タムロン 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD レビュー|お手軽価格だけど超広角&鋭い高画質!
基本情報【外観・スペック】
TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(MODEL B060)は、2021年6月24日に発売された小型・軽量な超広角ズームレンズ。価格は希望小売価格で102,300円 (税込)。対応マウントはソニーAPS-CサイズのEマウントで、焦点距離は35mm判換算16.5~30mm相当をカバーします。ズーム全域でf2.8を実現しており、ミラーレス一眼カメラ専用設計となっています。
近年タムロンのレンズは小型軽量化に力を注いでいるように感じますが、このレンズも同じで他社から発売されている超広角ズームレンズと比較すると圧倒的に小さく軽い。その重さはなんと335g。α6600に装着した感じはとても使い勝手のよさそうな印象を受けます。
フィルター径は67mm。同社で発売されているレンズには67mm径が多いので、フィルターやレンズキャップの使い回しができるのは地味に嬉しいポイントだったりします。ズームリング・フォーカスリングの動きは適度に滑らかです。これだけ小型軽量だと写真だけでなく、動画撮影時はジンバルでの運用もしやすそうです。
そしてこのレンズ、最短撮影距離は広角端11mmで0.15m、望遠端20mmで0.24mを実現したということで、超広角レンズにも関わらずかなりの近接撮影ができる仕様のようです。
私ならこう撮る~作例の紹介~
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■撮影環境:ISO100 f22 SS1.3秒 焦点距離26mm(35mm換算)
三脚使用、Photoshop CCで画像処理
あじさいの咲く雲海スポットで撮影。広角レンズの近接撮影は通常のマクロと違い、構図内にいろいろなものを入れることができます。この構図はかなり花に近寄って撮影していますので、背景がボケすぎてしまわないようf22まで絞り込みました。回折現象よりもパンフォーカス感を求めた上での設定です。
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■撮影環境:ISO100 f22 SS2秒 焦点距離24mm(35mm換算)
三脚使用、Photoshop CCで画像処理
奥行きの表現がとても楽しいレンズだと思いました。また、この撮影では絞り込みすぎていますが、f8程度で撮影するとバッキバキにシャープに撮れます。f22まで絞り込んだときの回折現象が気にならないのは、もともとレンズのポテンシャルが良いからかもしれません。
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■撮影環境:ISO100 f6.3 SS4秒 焦点距離16.5mm(35mm換算)
三脚使用、Photoshop CCで画像処理
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■撮影環境:ISO200 f8 SS30秒 焦点距離16.5mm(35mm換算)
三脚使用、Photoshop CCで画像処理
これだけの超広角レンズなら、とにかく風景写真が楽しい。広い範囲を切り取ることで自然の雄大さというのを表現できる気がします。そしてこれだけの超広角レンズなら星空も撮ってみたいと思いますよね。星空適正を調べてみました。
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中央と端の星を200%で拡大してみました。中央はびっくりするくらい鋭い星像です。端の星も極端に肥大することなく、平坦性を保っているように見えます。若干の周辺減光が見られますが画像処理で簡単に補正できる程度で軽微なものです。これは驚きました!価格を考えると性能よすぎませんか?(笑)画像処理して仕上げてみました。
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■撮影環境:ISO12800 f2.8 SS10秒 焦点距離16.5mm(35mm換算)
三脚使用、フリーソフトSequatorで13枚を加算平均合成、Photoshop CCで画像処理
月明かりの下で撮影したので空が少し青みがかっています。手前の風景が明るいのは街灯があった影響です。画像処理時に彩度を下げています。この加算平均合成という手法は同じ構図で撮影した画像を合成してランダムノイズを軽減するというもので、周辺が肥大しているレンズで行うとさらに星が肥大してしまうため、周辺までしっかりと点で撮影できるレンズでなくては効果を発揮できません。「TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」は、こういった表現方法にも適応できる素晴らしい描写性能を備えていることがわかります。
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■撮影環境:ISO12800 f2.8 SS10秒 焦点距離16.5mm(35mm換算)
三脚使用、フリーソフトSequatorで14枚を加算平均合成、Photoshop CCで画像処理
この構図ではわかりにくいですが、かなり上にカメラを向けています。それだけ天の川の位置が高い時間帯に撮影していたということになります。通常のレンズではこういう構図を撮ると風景部分がカットされます。星空も風景も、めいっぱい写せるのは超広角レンズならでは。星景写真の場合は超広角レンズを使用することで構図の自由度が上がります。これほどの広い画角を持ったレンズは高価なものばかりですが、対してこのレンズは10万円前後。より幅広いユーザーに星空を楽しんでもらえるレンズだと感じました。
APS-C業界からみた本レンズの立ち位置
実はAPS-Cサイズのカメラでは星空撮影向きのレンズが少ないのをご存知でしょうか。ソニー、富士フイルム、ペンタックス、キヤノンでAPS-C用レンズ、しかもf2.8で焦点距離20mm以下の超広角レンズで絞ると、実は数本しかないんです。「星空撮影はフルサイズ」というイメージがあるせいか、各社フルサイズ用のレンズで星空向きのものを開発しているんですよね。
そのため、純正で該当商品があるのは富士フイルム「XF8-16mmF2.8 R LM WR」(でもとても高価)と、ペンタックス「HD PENTAX DA★11-18mm F2.8ED DC AW」くらいではないでしょうか……。APS-Cユーザーが星空撮影を楽しむには、レンズ選びというハードルがあると認識しています。
そこで登場した「TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」。うーん、ソニーユーザーは本気で羨ましいぜ。ぜひとも他のマウントでも発売して欲しいと願うばかりです。
まとめ
今夏は晴天が少なく、充分な撮影ができませんでしたが、それでもこのレンズの素晴らしさ、コスパの良さを身を持って体感することができました。ソニーAPS-Cユーザーなら1本持っていて間違いのないレンズと言えるでしょう!
私のYouTubeチャンネルでも、このレンズを紹介している動画があります。こちらもぜひご覧ください。
■写真家:成澤広幸
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター。全国各地で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで執筆を担当。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。動画撮影・編集技術を磨くべくYouTuberとしても活動している。
・著書「成澤広幸の星空撮影塾」「成澤広幸の星空撮影地105選」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「星空写真撮影ハンドブック」
・月刊「天文ガイド」にて「星空撮影QUCIKガイド」を連載中。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)正会員