、22の次にあるAに設定することで、ボディ側のダイヤルで絞り値を変更できます。
クリックオフの場合でもF22からAへの切り替えはクリックがあるため、誤ってAに切り替えてしまうミスも減らせられるでしょう。
YouTubeやVlogでは、カメラマンを用意せずにセルフィーで撮影することも多くあるでしょう。
セルフィーで撮影する場合、焦点距離が長くなると顔だけしか映らないこともあり、画が変わらない動画になってしまいがちです。YouTubeの場合では、カメラに遠いとモニターの確認がしにくいことや、電源・設定の変更などもしにくくなります。
焦点距離20mmの広角であれば、セルフィーで撮影しても自身の上半身と背景を入れやすいため、Vlogの撮影も動きのある描写になります。
AFも非常に速く、正確なので、モニターで確認することも撮影時間やバッテリーなどAF以外の部分を見れば良くなり、撮影への集中もしやすいかと思います。
また、動画撮影用のカメラとして、180度チルト可動式モニターを採用したAPS-Cセンサー搭載のα6400や、α6600を使われる方も多いと思います。
APS-Cセンサーのカメラで使用する場合、画角は35mmフルサイズ換算で約30mmになり、室内でも屋外でも扱いやすい画角のため、あらゆるシーンの撮影にも対応できます。
撮影後記
ミラーレスカメラは一眼レフカメラよりもフランジバックが短いため、レンズの小型化がしやすいと言われています。
特に広角側のレンズはその恩恵が非常に大きいのですが、本レンズはその言葉を体現しているような印象です。
また、小さいながらも本体に絞りリングや絞りリングクリック切り換えスイッチ、フォーカスモードスイッチや防塵防滴性能、フォーカスホールドボタンまで備えているため、いわば「小さな巨人」のようなレンズだと感じました。
スナップでは広く写るが故に周辺への意識がより必要で、ポートレートの場合は近寄りすぎないことに注意が必要かもしれません。
しかしどちらの撮影でも、“王道”と呼ばれるレンズでは撮れない描写が撮れる面白さがあります。
野鳥やスポーツ、乗り物の撮影など、超望遠レンズで撮影する被写体を除けば、 “センサーサイズ“や”何を撮るか“、”写真か動画か“は関係なく、Eマウントのカメラをお持ちの方は検討する価値のあるレンズでしょう。