はじめに
発売されてからすでに2年半が経過しているタムロン 18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD(Model B061)。これまでも評価が高く、人気の高倍率ズームレンズです。
お出かけシーズンを迎える今、普段単焦点レンズばかりを使っている筆者が、高倍率ズームレンズを使うことの魅力を探ってみました。
18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDの特徴
2021年10月に発売されてから〝オールラウンダー〟として、根強い人気を誇るタムロン 18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD。焦点距離18-300mm(35mm判換算27-450mm相当)をカバーする16.6倍の高倍率ズームレンズです。AF駆動には静粛性・俊敏性にすぐれたリニアモーターフォーカス機構「VXD(Voice-coil eXtreme-torque Drive)」を搭載しています。質量は約620g、フィルター径はタムロンのミラーレス用レンズシリーズの多くと共通の67mmを採用しています。
今回撮影に使用したボディが富士フイルム X-E4で、かなりコンパクトなこともあり見た目のアンバランスな感じは否めませんが、マウント部のくびれによって携行性がよく、重たいと感じることはありませんでした。
個人的には広角側18mmでの撮影時、背面モニターやEVFの表示は補正されず樽型歪曲が見られる点が気になりましたが、F3.5あたりまで絞ることで解消します。
近接撮影性能が抜群|ハーフマクロ撮影を実現
これまでのズームレンズでは叶わなかった、広角端18mmの最短撮影距離は0.15m、最大撮影倍率1:2のハーフマクロ撮影を実現。「あれ、どこまで近づける??」と思ってしまうほどで、驚くことにフードを外せばレンズ前5mmまで寄れます。思い切り被写体に近づきながら、同時に背景も取り込むようなワイドマクロ特有の繊細な表現が得意なレンズです。広角でありながら、タムロンらしい柔らかなボケを感じられます。
普段撮らないものまで撮りたくなる|タムロン独自の手ブレ補正機構VCを実感
望遠域で発生しやすいブレを抑制したタムロン独自の手ブレ補正機構VCを採用し、オートフォーカスの性能は精度・速度ともに大幅に向上しています。微細な振動を抑え、安定した画づくりをサポートする設計により、ピント合わせがシビアになる望遠域で撮影した場合もAFは高速で、迷うことはほとんどありません。
遠景にアプローチしやすく、普段あまり目を向けることのない被写体も積極的に撮影したくなりました。薄暗い室内や夜景などの暗所では、手持ち撮影であってもその効果を発揮し、画質の低下を軽減しています。
旅に最適&快適|広角~望遠まで全域で楽しめるスナップ撮影
私自身が普段から撮影しているスナップでは、広角~望遠まで全域で撮影しやすいと感じることが多々ありました。旅行客でにぎわう浅草は細い路地も多く、撮影していると引きがとれない場所もあります。そうした時には広角端18mmが活躍して少し客観的な視野になり、距離感が保てる場所では、標準~中望遠域のスナップ撮影に最適です。どの焦点距離でも安定した解像力があり、スナップにもってこいの写りです。
レンズ交換しながら歩くことの難しい旅先では、荷物が軽減されることも大きなメリットであり、快適さにつながります。18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDの機動力を活かし、このレンズ1本で出かけることが選択肢になるはずです。
身近な光景が絵になる|公園で風景写真を堪能
ズーム全域を活かせるため、風景撮影にもふさわしいレンズです。また、三脚使用ができない場所での撮影でも、手ブレ補正が抜群に効いているので手持ち撮影も可能になります。実際に公園で撮影をしてみると、引いても、寄っても、切り取っても良し。身近な光景が画になる実感を抱きます。
望遠端300mmのボケはタムロンらしく、にじむように優しくボケるのが特徴。前ボケもベールのように透き通り、淡い印象が引き出せます。このあたりはタムロンの得意とする描写でしょう。また、フィルムシミュレーションの再現力も満足度が高く、これまでの高倍率ズームレンズのイメージを払拭してくれました。
おわりに
2本以上のレンズの焦点距離を1本にまとめた高倍率ズームレンズ、タムロン18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXD。1本で広角・望遠・マクロまで網羅し、いつ、どこででも撮りたいものが撮れる感覚です。目的をもって何かを撮影しに行くというよりも、気軽に持って出かけるだけで様々な被写体に目が向きます。撮影している中で自分に必要な焦点距離が理解できるようになり、次のレンズ選びに結びつきます。
単焦点レンズをあれこれと取り揃えるのもいいですが、この1本に任せてみるのもあり。と、率直に感じました。タムロンらしい描写も魅力的で、高倍率ズームレンズの良さを見直すきっかけをもらえた1本です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。