ソニー VLOGCAM ZV-E1 レビュー|持ち歩くのが楽しい小さなモンスター ~ 山城淳一 ~
はじめに
こんにちは。acud.の山城淳一です。
SONYのVLOGCAMシリーズにフルサイズセンサー版のZV-E1が追加されました。
1.0型センサーの「ZV-1」、「ZV-1F」、「ZV-1 II」とAPS-Cセンサーの「ZV-E10」の最上位に位置する機種。
コンパクトさはそのままに、フルサイズセンサーを搭載したVLOGCAM 「ZV-E1」の気に入った点や魅力をお伝えします。
ファーストインプレッション
普段、ムービーを撮影する際のメイン機として使用しているFX3と同等のセンサーが搭載されているZV-E1は、FX3と全く同じフォーマットでの記録ができます。コンパクトな筐体ながら4K120Pのハイフレームレート撮影にも対応していて、滑らかな映像表現やスローモーションを表現することが可能です。
筐体はFX3より一回り以上小さく、重さは231グラム軽い仕様。実際に持ってみると数値以上に軽くコンパクトに感じました。FX3と比べると小さな筐体ですのでボタンの数やネジ穴の有無など劣る部分はあるのですが、その分タッチパネル上から設定できる項目が増えているなど、使いにくいという印象は特にありませんでした。
ホールド感についてはコンパクトな筐体ですので、どうしてもFX3の方が上です。ただ、撮影する際はジンバルやシューティンググリップなどを使用することも多いと思いますし、ホールド感もFX3よりは良くないというだけで、手から落としてしまいそうなグリップ感ではありません。個人的にはシューティンググリップと一緒に動きながらアクティブにスポーツ撮影をするなど、このコンパクトさを活かした撮影をしてみたいと思いました。
ZV-E1とFX3を比較
まず外観ですが、ZV-E1とFX3を並べて比べてみると大きさの違いは一目瞭然です。ZV-E1にはFX3に搭載されている冷却ファンやメカシャッターがありませんので、その分厚みが薄く、幅も小さくて、ZV-E1が一回り以上コンパクトな筐体となっています。重さも見た目の通り、ZV-E1が231グラムほど軽い仕様です。ボタンの数も小さい筐体のZV-E1のほうが少なくなっています。
FX3にはないZV-E1の特徴としては上部に本体内蔵の指向性3カプセルマイクが備わっています。[オート]、[前方]、[全方位]、[後方]を自撮りなどの撮影シーンに合わせて設定します。またマルチインターフェースシューに付属のウィンドスクリーンを取り付けることで、風の強い日でもノイズを軽減することができます。それからFX3にはないモード切り替えスイッチがあり、スチル、ムービー、スロー&クイックモーションの切り替えがスムーズにできるようになっています。
外観はVLOGCAMのZV-E1とCinema LineのFX3とラインの違うカメラということもあり、アプローチが異なっています。
センサーについては両機とも同等のものが載っているようで、有効画素数もほぼ同じで同様のフォーマットでの記録が可能です。ZV-E1は後発ということもあり、AIプロセッシングユニットが搭載されAFはFX3よりも快適に動作します。また、電子式と光学式の補正を併用するダイナミックアクティブモード、その他シネマティックモードやオートフレーミングなどの新しい機能が搭載されていて、より快適に撮影ができるようになっています。
スペック比較
ZV-E1 | FX3 | |
キタムラ価格 2023年10月18日現在の価格 |
293,292円(税込) | 494,710円 (税込) |
センサー | 35mmフルサイズ | 35mmフルサイズ |
有効画素数 | 動画: 約1010万画素、 静止画: 最大約1210万画素 |
動画: 約1030万画素、 静止画: 最大約1210万画素 |
動画 | 4k120P (約1.0倍クロップ) 4k60P (ノンクロップ) |
4k120P (約1.1倍クロップ) 4k60P (ノンクロップ) |
手ぶれ補正 | イメージセンサーシフト方式5軸補正 | イメージセンサーシフト方式5軸補正 5段 |
長時間撮影 | ― | 冷却ファン搭載 |
ISO感度 | 動画撮影時: ISO80-102400相当 (拡張:上限ISO409600相当) 静止画撮影時: ISO80-102400 (拡張: 下限ISO40、上限ISO409600) |
動画撮影時: ISO80-102400相当 (拡張:上限ISO409600相当) 静止画撮影時: ISO80-102400 (拡張: 下限ISO40、上限ISO409600) |
全画素超解像ズーム | 4K 1.5倍、HD 2倍 | 4K 1.5倍、HD 2倍 |
モニター | 7.5 cm (3.0型) 約 103万ドット |
7.5cm (3.0型) 約 144万ドット |
メカシャッター | ― | あり |
EVF | ― | ― |
AIAF | あり | ― |
手ぶれ補正 | 静止画: 入 / 切 動画: ダイナミックアクティブ / アクティブ / スタンダード / 切 |
静止画: 入 / 切 動画: アクティブ / スタンダード / 切 |
質量 | 約399 g | 約630 g |
ダイナミックアクティブ手ブレ補正
普段はFX3、FX30、α7 IV、α7R Vを使用しているのですが、搭載されている手ブレ補正はスタンダードとアクティブ手ブレ補正のみ。ZV-E1に搭載されたダイナミックアクティブモードがどのくらい補正されるのかとても興味がありました。シューティンググリップをつけての手持ち撮影でどのくらい効くのか、そしてどこまで実用的なのかを試してきました。
シューティンググリップをつけたZV-E1でバスケットボールをしている様子を手持ちで撮影。
結構激しめに動いてカメラを左右に振って撮影したのですが、思った以上にブレが抑えられていて、かなり使えるなという印象。レンズが20mmの広角ということもあり、より手ブレを感じない映像になりました。手持ち撮影でこれだけブレを抑えてくれるなら、普段から持ち歩いて日常を撮影するのに最適なVlogカメラだと思います。
※ダイナミックアクティブモードは画角が約1.4倍にクロップされます。20mmですと画角は約28mm。
シューティンググリップをつけたZV-E1で手持ち歩き撮影。こちらもブレが抑えられて安定した印象です。ゆっくりとした歩き撮影であれば、僕の場合はダイナミックアクティブ手ブレ補正で十分事足りると思いました。特にVlogなんかはジンバルに乗せずにライトに撮りたいと思っていますので、ダイナミックアクティブ手ブレ補正はとても良い機能です。
AIAF
AIプロセッシングユニットが搭載され、人の形や姿勢を高精度に認識することができるようになり、後ろ向きの状態や画面内で人が小さい場合でもAFが合うようになり、明らかにAF精度が向上しました。フォーカスはAIAFに任せて、あとは構図や撮りたいものに集中して好きなように撮影できるというのはVlogcamのコンセプトにぴったりだと思いました。それから、新しいAIAFは被写体認識が人物や動物だけでなく、鳥、昆虫、車/列車、飛行機と幅広く認識できるようになり、色々なシーンで活躍してくれそうです。
暗所性能
常用ISO感度が80-102400(静止画、動画共通)と暗所性能が非常に高く、薄暗い夕方や夜間にもノイズの少ないクリアな映像が撮影できるので、一日中どの時間帯でもストレスなく撮影ができます。ISO感度を上げてもノイズの量が少なく、F値の低いF4などのレンズで夜景撮影をしてもクリアな映像を撮影することができます。暗所性能が高いと使用できるレンズの幅も広がりますし、ノイズのせいで今までは諦めていたシチュエーションでの夜間撮影も可能になります。
シネマティックVlog設定
気になった機能、シネマティックVlog設定のご紹介です。言葉の通り映画のワンシーンのような印象的な映像を撮影できるモードです。自動でシネマスコープのアスペクト比(2.35:1)になり、上下に黒い帯がつき横長の映像になります。またこのモードにするとLookやMoodを選ぶことができ、簡単に色味の調整ができるようになっています。好みに調整して、撮って出しですぐに使えるところが便利です。
静止画
VLOGCAMということで動画がメインのカメラですが、もちろん静止画も撮影できます。出てくる画もフルサイズセンサーなので質が高いです。画素数は1210万画素で、スタンダート機と呼ばれている2000万画素クラスのカメラと比べると解像感などは少し劣りますが、その分メリットもあります。動画と同様、静止画でも暗所性能が非常に高く、常用ISO感度が80-102400(静止画、動画共通)となっています。
ISO感度25600までは本当にノイズが少ない綺麗な静止画が撮影できます。ISO感度25600以上からは少しノイズが気になり始めるという感じです。ノイズなどの感じ方は個人差があると思いますが、個人的にはスペック通り102400までは問題なく使用できそうです。
それから、画素数が1210万画素ですので静止画のサイズが小さいのでは、と気になる方がいるかもしれませんが、SNSで使用するには十分すぎるサイズ(4240×2832 px)ですし、印刷する場合でもA4サイズまでは解像度が足りています。また、A3サイズで印刷する場合でもアップスケーリングをすれば個人的には解像感等は全く気にならない実用範囲で、大きく引き伸ばさない場合は1210万画素で十分だと思います。A2以上で印刷される方はより高画素のカメラを使用することをお勧めします。
おすすめユーザー
暗所性能が高く、AIAFという優秀なオートフォーカスやダイナミックアクティブ手ブレ補正を搭載したコンパクトなZV-E1は、様々なシチュエーションでストレスなく動画も静止画も撮影したい方におすすめです。まさにVlogをやりたい方に最適な機種だと思います。また、価格も業務機であるFX3より20万円程安いので、これだけの機能を搭載したカメラとしては非常にリーズナブルです。
注意点としてはZV-E1は冷却ファンを搭載していないので、常にREC状態で長回しするような撮影スタイルのユーザーにはおすすめしません。長回しする場合は冷却ファンの搭載されたFX3をおすすめします。
※ZV-E1で長回しをする場合には低ビットレート、低フレームレート、電源off温度「高」、背面モニターを開くと撮影可能時間が伸びると思います。
まとめ
ZV-E1は本格的な動画制作にも使用でき、ライトなVlog撮影にも最適化されたなんでもできちゃう小さなモンスターでした。ここでは紹介できませんでしたが、オートフレーミングやフレーミング補正、インテリジェント3カプセルマイクなどZV-E1はコンパクトな筐体にこれでもかというくらいVlogに便利な機能が詰め込まれています。また、FX3と同じフォーマットで記録ができるなど業務機と同等の機能を受け継いでいます。
正直、めちゃくちゃ欲しくなりました。FX3を気軽に普段使いするにはやはり少し大きいので、コンパクトなZV-E1を手に入れたらどれだけ幸せになれるだろうかと……
皆さんもぜひ悩んでみてください!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
■執筆者:山城淳一
福岡県在住。デザイン事務所を運営。地域や自治体、企業の思いを形にするクリエイティブな企画を得意とする。Beginning of cultureをテーマに写真、動画、WEB、SNS、イベントを複合的に展開し、それぞれの場所で新たな要素を生み出し続けている。