タムロン 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDレビュー|軽量・コンパクトでも優れた光学性能を発揮
はじめに
今回紹介するレンズは2024年6月27日に発売された、タムロンの「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」ソニーEマウント用です。タムロンにはすでに「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD(Model A047)」という非常に焦点距離が似通ったレンズがありますが、今回のモデルは焦点距離が標準50mmからのスタートになり、マクロから標準・望遠までをカバーする日常を非日常に撮る望遠ズームとして進化したレンズです。
そんな新しいモデルを発売前にタムロンさんよりお借りすることができたので、この新しいレンズのスペックと魅力・写りをご紹介します。
基本スペックと魅力
今回の新製品、タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」は、焦点距離が標準50mmからスタートの望遠ズーム。このクラスの望遠ズームレンズは焦点距離70mmスタートが標準的なのですが、焦点距離が50mmスタートになることで使いやすさがアップしています。また「手ブレ補正機構VC」も搭載されているため、望遠領域も安心して使えるレンズです。
同社の「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」とのスペックの違いを一覧にしてみました。
50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069) | 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047) | |
焦点距離 | 50-300mm | 70-300mm |
レンズ構成 | 14群19枚 | 10群15枚 |
開放絞り | 4.5-6.3 | 4.5-6.3 |
最小絞り | 22-32 | 22-32 |
フィルター径 | 67mm | 67mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 7枚 |
最近接距離 | 0.22m (WIDE) 0.9m (TELE) |
0.8m (WIDE) 1.5m (TELE) |
手ブレ補正 | 有 | 無 |
全長×最大径 | 150×78mm | 148×77mm(ソニー用) |
重量 | 665g | 545g(ソニー用) |
発売 | 2024年6月 | 2020年10月 |
「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」は「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」に対して「50mmスタートの焦点距離」、「手ブレ補正VC搭載」、「広角側50mmで0.22mのハーフマクロ」の3つの点が改良され、非常に使い勝手が良くなっているのがポイントです。
焦点距離50mmスタートとなることで日常使いがより便利になっており、室内での撮影においても70mmスタートと50mmスタートではずいぶんと使い勝手が変わってきます。また、焦点距離50mm側での最短撮影距離が0.22mと寄れるレンズになっていて、ハーフマクロとしても使えるためいろいろなシーンに対応できるレンズに仕上がっています。
「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」は「手ブレ補正機構VC」が搭載されたものの、フィルター径は67mmです。タムロンの多くのレンズがフィルター径67mmに統一されているので、複数のレンズを同時に持ち歩いても携帯性が高いことに加え、PLフィルターをはじめとした各種フィルターも共用できるほか、レンズ交換時に径の異なるキャップを探す手間が省けるなど、ラインナップ全体で高い利便性を発揮します。
タムロンのレンズをより快適に使いこなすためのポイントとして、「TAMRON Lens Utility」というソフトがあります。
パソコンまたはスマートフォンを使用して、コネクターポート(端子形状: USB Type-C)を搭載したタムロンレンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行える専用ソフトウェアです。レンズを使いやすいように設定することで、撮影がもっと楽しく、もっとクリエイティブになります。
「TAMRON Lens Utility」を使えば、カメラボディ機能割り当て、AF/MF切り替え・フォーカスリミッター・フォーカスプリセット・A-B フォーカス・フォーカス/絞り リング機能切り替え・フォーカスストッパー・アストロFC-Lなど様々な機能設定が可能です。
「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」は、昨年の10月に発売された「17-50mm F/4 Di III VXD(Model A068)」と組み合わせれば超広角17mm~望遠300mmを2本のレンズでカバーする事ができます。加えて、フィルター径が同じ67mmなのでレンズ交換の際のキャップやフィルターなど同じものが使えて、非常に使い勝手の良い組み合わせになります。
タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」で花撮影
最初はハーフマクロが活躍する花の撮影です。焦点距離50mm側での最短撮影距離22cmと、かなり寄れるレンズなのでお花の撮影にピッタリ。レンズの全長が150mmとレンズフードの大きさを考えると被写体に当たってしまうぐらいの距離感になります。これだけ寄れるとお花の撮影も楽しく使えるレンズですが、寄れる半面自分の影が被写体に影響してしまう場合もあるので、時と場合によってはレンズフードを外して撮影した方が良いシーンなども発生します。
下の3枚の写真は、焦点距離50mmで最短撮影距離にて撮影したものになります。
下の3枚の写真は、同じ場所から焦点距離を変えて撮影したものになります。焦点距離50mmでは建物などが背景に入り場所が分かるような写真になりますが、花菖蒲などの池に咲く花は少し距離があるので望遠300mm側での撮影がよくマッチします。また望遠側ではより背景が大きくボケるので、人が多い人気の撮影スポットなどでは背景をボカすことができ、被写体を浮き立たせ背景に入ってくる人物などを溶け込ませることができます。
「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」は、ハーフマクロにもなる焦点距離50mm側が魅力なレンズですが、望遠300mm側でも最短撮影距離が90cmなので望遠側でも大きな背景のボケを活かした花の撮影を楽しむことができます。
タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)は、「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD(Model A047)」に比べて、最短撮影距離が短くなった以外にも絞り羽根の枚数が9枚になっていてボケの形もキレイになっています。
タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」で動物撮影
タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」を持って、動物園で撮影をしてみました。望遠側が300mmあるので、動物園などでの動物撮影には使いやすい焦点距離のレンズです。レンズ本体もこのクラスでは軽量なので、一日持ち歩いても負担が少ないのも魅力のポイントです。
カメラ側の被写体認識AFを使って撮影をしてみましたが、しっかりとオートフォーカスで被写体認識をしてくれるので撮影は非常にスムーズに行う事ができました。ただ最短撮影距離の短さが少しネックになる場合もあり、フェンス越しでの撮影ではどうしてもフェンスにピントを持ってかれることが多く、フェンス越しでの撮影は苦戦しました。オートフォーカスのスピードのレベルですが、リニアモーターフォーカス機構VXDを搭載した事により、「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」よりは良くなっています。
タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」は手ブレ補正も搭載した事で、ボディ内手ブレ補正を搭載していないAPS-C機の「α6400」などのユーザーにもおすすめできるレンズです。APS-C機で使用した場合の焦点距離は35ミリ判換算で75-450mm相当になり、迫力ある写真を撮ることができ、手ブレ補正機能の恩恵も受けることができます。
タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」でマリンスポーツ撮影
最後にタムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」を海辺に持っていき、砂浜からウィンドサーフィンなどを楽しむ人の姿を撮影してみました。日差しの強い中の、コントラストが強い状況や強い逆光などの状態で撮影です。ウィンドサーフィンなどの動きはそれほど速い速度では無いこともあって、オートフォーカスの動体追従性も高く安定した撮影をする事ができました。
強い逆光での撮影もしてみましたが、タムロンのゴースト・フレアの発生を抑えるBBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)コーティングの採用により、逆光条件でも被写体のディテールを緻密に描き出すことができています。
まとめ
短期間での使用ではありますが、焦点距離50mmからスタートのレンズは想像する以上に使いやすいと感じました。また描写性能に関しては、全域で非常にシャープな描写をしてくれるし、逆光性能も高く良質なボケをする非常にコストパフォーマンスの良いレンズで、実用性も高く満足度が高いです。そして何よりも軽いレンズである事。持ち運びの負担が減り、今まで以上に多くのシャッターチャンスを得ることができるのではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー