タムロン 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD Xマウント|手頃な価格で高性能な超望遠ズームレンズ
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回はタムロンから2022年に発売された超望遠レンズ「150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」のXマウントをレビューします。望遠端500mmという焦点距離は以前にレビューしたXF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRとXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRのちょうど間になり、かつ価格的にも手を出しやすいレンズとあって気になっている方も多いのではないでしょうか。
本レンズの特徴
元々はフルサイズカメラ用レンズのため小型軽量とは言えませんが、XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRとほぼ同等の重さになります。ただ、レンズ収納時の全長は約20cmとXF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRよりも短い仕様になっているのでバッグへの収まりはとても良いです。
大きな特徴として最短撮影距離が60cm(150mm側)と超望遠レンズにしてはとても寄れるレンズに仕上がっています。また、好きな焦点距離でロックができるフレックスズームロック機構や、Xマウント用にだけ搭載されているMF SPEEDスイッチなど細かな部分で使い勝手が良いレンズに仕上がっています。MF SPEEDスイッチとはマニュアルフォーカス時のフォーカススピードを2段階から選べる機能です。
タムロン 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD | 富士フイルム XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR | 富士フイルム XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR | |
焦点距離(フルサイズ換算) | 225-750mm相当 | 150-600mm相当 | 225-900mm相当 |
最大径×長さ | Ø93mm×209.9mm | Ø94.8mm × 210.5mm | Ø99mm×314.5mm |
質量 | 1,710g | 1,375g | 1,605g |
最短撮影距離 | 0.6m | 1.75m | 2.4m |
開放F値 | 5-6.7 | 4.5-5.6 | 5.6-8 |
手ブレ補正 | あり | あり | あり |
フィルターサイズ | 82mm | 77mm | 82mm |
絞り羽根枚数 | 7枚 | 9枚 | 9枚 |
防塵防滴 | 簡易防滴 | あり | あり |
発売時期 | 2022年10月 | 2016年8月 | 2022年8月 |
解像度比較
前に紹介した2本のレンズとともに望遠側での撮り比べをしてみました。まずは150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXDの500mmでの撮影です。カメラはX-T4を使用し、絞りはF8固定、ISO感度は800で撮影しています。
拡大してXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRの500mm付近の撮影画像と比べてみました。望遠側に余裕のあるXF150-600mmのほうが解像度は良さそうです。
▼XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRと比較
次に同じ条件でXF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRと比べてみます。両レンズとも400mm付近で撮影しましたが今度は150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXDのほうが良い結果となりました。
▼XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRと比較
どのレンズも望遠端での解像度には少し不安が残る結果となりましたが、ピクセル等倍で見ないと分からないレベルで純正レンズに比べても十分な解像力を持っていると思います。
話は逸れますが、テスト撮影中に飛行機が飛んできたので同じく500mmで撮影してみました。素早くAFを合わせることができ、ビルの陰に隠れる前の一瞬を捉えることができました。
作例
本レンズを持って中国・九州地方を撮影して回りました。広島県三原市にある筆影山展望台では日の出の撮影にチャレンジしました。ここはしまなみ海道にかかる因島大橋が見える場所としても有名です。残念ながら日の出の瞬間は雲がかかってしまいましたが、その後に太陽が顔を出した時には辺り全体が黄金色に包まれました。
最望遠側の500mmで撮影すると、橋を行き交う車の一台一台まではっきりと確認することができます。
瀬戸内海にはたくさんの船も行き交っているので、超望遠レンズで切り取るととても迫力があります。朝日を浴びてシルエットになっている姿がカッコいいですね。
世界遺産の宮島にある厳島神社の大鳥居です。改修工事が終わって綺麗な姿を現しました(2022年12月修理工事完了)。これは宮島口から島に渡るフェリー上から500mmで撮ったものですが、手ブレ補正が良く効いているのが実感できました。ちなみに、JR西日本宮島フェリーは宮島口発9時10分から16時10分の便は大鳥居に接近する「大鳥居便」を運航しています。近づくのは島に行く時だけなのでご注意ください。
周南コンビナートに西日が当たっているところを撮影しました。現地に到着してすぐの撮影だったので、500mmを手持ちで1/160秒という普通なら手ブレしそうなシャッター速度でしたがブレなく撮影ができました。
佐賀県で毎年11月に開催される佐賀インターナショナルバルーンフェスタです。アジア最大級のスカイスポーツイベントで、今年(2024年)は10月31日(木)~11月4日(月・祝)に開催されるようです。
広角レンズで撮るイメージが強いですが、望遠の圧縮効果を活かすことで密集して飛んでいるイメージを作り出すことができます。色とりどりのバルーンが一斉離陸する様子はとてもフォトジェニックです。
望遠側で撮影するとすごい迫力です。ちなみに背景に写っているのは別のバルーンです。望遠の圧縮効果ですぐ近くのように見えますが、実際には安全な距離を保ちながら飛行しています。
こちらも毎年11月に唐津市の唐津神社で行われている「唐津くんち」です。漆に彩られた14台の曳山が囃子と掛け声に合わせて唐津市内を練り歩き、例年50万人もの人が訪れる人気の祭りです。毎年11月2日~4日に開催されています。
このレンズは収縮時の全長がとても短いので混雑した中でも取り回しが楽でした。さすがに超望遠で撮ると段違いの迫力ですね。ひとつひとつの山車がまるで生命を吹き込まれているかのように目の前に迫ってきます。特にX-H2Sとの組み合わせではAFも速く正確でした。
鏡山展望台からは唐津城と市内を一望することができます。150mm側と600mm側で撮影したので画角の違いをご確認ください。城のライトアップが緑色だったのは少し違和感がありましたが・・・
水中鳥居として有名な大魚神社から見た有明海から昇る朝日です。背後にある山の稜線から昇ってくるのですが面白い形になりました。
福岡県と佐賀県の県境にある重要文化財および機械遺産に指定されている「筑後川昇開橋」。この橋は夕暮れ時がとても美しかったです。手前の船が望遠の圧縮効果によりアクセントになりました。
帰りにカモメがたくさん防波堤に止まっていたので撮影した一枚です。遠く離れたカモメたちも正確なAFで捉えることができました。
最後に満月の日を狙って、超望遠レンズが最も活きる被写体のひとつでもある月を撮影してみました。フルサイズ換算で750mm相当です。これでも月を画面いっぱいに入れて撮るのは難しいですが、X-T5などの高画素機との組み合わせなら、月単体をトリミングしてもA4程度にプリント可能な解像度が残るのではないでしょうか。
まとめ
純正のXF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRとXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRのちょうど間に位置づけられるような焦点距離を持つ本レンズ。望遠側の画質ではXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRに軍配が上がりますが、10万円近い価格差と大きさを考えるとこのレンズの選択肢も十分に出てくると思います。
また、最短撮影距離が近いので望遠マクロ的な使い方や狙っている被写体が近づいてきた時などにも有効だと思います。これから超望遠レンズを検討されている方はぜひ選択肢のひとつとしておすすめします。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。旅好きが高じ、現在までに100を超える国と地域で350か所以上の世界遺産の撮影を行う。作品は各種雑誌やカレンダーへの掲載に加え全国各地で写真展を開催している。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer・アカデミーX講師