タムロン 35-150mm F2-2.8 Di III VXD レビュー|葛原よしひろ
はじめに
今回はタムロンより新しく発売されましたソニーフルサイズEマウント用レンズ、35-150mm F2-2.8 Di III VXDのレビューをさせて頂きます。おもしろい焦点距離の明るいズームレンズですが、F値の低さから見て、主な使用用途はポートレートかと思いますのでポートレート中心でお話させて頂きます。
35-150mm F2-2.8 Di III VXDポートレート作例
Miss Grand Japan 2020ファイナリスト安藤美樹さんと撮影。撮影時に雨が振っており、雨宿りに立ち寄った神社が少し薄暗かったのですが、雰囲気が良くて撮影することにしました。開放F値が2-2.8と明るいズームレンズですので少々暗くても平気なのは嬉しいですね。また簡易防塵防滴構造な事も、雨の日の撮影では嬉しい機能です。
最近のタムロン製レンズの特徴と言っても良い程、近接撮影能力が高くて被写体に寄れるので本当に使いやすいです。この写真は焦点距離35mmの時は開放F2での撮影が可能ですが、ピント面から背景まで柔らかく優しいボケ味が心地良い印象でした。
次は望遠端150mmでの撮影です。35mm側では柔らかい印象でしたが、それと比べると150mm側は、かなり解像感が高くシャープな印象を受けました。150mmも絞り開放撮影なのですが、開放値が変動するレンズなので35mmの開放がF2なのに対して150mm側ではF2.8になります。その辺りも解像感の差と関係しているのかもしれませんね。
焦点距離を変えた作例を並べてみましたので、各焦点距離での描写を参考にしてください。どの焦点距離でも被写体との距離も関係なくAFの動作は速くて正確だったので、ズーム全域でストレスなく軽快に撮影することが出来るのは、かなり良かったです。
撮影をしていて気付いたのですが、このレンズの前ボケが凄く好みです。後ろのボケも良いのですが、前ボケからゆっくり優しく後ろまで均一にトロけるようなボケが、本当に心地よくて凄く気に入りました。作例は35mm広角端の時と中望遠100mmと、望遠端の150mmですが、ズーム全域で統一感の有るボケ方なので使いやすいです。
35-150mm F2-2.8 Di III VXDスペックについて
スペックのお話もさせて頂きます。届いて箱から出した時の印象は正直デカい!でした。実際、長さ158mm、幅89.2mm、フィルター径82mm、重量1,165gの本体は持ってみるとズッシリと重量感が有り、最近のタムロンのレンズは小さくて軽いイメージの物が多かったので少々驚きました。よく考えれば35mm-150mmのズームでF2-F2.8という凄く明るくて高倍率のズームレンズなので、大きくなるのは当たり前なのです。
大きさはともかく重さに関しては少し印象が違います。正直、今回のレンズは今までのタムロンレンズとは一線を画すほどに造りが良いです。外観の高級感も含めズームリングやフォーカスリング、その他スイッチ類まで耐久性の有る印象でしっかりとしています。勿論今までの物がしっかりしていなかった訳では無いのですが、更にしっかりとした印象で、この造りであればこの重量も頷けると思いました。
使ってみた印象は作例の項にも書きましたが、VXDリニアモーターの制御が素晴らしくAFのスピードも精度も文句なしの性能でした。他機能に割付可能なフォーカスホールドボタンも3か所に装着されており、縦位置横位置に限らず、あらゆる角度で押せるのは操作しやすくて嬉しかったです。
その他にも別売のケーブルを購入すると、TAMRON Lens Utilityで色々なカスタマイズ可能な事も、被写体や撮影条件に対してシビアに調整出来てとても良いです。焦点距離や開放F値が2.8通しでは無く35mm広角側でF2始まりという事から、このレンズは基本的にポートレート向きなレンズだと判断して今回はポートレートを沢山撮らせて頂きました。
このレンズ1本有れば、ポートレート撮影会のような撮影は殆ど行けてしまうので、最初の印象で大きく重いと思いましたが、1本だけでレンズ交換無しに満足のいく撮影が出来ると考えると手軽な印象に変わりました。
35-150mm F2-2.8 Di III VXD風景作例
マルチスタイルフォトグラファーの私としてはポートレートばかりというのも寂しいので、最後に風景写真も観て下さい。
秋晴れの霧ケ峰高原は撮影スポット満載でした。紅葉が始まった丘の上から富士山がクッキリ見えて、雲も私を歓迎してくれたみたいに絶好の位置に来てくれました。階調豊かな発色性能なので風景撮影にも向いています。
こちらも霧ケ峰高原ですが、遠方の冠雪し始めた山の解像感も良く、被写体までの距離を選ばず性能を発揮してくれました。ポートレートだけでなく準広角から望遠まで1本で補える明るいズームレンズは、旅の1本としても良い選択だと思います。
■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザーJPS(日本写真家協会)正会員