スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.12|東所沢(埼玉県)
はじめに
住んでいる清瀬の隣町という事もあって、写真をはじめたころからよく休日に自転車で撮りに出かけいた場所。映画トトロの「どこから来たの?」の場面で「松郷から」というセリフがあるのだけど、今回はまさにその松郷を中心にした写真を紹介したいと思う。駅近くは農村地帯の雰囲気はなくなってしまったが、駅から10分ほど進むと映画のワンシーンのような場所も残っていて、サイクリングをしても写真を撮っても楽しい所だ。そんな東所沢で何を見つけ撮っているのか見てほしい。
畑にある小屋の屋根と高圧電線
東所沢を撮り歩くときは小川沿いを北上しながら道中にある気になったものをひたすら撮ること多い。お気に入りの被写体は沢山あるが、毎回かかざず畑の横にある小屋の屋根と高圧電線を撮っている。空が広い所では邪魔に感じる高圧電線だが、屋根の線と組み合わせることで関連付けができ、雰囲気ある写真になってくれた。風景を撮るときに邪魔だなって思うモノがあっても手前の被写体との組み合わせで絵にできることがあるので、立ち位置を引いてみるなどしてよく観察する癖をつけるとよいと思う。
東所沢駅横の植木
秋の終盤に、落ち葉は色づいてすごく良い被写体になる。この写真はただ色が綺麗で撮ってる様にみせかけて構図にもかなり気を使っている。アメリカハナミヅキの落ち葉をメインにして、上下葉っぱのおさまりのいい所に色づいたカタバミや赤い実を二か所、左下の方にカナブンの緑をワンポイントで入れている。そして、あおったように撮りたくないので55mmのレンズで真上からシャッターを切った。この場面では平面なこともありボケは必要ないのでF値は3.5、全体的に暗く見せたいので露出は-1.7のアンダーにした。
緑の柵と
柵からはみ出た花はよく見かけると思うが、この様に片側が思いっきり暗い写真は見たことがないと思う。どうやって撮っているかと言うと柵の柱部分にレンズの半分をくっつけている。徐々に横へずらしていくと右側に撮りたい花が表れてくれた。何かの動作を極端に行うことで見たことのないような絵になってくれる事が多い。一見すると関係なさそうなものにレンズを極端に近づける事で、不思議な世界観の中で被写体を写しとめる事ができる。
斜めの椅子と木
まず椅子二つがひっくり返っているのが目に入り、そして、その椅子に対して斜めの木が二本ある事に気づき、どうやって撮るのが良いか考えてみた。このような場面では普段、上下左右の角にかたちを探して入れるのだが、この場面ではその様なものが見つからなかった。それでも少しでも良くなるように左端の遠くにある鉄塔を入れ、右側は屋根の角がギリギリ収まる様にして構図を整えてみた。だれも気が付かない、見ないだろう場所にこだわりを持つようにしている。一つの写真では気が付かないかもしれないが、そんな写真でも何枚か並ぶと考えて撮っているんだって気づいてくれる人もたまにいて嬉しくなる。
日大芸術学部裏の畑の通学路
埼玉南部は駅から離れると広大な畑が広がっている場所がある。定期的に行きたくなるお気に入りの場所だ。手前に何もないのでここはシンプルに地面と空を丁度半分に切り取ってみた。丁度というのが大事な気がして定規で計ったように半分にしている。超広角でシンプルな風景を撮るときもそういったこだわりがあるとよいと思う。
車の下に見つけた小人
いろんなものを探しながら歩いていても、さすがに車の下まで見るという方はあまりいないと思う(笑)。この時は段差があるところで、しゃがまなくても普段の目線でこう見えたのだ。人の様な形っていろんなものに紛れていても、ハッと気づく事が多く、それを撮るとなんとも味のある写真になることも少なくない。街の中でなにを撮っていいのかわからないときは、人の形に見えるもの、顔に見えるものを探してみるのもいいと思う。
空と鳩
東所沢は丘の上な事もあって空が広い。そんな中、雲一つない青空に半月、よく見ると鳩の集団が飛び回っていた。一羽だけだと絵にならないが、ここまで固まって飛んでいるのは珍しかったので狙ってみた。この時気を付けたのは、集団が散らばっていないことと、月と関係のある位置で撮る事だ。斜め左下45度の位置も捨てがかったが、真下のこっちを選んでみた。シャッターを切る時のちょっとしたこだわりの積み重ねが個性をだす一歩だと思う。
自転車屋さん
綺麗に並んでいる自転車、できれば虹色の順番で並べてほしい所ではあるがぜいたくは言えない。ここで気を使っていることはお店の中を写すと無駄に情報量が増えるのであえて地面を多くした。白線L型を真ん中にすることで全体の構図を整えている。意外と地面を見落としがちになるが、ひび割れなども重要な要素になることも多いので注意深く見てみよう。
鉄くずの中の枯れ葉
川沿いにある町工場。その道沿いにある捨て場には鉄やアルミの切子を沢山見ることできるので、錆、鉄くず好きにはたまらない場所なのだ。その捨て場近くに桜の木があるので、これらの鉄くずの中に落ち葉が混ざることがある。この時は赤と緑の落ち葉が埋まっていていい絵を撮ることができた。鉄を撮るときはなるべく絞って質感を出す様にしている。この場合は接写だったがF5.6にしている。
パラソル
川沿いの休憩所に何年も前からおいてあった古びたパラソル。いつも閉じてあるのだが、開いてみたら予想を超える景色が広がった。穴も開いていて近くを泳いでいた鯉のぼりを入れてみた。いまは撤去されてしまったが撮っておいてよかった。数年後に見たときにじ~んと来ることが多い。
あとがき
駅近くは普通の郊外に見える場所だが、歩いて10分くらい進むと田園地帯になっていて空も広くなる。トトロも東所沢辺りから八国山への経路が物語の話なのでそんな風景を探しながら歩くのも楽しいと思う。今日撮った東川沿いにサクラタウンと言う埼玉の建物好きに最も注目されている施設もある。次回はそちらの写真を紹介したいと思う。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。