ソニー VLOGCAM ZV-E10 レビュー|山本まりこ
はじめに
台風一過。
真っ青な空に、サルスベリのビビッドなピンク色の花がゆらゆらと揺れている。
夏を撮りに行こう。
9月17日発売、SONY VLOGCAM ZV-E10。
αユーザーが待ち望んだ待望のレンズ交換式、APS-Cセンサーを搭載した、Vlog撮影を主軸に置いたミラーレス一眼カメラだ。
今日はこの、小さく軽く薄いカメラが相棒。
動画「UMIMACHI ARASHI NO ATO」
仕様や機能などいろいろと紹介したいのだけれど、とりあえず、まずはこのカメラで撮影した動画を編集して1つの動画を作ったので見て欲しい。
撮影地は、私の住む海まちの駅前にある吾妻山(あづまやま)という132mほどの小さな山。
台風が去った翌日、ジリジリと照り付けるような太陽、その下で勢いよくうねる海、色濃く葉を茂らす木々、夏を待ち望んでいた花たち。30度をゆうに超える灼熱の太陽の下、弾けそうな夏を撮った。
レンズは、ZV-E10L(パワーズームレンズキット)のキットレンズE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSを使用している。
タイトルは、「UMIMACHI ARASHI NO ATO」。
全て撮り終えて、動画を家で視聴。
正直、この小さなカメラでこの映像が撮れることに驚いた。唸りながら、二度見、三度見、五度見をしてしまった。編集で大音量のセミの声を聞きつつ灼熱の中でフラフラになりながら撮影した記憶が蘇ってくる中、何度も何度も動画を見返した。
仕様と機能
VLOGCAM ZV-E10の主な仕様は下記。
□レンズ交換式ミラーレス一眼
□総画素数:約2500万画素、カメラ有効画素数約2420万画素
□撮像素子:APS-Cサイズ (23.5 x 15.6 mm)Exmor CMOSセンサー
□本体のみ質量:299g、質量:343g(バッテリーとメモリーカード含む)
□外形寸法:115.2 x 64.2 x 44.8 mm(グリップからモニターまで)
□連続撮影速度:Hi+時: 最高約11コマ/秒、Hi時: 最高約8コマ/秒、Mid時: 最高約6コマ/秒 、Lo時: 最高約3コマ/秒
□実動画撮影時:液晶モニター使用時: 約80 分 (CIPA規格準拠)、連続動画撮影時:液晶モニター使用時: 約125 分 (CIPA規格準拠)
□カメラまかせで被写体を自動で追い続ける「リアルタイムトラッキング」機能搭載、リアルタイム瞳AFにも対応
ここで、撮像素子APS-Cサイズのα6600と比べてみる。α6600は、外形寸法が約120.0(幅) x 66.9(高さ) x 69.3 (奥行き)mm、120.0x 66.9x 59.0mm(グリップからモニターまで)、質量が503g(バッテリーとメモリーカード含む)、本体のみ質量は418gである。比べると、VLOGCAM ZV-E10は、さらに小さくて軽くて薄いという事が分かるだろう。
スイッチは、スライド式。これならカバンに入れていていつの間にかスイッチが押されていた、なんてこともなくなるだろう。
Vlog撮影を主軸に置いたミラーレス一眼ということだけあって、Vlog撮影に便利ないろいろなボタンが配置されている。
撮影モードは、「静止画 / 動画 / S&Q切換ボタン」ボタンを押すことで、切り替えることが出来る。特に、ボタン一つの切り替えで、スローモーション動画を撮影出来るのはとても便利だ。
人物の後ろに山がシマシマに描かれているマークは、ワンタッチで瞬時に表現の切り換えができる「背景ぼけ切換機能」。撮影時、このボタンを押せば、背景がボケたり、くっきりしたり、瞬時に切り替えることができる。あまり写真や動画撮影に詳しくなくても、背景がトロリとボケた動画が撮影できてしまうという、初心者さんに優しい機能。
筆者的にとても良かったと思う点は、動画ボタンが大きいという事。静止画のシャッターボタンの近くに配置された動画ボタンは、今までのαに搭載されていた動画ボタンより大きく、押しやすい。
ゴミ箱マークの右上、人物の前に箱のような立方体が描かれているマークは、素早くピントの移動ができる「商品レビュー用設定」。このボタンを押すと、動画撮影時に人物の顔の前に商品を出すと商品にピントが合う。Vlogger向けの機能だ。ちなみに、今更かも知れないが「Vlog」とはVideo blog(ビデオブログ)の略で、文章で表現する一般的なブログの動画版のことを言う。
カメラボディの上の可愛らしいモフモフしたものは、ウインドスクリーンという風よけ。これを装着し「風音低減」を入にして撮影すると、かなりの割合で風音を入れず撮影することができる。装脱着できるので、風音を気にしない撮影の場合は着けなくてもOK。
強い手ブレ補正機能、そして、風の音が防げる
動画を見返してみよう。
ここで、注目して欲しいのは、山の上でコスモスを撮影したシーン。
山の上なので風が吹いているけれども、風の音は見事にカットされてセミや鳥の鳴き声や、山の下の道に車が走る音が聞こえる。装着したウインドスクリーンが効いている。ちなみに、これはカメラ内のマイクで撮影したもの。山は132mなので、道とそれだけ離れていても車が走る音を拾っている。カメラ内のマイクとしてはかなり秀逸だ。
そして、この動画は三脚は使わずに手持ちで撮影している。手ブレ補正は、「アクティブ」「スタンダード」「切」の3種で設定できる。この時は「アクティブ」に設定。手持ちでこれだけゆっくり移動させて撮影してもこの滑らかさ。
録画をストップするときにカメラが動いたのは、停止させるためにボタンを押したから。それまではかなり滑らか。
こちらは、歩きながら足元の木漏れ日を撮影した動画。
手持ちで歩きながら撮影しているのに、この滑らかさ。
手ブレ補正「アクティブ」がかなり効いている。
静止画を楽しむ
もちろん、静止画も美しく撮ることが出来る。
液晶画面の右側に配置されたFn(ファンクション)ボタンを押せば、ISO感度、ホワイトバランス、クリエイティブスタイル、フォーカスモード、フォーカスエリア、美肌効果などを切り変えることが出来る。既存のαと変わらず便利なFnボタンは、引き続き利用できるのは嬉しい。
筆者としては、正直、VLOGCAM ZV-E10では動画ばかりを撮影していて、静止画はほとんど撮影しなかった。半日撮影して、動画は203シーン、静止画は58枚撮影していた。動画撮影が便利な分動画撮影がやはり楽しく、動画ばかり撮影していた。いつもなら、同じ時間だけ撮影しているとしたら、1000を超える静止画を撮っていると思う。VLOGCAM ZV-E10は、動画メインの撮影機として保有するのもいいだろう。
おわりに
今回、VLOGCAM ZV-E10と付属のキットレンズE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSのみで撮影した。弾けそうな強い夏が撮れた。そして、すごく簡単に撮れた。機材を背負ったリュックも軽かった。レンズ交換式カメラなので、実は、撮影には他のレンズも持って行ったけれど今回は使わなかった。キットレンズでどこまで撮れるか、それを試したかったのもある。持って行った機材は、VLOGCAM ZV-E10、E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS、そして、三脚、単焦点レンズレンズとマクロレンズの2本。三脚を使ったのは、山の上から海を定点で撮影するときのみ。後は全て手持ちで撮影した。カメラが軽いので、軽い三脚を持って行った。撮れた動画を見て、正直びっくりした。この小さなカメラとレンズでここまでの動画を撮影できる時代になったのかと。
でも、いろいろ考える点もあった。
まずは、ファインダーがないこと。カメラを小さく軽くするためなのか時代なのかファインダーがないので、最後までピントが合っているか不安を持ったままの撮影。でもこれは、撮影した動画をパソコンでチェックして気持ちがスッキリと晴れた。目を見張ってしまうほどの美しい映像が撮れていた。カメラまかせで被写体を自動で追い続けるリアルタイムトラッキング機能が効いていて、激しく動く植物にも俊敏にピントが追いついていた。そして次に、バッテリーが小さい分、消耗も早いという事。今回半日の撮影で、1個と少し使った。筆者は今、α7R IVやα7Cをメイン機として撮影しているので、バッテリー交換はほぼしないで撮影出来ている。なので、消耗は早いなという印象。1日たっぷり動画を撮影したい人は、予備バッテリーを数個所持しての撮影をおススメする。
その点を踏まえたとしても、このVLOGCAM ZV-E10というカメラはとても魅力的に私に写った。小さくて軽くて写りが素晴らしく美しく、何よりフットワーク軽く撮影出来るところがかなりの魅力。すぐに欲しいと思った。動画初心者さんには、かなりのおススメカメラだと思う。
それにしても、熱い夏の日だった。帰宅後、すぐにシャワーを浴びて、しばらく動けなかった。家族からは、よくこんな日に撮影に行くものだと心配されたけれど、そんな真夏を撮影したいと思わせてくれたカメラには感謝。おかげで思い描いていた夏を撮ることが出来た。カメラというのは、時に人を奮起させてくれたり、大きな喜びを持たせてくれる。とてもありがたい存在だなあといつも思う。今度は、このカメラで、レンズをいろいろ変えた撮影にも挑戦してみたいと思う。
VLOGCAM ZV-E10は、9月17日発売。
夏から秋に変わってゆく頃。
ぜひ、あなたの目の前の季節を撮ってみて欲しい。
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。
「VLOG」や「ZV-E10」についてはこちらの記事でも紹介しています
■Vlog(ブイログ)とは何か? ~楽しみ方含めてソニーのマーケティング担当者へインタビューしてきました~
https://www.kitamura.jp/shasha/sony/483108202-20210903/
■ソニー ミラーレスカメラ VLOGCAM ZV-E10が登場!|APS-Cセンサーサイズのレンズ交換式VLOGCAM
https://www.kitamura.jp/shasha/sony/482739772-20210804/
■更新
・2021年10月4日:キャンペーン終了に伴い、内容を修正しました。