タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXDで広がるセルフポートレートの世界|Rinaty
はじめに
今回は私が最近気に入っているレンズを紹介します。
それはタムロンの大口径ズームレンズ、35-150mm F/2-2.8 Di III VXDです。タムロン公式でも「ポートレートズーム」と謳うほど人物撮影に適したレンズとなっています。
私は普段セルフポートレート写真を撮影しています。撮影の際、いつもカメラとレンズだけではなく、三脚、ライティング機材、衣装、メイク用品など大量の荷物を持っていきます。そのため、少しでも撮影開始時に体力を残しておくために、荷物をなるべく少なくすることが重要です。
数ヶ月前、私は人生で初めてニコンのカメラを購入しました。
Zマウントで、標準から望遠まで一本で対応できるレンズはないかなと探していた時に、この35-150mm F/2-2.8 Di III VXDに出会いました。
高倍率ズームレンズを始め便利に使えるレンズの多くは開放F値が4以上のものがほとんど。しかもこれまでの撮影でズームレンズでは描写が気に入らないこともしばしばあり、写りも妥協したくないという思いもありました。そんな中、このレンズは35mmから150mmまでカバーしているにも関わらず開放F値はなんとF2~2.8!望遠域でもF2.8で撮ることができるのが魅力的です。
ということで、いろんな場所に連れて行って撮影した作品をご紹介します。
彼岸花
私が一番好きな花は彼岸花です。彼岸花は突然芽を出し、短期間で一気に咲き、枯れていきます。そのため、撮影のタイミングがとても難しい花です。
今回彼岸花と一緒に撮影しようと思い、2時間かけてメイクをして現地に向かったところ、まさかのほとんど咲いていませんでした…
それでも、1枚でも撮ろうと決心し、望遠端150mmまでズームして花をなるべく圧縮して撮影しました。
するとスカスカな彼岸花エリアが下の作品の通り。密集はしていないものの、圧縮効果と美しい前ボケでかなり誤魔化すことができました。
彼岸花を照らすために横から2灯のライトで照らしていますが、フレアやゴーストが入ることなく撮影することができています。
F3.5で撮影しており、細かいアイメイクやヘッドドレスをしっかり描写しつつ、自然なコントラストとなっています。白いウィッグを被っており、明暗差が大きくなりやすい状況ですが、白飛びすることなく、美しいグラデーションとなっていますね。地面や衣装のシャドウ部分も私好みのしっとりとした表現になりました。
標高2450mで撮影
総重量40kgの荷物を担いで富山の立山に登って撮影しました。夕暮れ時でハイライトが飛びやすい時間帯でしたが、しっかりと粘ってくれ、オレンジの優しい夕焼けを写し止めることができました。気温も氷点下となり手がかじかむ状況でしたが、レンズ本体はプラスチック部分が多かったため、冷えにくく助かりました。
藤並木で撮影
藤と藤との間隔が広く、高い位置に花があったため、三脚を高く伸ばしました。そしてレンズを望遠にズームして花の部分を圧縮し、紫の藤の花がたくさん咲いているように撮りました。
セルフタイマーのシャッターが切れるタイミングに合わせてワンピースの裾を動かし、動きを意識した作品です。
絞りは開放F2.8にし、藤の前ボケを大きく写しています。
こちらの作品ではさらに柔らかい表現にしたかったため、H&YのWhite Promist filter 1/4を使用しています。
一方、下の藤の作品では広角端の35mmで撮影。
下から煽ることで、藤棚が写るように撮っています。同じ藤棚でも画角や構図が異なるだけで色んな写真を撮ることができます。
タムロンレンズの魅力の一つが、口径が使いやすいサイズであること。極端に大きくなく、手持ちのレンズフィルターを気軽に取り付けて遊べるのもいいところだなと思っています。
NYでのセルフポートレート
藤並木で撮った日の夜に飛行機に乗り、ニューヨークに行ってきました。
こちらはニューヨークのウォール街で撮影したセルフポートレート。三脚の高さを低くし、教会と街並み、地面から出る煙が全て入るように画角を調整して撮影しています。
海外での撮影は荷物を最小限にする必要があります。旅先でも広角から望遠までこの1本でカバーすることができて助かりました。
悪天候での撮影
こちらは土砂降りの雨の中で撮影。外であまりレンズ交換をしたくない状況でしたが、35-150mmの広いズーム域があればこれ1本で狙った画角で撮影することが可能です。
池の中に浮かぶ陸地と背景に広がる緑を圧縮させて撮影しました。この場所は空も広く写りやすい状況でしたが、緑色の中で赤色を際立たせたく、空を入れないように画角を調整しています。
緑の暗部のグラデーションが美しく、雨による水面の跳ね返りの描写がシャープで臨場感が生まれました。
下の作品は広島県の竹原町並み保存地区にて撮影。
こちらでも雨が降っており、外でレンズ交換をしたくない状況でした。
町並みを歩きながらカメラとレンズ1本、そして三脚だけを持って撮影に挑みました。
このレンズ、重さは1,190gで長さは160.1mm。決して軽いとは言えないサイズ感ではありますが、私は三脚に載せて撮影するため、そこまで気になりませんでした。
曇天で空と建物の輝度差が大きいロケーションですが、黒潰れすることなく写っています。
森と岩場で撮影
森の部分は木がたくさん生えており、少しだけ圧縮して撮りたかったため約90mmで撮影。
H&YのWhite Promist filterをレンズに取り付けて、柔らかく表現しています。
下の作品ではフィルターは付けず、約60mmで撮影しています。遠くに見える岩場を少し圧縮して画角の中に入れて迫力を出しています。
私はセルフポートレートを撮影する際、AFで自分が立つ位置にピントを合わせた後にMFに切り替えて撮影しています。このレンズにはAF/MFの切り替えボタンが付いているので、そういった操作も楽に行うことができました。
ピントが合っている部分はシャープで硬くなりすぎない描写、そして背景は自然なボケ感でうるささを感じさせないので、色んなロケで大活躍してくれます。
私はこれまでセルフポートレートを撮りに行く際、望遠レンズは体積が大きく荷物がかさばるため、基本的にタムロンの標準ズーム28-75mm F2.8と、シグマの広角ズーム14-24mm F2.8の2本だけを持っていくことが多い状況でした。
そのため、望遠でセルフポートレートを撮る機会がかなり減っていたのですが、この35-150mm F/2-2.8 Di III VXDを手にしたことで75mm以上で撮影する機会が増え、表現の幅が広がったと感じています。
こんなシーンでも便利
私はセルフポートレート写真家として作品を撮りつつ、クライアントワークもよく行っています。
先日、運動会の撮影があり、35-150mm F/2-2.8 Di III VXDの1本で撮影に挑みました。
今まではカメラ2台持ちで、標準レンズと望遠レンズをそれぞれ取り付けることが多い状況でした。ですが2台持ちすることで首が痛くなり、カメラを持ち変える時間のロスや、機材の重さも気になっていました。
そんな中でこの35-150mm F/2-2.8 Di III VXDは、自分の視野に近い程よい広角から、遠くの被写体を引き寄せる望遠までカバーできるため非常に便利でした。そしてAFの速さや追従性も問題なく、ストレスフリーで長時間撮影することができました。
スクールフォトやイベント撮影など、2台持ちの現場が多い方にとって、革命的なレンズになるのではないかなと感じます。
おわりに
今回使用してみて、改めて1本で広角から望遠までカバーしつつF2.8以下をキープできる便利さに感動しました。ポートレート作品の撮影だけでなく、ブライダルやスクール、スポーツなど色んな分野で大活躍するレンズだと思います。ぜひ多くの方に使っていただき、その良さを体感していただけたらと思います。
お知らせ
私の初著書「撮影もモデルも全部わたし。#セルフポートレートの裏側(玄光社)」が発売されました!私が普段使っている機材や衣装、撮影する時に考えていたポイントや裏話までわかりやすくまとまった1冊となりました。セルフポートレートに挑戦する人にはもちろん、カメラマンとモデル両方の視点で書いているため、今までにない本となっております!全国の書店で発売されていますので、ぜひご覧ください。
■写真家:Rinaty
2021年よりフリーランスフォトグラファーに転身、大阪を拠点として全国で活動中。カメラマン・モデル・ヘアメイク・スタイリング・アートディレクションを全て一人でこなすセルフポートレート写真家として多くの作品を残す。フォトウォークやセミナー等の撮影イベントも多く開催し、上田安子服飾専門学校スタイリングフォト学科にて講師を務める。その一方でウェディング前撮り、成人式前撮り、プロフィール撮影、キッズ撮影、広告撮影、商品撮影など幅広く活躍している。
日本写真家協会 正会員・東京カメラ部2022 10選