SONY ZV-1 II レビュー|ワイドなレンズになって使いやすさと魅力UPしたVLOGCAM!
はじめに
今回、新しくワイドなレンズを搭載したVLOGカメラ「VLOGCAM ZV-1 II」を先行してお借りできたので、早速筆者が所有している「ZV-1」とどう変わったのか、いろいろと比較しながら試してみました。「ZV-1 II」の発売に伴い「ZV-1」は終了のようで、このレンズ一体型VLOGカメラシリーズでは現状、単焦点レンズの「ZV-1F」と新しい「ZV-1 II」が現行品の扱いになっています。
今回は、「ZV-1 II」が「ZV-1」からどう進化したのかをご紹介したいと思います。
VLOGCAM ZV-1 IIの特徴
「ZV-1 II」は、今までのシリーズ同様にカメラ単体(ZV-1M2)とシューティンググリップキット(ZV-1M2G)の2種類がラインナップされています。
「ZV-1 II」の機能をフルに活用できるワイヤレスリモートコマンダー機能付シューティンググリップ(GP-VPT2BT)とバッテリーがもう一つ付いた(ZV-1M2G)キットがお得です。
実際に撮影をしていると、小型の「NP-BX1」1個では、一日の撮影は持ちませんでした。もちろんモバイルバッテリーなどで充電しながらの撮影も可能ですが、あまりスマートとは言えません。できればバッテリーの予備は欲しいところです。そういった点や小型三脚にもなり「リモートコマンダー」として使えるグリップセットは魅力的だと言えます。
「ZV-1 II」の最大の特徴は、やはり超広角18mmスタートのワイドのズームレンズ採用です。
「ZV-1」では、広角24mmスタートのズームレンズだったので、自撮り撮影などではやや不満の声が多かったと思います。そこで単焦点レンズで画角20mmのモデル「ZV-1F」が登場したりしたのですが、「ZV-1 II」はコンパクトなボディにズーム倍率約2.5倍の18-50mm(35mm換算)のワイドズームレンズを搭載し動画撮影も静止画撮影にもより使いやすいモデルとなりました。
実際に使ってみると、ワイドレンズの魅力を堪能できます。
また動画撮影モードでは、ワイドになったレンズを活かす「シネマティックVlog設定」が搭載されました。「シネマティックVlog設定」は、複雑なカメラ設定をすることなく、「LOOK」や「MOOD」の設定を掛け合わせて、映画のワンシーンのような印象的な画作りを直感的に一括設定できる機能です。
「LOOK」はコントラストや彩度などを変えたプリセット、「MOOD」は映像の色合いを強調するプリセットで、この「LOOK」と「MOOD」を組み合わせることで、表現したいイメージを作り上げます。LOOKには「CLASSIC」/「CLEAN」/「CHIC」/「FRESH」/「MONO]の5種類、MOODには「AUTO」/「GOLD」/「OCEAN」/「FOREST」の4種が用意されています。
「シネマティックVlog設定」では、映画館で目にするような横長(2.35:1)のシネマスコープサイズと、映画でよく使われるフレームレートの24fpsに自動設定されます。
シネスコープサイズの横長映像ですが、実際に記録される映像のアスペクト比は一般的な16:9サイズです。16:9サイズの画像の上下の黒帯も画像の一部として記録される仕様になっています。
下の動画は、「シネマティックVlog設定」で「CLASSIC」X「OCEAN」で撮影したものになります。簡単に映画のワンシーンの様な映像を撮影する事ができます。
超広角のレンズと簡単にクリエイティブなイメージが設定できる「シネマティックVlog設定」の組み合わせは、「ZV-1 II」最大の魅力ポイントです。
VLOGCAM ZV-1 IIとZV-1・ZV-1Fの比較
新しく発売になった「ZV-1 II」と、その他機種「ZV-1」・「ZV-1F」と機能・スペックの違いを少し確認してみました。基本的なセンサーサイズは同じなので画像数も同じ。ともにZEISSレンズを使用したモデルになりますが、「ZV-1F」は単焦点仕様です。
レンズの焦点距離や開放F値も異なってきますが、今回の「ZV-1 II」はワイド側18mmでの開放F値1.8で明るいのですが、望遠側50mmの開放F値F4になっており、「ZV-1」の望遠側開放F値F2.8よりも少し暗くなっています。
使いやすさという点では、「ZV-1」では広角側では最短撮影距離5cm程度ですが、望遠側になると30cm程度まで変化してしまうため、至近距離からのズームではピントが合わなくなる事が発生します。その点「ZV-1 II」はズームをしても最短撮影距離の変化が無いので安心して至近距離撮影でもズームを使用する事ができます。
また大きな変更ポイントとして、このシリーズ最初に登場した「ZV-1」の手ブレ補正は「光学式」の手ブレ補正でしたが、レンズがワイド化された「ZV-1F」と「ZV-1 II」の手ブレ補正は「電子式」の手ブレ補正に変更されています。
VLOGCAM ZV-1 II |
VLOGCAM ZV-1 |
VLOGCAM ZV-1F |
|
センサータイプ |
1.0型 Exmor RS CMOSセンサー |
1.0型 Exmor RS CMOSセンサー |
1.0型 Exmor RS CMOSセンサー |
有効画素数 |
約2010万画素 |
約2010万画素 |
約2010万画素 |
レンズタイプ |
ZEISSバリオ・ゾナーT* |
ZEISSバリオ・ゾナーT* |
ZEISSテッサー T* |
焦点距離 (35mm換算) |
6.9 – 17.6 mm (18-50mm) |
9.4-25.7mm (24-70mm) |
7.6mm (20mm) |
F値(開放) |
F1.8 – F4.0 |
F1.8 – F2.8 |
F2.0 |
レンズ構成 |
9群9枚 |
9群10枚 |
6群6枚 |
フィルター径 |
- |
- |
40.5 |
撮影距離(レンズ先端から) |
約5 cm – ∞ |
AF約5cm-∞(ワイド端時)、約30cm-∞(テレ端時) |
AF約5cm-∞ |
光学ズーム |
〇 |
〇 |
- |
モニター角度調節機能 |
オープン角:約176度、チルト角:約270度 |
オープン角:約176度、チルト角:約270度 |
オープン角:約176度、チルト角:約270度 |
手ブレ補正機能 |
電子式 |
光学式 |
電子式 |
フォーカスポイント |
ワイド(315点) (位相差検出方式)、 動画時: 最大273点 (位相差検出方式) |
ワイド(315点) (位相差検出方式) 425点 (コントラスト検出方式) |
ワイド(425点) コントラスト検出方式 |
瞳AF |
静止画] 人物/動物 [動画] 人物/動物 |
[静止画] 人物/動物 [動画] 人物 |
[静止画] 人物/動物 [動画] 人物 |
動画撮影モード |
XAVC S 4K: 30p100M(3,840×2,160/30p) 30p 60M(3,840×2,160/30p) 24p 100M(3,840×2,160/24p) 24p 60M(3,840×2,160/24p) XAVC S HD: 60p 50M(1,920×1,080/60p) 60p 25M(1,920×1,080/60p) 30p 50M(1,920×1,080/30p) 30p 16M(1,920×1,080/30p) 24p 50M(1,920×1,080/24p) 120p 100M(1,920×1,080/120p) 120p 60M(1,920×1,080/120p) |
XAVC S 4K: 30p100M(3,840×2,160/30p) 30p 60M(3,840×2,160/30p) 24p 100M(3,840×2,160/24p) 24p 60M(3,840×2,160/24p) XAVC S HD: 60p 50M(1,920×1,080/60p) 60p 25M(1,920×1,080/60p) 30p 50M(1,920×1,080/30p) 30p 16M(1,920×1,080/30p) 24p 50M(1,920×1,080/24p) 120p 100M(1,920×1,080/120p) 120p 60M(1,920×1,080/120p) |
XAVC S 4K: 30p100M(3,840×2,160/30p) 30p 60M(3,840×2,160/30p) 24p 100M(3,840×2,160/24p) 24p 60M(3,840×2,160/24p) XAVC S HD: 60p 50M(1,920×1,080/60p) 60p 25M(1,920×1,080/60p) 30p 50M(1,920×1,080/30p) 30p 16M(1,920×1,080/30p) 24p 50M(1,920×1,080/24p) 120p 100M(1,920×1,080/120p) 120p 60M(1,920×1,080/120p) |
入出力端子 |
USB端子TypeC 、Hi-Speed USB(USB2.0対応)、HDMIマイクロ端子、マイク端子 |
マルチ/マイクロUSB端子 、Hi-Speed USB(USB2.0対応)、HDMIマイクロ端子、マイク端子、マルチインターフェースシュー |
USB端子TypeC 、Hi-Speed USB(USB2.0対応)、HDMIマイクロ端子、マイク端子 |
外形寸法(幅×高さ×奥行) (約) |
約105.5 x 60.0 x 46.7 mm |
約105.5×60.0x43.5 mm |
約105.5×60.0x46.4 mm |
質量(CIPA準拠) |
約292g(バッテリーNP-BX1、“メモリーカード”を含む)/約266g(本体のみ) |
約294g(バッテリーNP-BX1、“メモリーカード”を含む)/約267g(本体のみ) |
約256g(バッテリーNP-BX1、“メモリーカード”を含む)/約229g(本体のみ) |
バッテリーシステム |
NP-BX1 |
NP-BX1 |
NP-BX1 |
入出端子のUSBもタイプCになり、その他機器などと共通に使いやすい仕様になっています。もちろんモバイルバッテリーなどを使用し給電しながらの撮影が可能になっています。
また、三脚ネジ穴の位置が大きく変更されました。「ZV-1」では、ワイヤレスリモートコマンダー機能付シューティンググリップ(GP-VPT2BT)を装着したままだと、バッテリー・メディア部分の蓋を塞ぐことになっていて、電池交換やメディア交換の祭にはシューティンググリップを外す必要がありました。「ZV-1 II」は、三脚ネジ穴を電池蓋から離すことによってシューティンググリップを装着したままでも、電池・メディア交換ができるようになっています。
電池・メディア交換が容易になったのですが、三脚ネジ穴がかなりボディ中心からズレているのでシューティンググリップを装着した際に、個人的には少々左右のバランス・安定性が悪く思えます。
また右利きの人がシューティンググリップを持つと、グリップの位置がカメラの左側になるので自撮りする祭にはやや中心がズレているような感覚を受けてしまいました。そういった意味では、左手で持った方がカメラの位置が自然に感じます。
カメラ上部を見てみると、ボタンの配置は変わっていませんが表記が少し変更されています。「ZV-1」では「MOOD」になっていましたが、「ZV-1 II」ではアイコン表示に変更されており、カメラモード・ビデオモード・S&Qモードのアイコン表示になっています。
また、カメラ上部のマイク部に関しては「インテリジェント3カプセルマイク」になり、オート時はカメラが人物の顔や被写体を認識して自動的に内蔵マイクの指向性を切り替えてくれ、より簡単に使いやすくなっています。
ウインドノイズを軽減するウインドスクリーンに関しては、従来の素材から再生材に置き換え、音質や風防効果などの機能性を損なうことなく、環境負荷低減を実現しています
VLOGCAM ZV-1 IIの動画性能
早速「ZV-1 II」を持ち出して撮影に出かけてみました。最初は、誰でも即クリエイター気分になれる「シネマティックVlog設定」で撮影です。いろいろな設定の組み合わせがありますが、ここはスタンダードな「CLASSIC」x「AUTO」でアジサイの風景を撮影してみました。
撮影に関しては、ワイヤレスリモートコマンダー機能付シューティンググリップ(GP-VPT2BT)を装着して手持ち撮影。手持ち撮影なので手ブレ補正は、「アクティブモード」に設定してあります。何カットか撮影したものを編集ソフトにて、つなぎ合わせた箇所には簡単なトランジションを加えています。「シネマティックVlog設定」の横長映像は、それだけでクリエイター作品のようになる不思議な感じで、魅力ある機能です。
ワイドな画角でF値も明るく寄れるレンズは、被写体に思いっきり寄って背景を大きくぼかすことができ被写体を魅力的に表現することができます。
ただ、電子手ブレ補正のアクティブモードを使用すると、ワイド側18mmの画角よりも少し狭くなってしまいます。下の画像は参考までにアクティブモードのONとOFFの状態の画角の違いを動画撮影したものから切り出したものです。
アクティブモードON・OFFで撮影した画像データから画像加工ソフトを使って撮影範囲を比較してみると、ワイド側でアクティブモードをONにした場合には、ざっくり約1.2倍程度クロップされる感じです。クロップされる程度は、画角によって手ブレ補正効果も変わると思われるので、この比較は参考程度でみてください。
約1.2倍程度のクロップなのでアクティブモードをONで撮影した場合は、実質画角20mm相当で撮影することになりますね。それでも20mm相当のワイドであれば、自撮り撮影も楽々こなせる画角です。動きながら撮影するときと、三脚などを使用して止まって撮影する時など有効的に手ブレ補正モードのON/OFFを切り替えて撮影するのがよいでしょう。
次の動画は、「シネマティックVlog設定」でスローモーション撮影をしたものになります。撮影モードの切り替えで「S&Q」モードを選択して、「記録設定」と「フレームレート」の組み合わせによって、スローモーション撮影やクイックモーション撮影が簡単に撮影できるモードになります。S&Qモードで撮影はHDサイズでの撮影になり、音声は記録されないので注意が必要です。
スローモーション撮影と「シネマティックVlog設定」の組み合わせで、映画のワンシーンのような映像を簡単に撮影できます。
ここまで「シネマティックVlog設定」で撮影したものですが、もちろん通常の4KやHDサイズでの撮影も簡単に撮影する事ができます。
この水族館で撮影した動画の最初のメリーゴーランドのシーンは、シャッター速度を1/4秒に設定して幻想的になるような感じで撮影をしています。
「ZV-1」や「ZV-1F」では「動物瞳AF」は静止画のみ対応でしたが、「ZV-1 II」から動画も動物瞳AF対応になったのも見逃せないポイントです。ワンちゃんや猫ちゃんなどのペット撮影には重宝する機能です。
実際に、動物瞳AFの動作画面をキャプチャーしてみたので参考にしてみてください。猫の瞳部分をしっかりとオートフォーカスが捉えてくれています。また画面を見て分かるように、録画中を分かりやすくするように画面のフチが赤い枠で表示する機能が追加されています。これによってきちんと録画をしているかどうか、液晶画面を離れてみていても一目で分かるようになりました。
カメラを縦位置で撮影すれば、スマホで撮影するような縦位置の動画も簡単に撮影することができます。下の動画はドルフィンショーの一部を縦位置でスローモーション撮影をしたものになります。
今回「ZV-1 II」でいろいろ動画撮影をしてみましたが、ワイドなレンズと「シネマティックVlog設定」、Q&Sモードなどの機能により、簡単にクリエイティブな映像を撮影する事ができ、改めて動画撮影の楽しさを実感する事ができました。
VLOGCAM ZV-1 IIの静止画性能
「ZV-1 II」は、コンパクトなカメラでありながら1インチセンサーと明るいレンズによる背景のボケが楽しめるカメラです。動画撮影だけでなく静止画撮影でも魅力あるカメラになっています。
望遠側50mm(35mm換算)では、開放絞りはF4となり少し物足りなさを感じますが、最短撮影距離は広角側と変わらないのでかなりアップで撮影する事ができます。広角側からズームしながら撮影構図を決める際にも、最短撮影距離が変わらないのは非常にメリットを感じます。
屋内での撮影や暗い場所での撮影などもこの「ZV-1 II」が大活躍できるシーンです。シャッター速度は、静止画モードでは1/4秒が一番遅く設定できる速度。その速度でメリーゴーランドをスロー撮影してみました。
また、水槽のクラゲなどはISO感度を上げながらの撮影ですが、絞り開放F1.8が非常に助かるようなシーンです。
まとめ
今回、短期間ではありますが「ZV-1 II」を使用してみて、ワイドレンズの魅力を改めて実感しました。明るく寄れる超広角のレンズを搭載した 「ZV-1 II」は、ジーンズのポケットにも入るコンパクトなサイズ。動画撮影だけでなく静止画撮影でも活躍できるシーンは非常に多いと思います。もちろん動画撮影においてはワイドになったレンズを活かす「シネマティックVlog設定」は、初めてVLOGを始める方でも簡単にクリエイティブなシーンを撮ることができ、映画のようなシーン満載のVLOG動画を制作することができる魅力的な機能です。
「ZV-1 II」はこれから動画を始める方で、静止画撮影もしっかり撮りたい欲張りなユーザーを満足させてくれるカメラではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師