タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レビュー|50mmの視野を手に入れたズーム比8倍の超望遠レンズ
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はじめに
今回紹介するのは、タムロンから2022年9月22日に発売された50mmの視野を手に入れたズーム比8倍の超望遠レンズ「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」。このクラスのレンズは100-400mmが一般的である中、唯一無二の標準50mmスタートの魅力あるレンズです。今までに無かった高倍率ズームレンズなので、注目度の高い100-400mmとの違いや「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の写りがどんなものなのか、使い勝手はどんな感じなのかをフィールドに持ち出して撮影をしてみました。
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDの魅力
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「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」は、ソニーEマウントに対応したズーム比8倍の高倍率ズームレンズ。その最大の魅力は超望遠ズームでありながら、スタートが50mmの画角から始まるところです。このクラスのズームレンズの多くは100-400mmが一般的です。ソニーAマウントのレンズで70mmスタートの「70-400mm F4-5.6 G SSM II」(SAL70400G2)がありましたが、すでに販売終了になっており、50mmスタートの「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」は他にはない魅力的なレンズです。
現時点でEマウントのみのラインナップなので、ソニーユーザーの多くの方が気になるのは、ソニー純正の「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」と比較してどうなのかというところではないでしょうか?
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右:ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
そこで、少しスペックを比較してみました。
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD | ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS | |
焦点距離 | 50-400 | 100-400 |
レンズ構成 | 18群24枚 | 16群22枚 |
開放絞り | 4.5-6.3 | 4.5-5.6 |
最小絞り | 22-32 | 32-40 |
フィルター径 | 67mm | 77mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.25m (WIDE) / 1.5m (TELE) | 0.98m |
最大撮影倍率 | 0.5倍 (WIDE) / 0.25倍 (TELE) | 0.35倍 |
全長×最大径 | 88.5×183.4mm | 93.9×205mm |
重量 | 1155g | 1395g(三脚座除く) |
その他 | テレコン対応不可 | テレコン対応可 |
広角側の開放F値はともにF4.5と同じですが、望遠側になるとタムロンはF6.3、ソニーはF5.6と純正レンズの方が若干明るいスペックになっています。このことはフィルター径の差にも影響があると思われます。タムロンの最近のレンズはフィルター径を67mmで統一しており、フィルターを愛用するユーザーにとってはメリットの一つかもしれません。
重量は「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の方が240gほど軽量。筐体の質感も良くαのボディとのマッチングも非常に良い感じです。「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」はワイド側では0.25mmまで寄れるのは優れもので、50~70mmの間でハーフマクロ(撮影倍率0.5倍)を楽しむことも出来ます。望遠側になると最短撮影距離が1.5mになるところは残念なポイントで、「ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」の方に軍配が上がります。
また、テレコンバーターが使える純正の「ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」は拡張性があると言えます。とは言え50mmから使える機動力の高さや価格を考えると、非常に魅力的なレンズである事は間違いありません。
実際に使用して不満を感じる事は非常に少なく、むしろ筆者のスタイルでは「ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」よりも、「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の方が使い勝手が良く感じました。
あえて不満な点が挙げると、連写速度の問題になります。純正のレンズ「ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」であれば最高スペックの連写性能を発揮できますが、「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」では、その恩恵を受ける事ができないことになります。
実際に、ソニー α1をそれぞれのレンズを装着して連写性能を確認してみました。α1の設定はAF-C「30コマ/秒連写」にして撮影しています。
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD | ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS | |
1回目 | 14コマ | 29コマ |
2回目 | 14コマ | 28コマ |
3回目 | 14コマ | 29コマ |
結果は一部のEマウントレンズ同様に、AF-Cモード時の最高約15コマ/秒と同じ結果で、最高約30コマ/秒の半分の結果が確認できました。ボディの最高スペックを享受できない点は、少し残念なポイントです。
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カスタムに機能を割り当てるには、パソコンソフト「TAMRON Lens Utility」を使ってレンズとケーブルで接続しカスタム機能を追加します。カスタマイズできる機能は下記の項目になります。
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一度自分なりに設定してしまえば、使う頻度も少ないと思いますが、自分が使いやすいようにカスタムができるのは魅力ポイントです。
下の写真は、同じ場所から400mmと50mmで撮影した写真です。400mmの望遠で迫力ある切り取り撮影ができ、50mmの標準画角で全体のフォルムをしっかり収める事ができる「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」は、レンズ交換などの手間も省けて、イベントなどの撮影に非常に使い勝手が良いレンズです。
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■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF8 ISO800 焦点距離50mm
下の写真はカメラ側で歪曲収差補正をOFFにした状態で撮影したものですが、駅のホームの柱の歪みがはっきりと分かります。このレンズ「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」は、カメラ側で歪曲収差補正をONにした状態で撮影する方が良いでしょう。ソニーαのボディは、歪曲収差補正はデフォルトではOFFになっているので、このレンズを購入した際には、カメラボディ側の設定確認が必要ですね。
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■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
ブルーインパルスを撮影
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■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF14 ISO800 焦点距離400mm
「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」をお借りできたタイミングで、ちょうど松島基地航空祭に撮影にいく予定があったので、「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」で撮影をしてきました。松島基地航空祭の前日に松島に入り、「東松島夏祭り」で飛行するブルーインパルスを基地外で撮影をしてみました。
8月末にある「松島基地航空祭」と「東松島夏祭り」は、ブルーインパルスを連日撮影できる魅力あるイベントで、たくさんのファンの方が集まります。今回の「松島基地航空祭」の入場は抽選だったので、事前に申し込みをして撮影に挑みました。大きなレンズを持ち込める「有料席」の抽選は外れましたが、「無料」の方はなんとか当選。という訳でこの「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」レンズは、航空祭撮影にピッタリのアイテムでした。
航空祭当日は生憎のお天気だったので、予定されていた飛行展示も午前の部は中止。そこで撮影のメインを「ブルーインパルスJR」にして撮影をしてみました。雨の中の撮影になったので、「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」の50mmから400mmの高倍率ズームによりレンズ交換をしなくて済み非常に助かりました。屋外で雨の中のレンズ交換は至難の技ですから。
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■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF7.1 ISO100 焦点距離273mm
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■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF8 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF9 ISO100 焦点距離115mm
最後のブルーインパルスが飛行する予定時刻には、雨も止んで雲の多い中でしたがブルーインパルスの雄姿を撮影する事ができました。50mmの広い画角でブルーインパルスの飛行を追いながら、ズームで画角を追い込んで撮影できるスタイルは、動きモノを撮影する際に非常に被写体を捉えられやすく使い勝手が良いレンズを感じます。屋外でのスポーツ撮影でも活躍できるレンズになると思います。
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■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF7.1 ISO800 焦点距離113mm
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■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF7.1 ISO800 焦点距離400mm
動物園での撮影
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■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」を持って動物園に行ってみました。結果としてはこのレンズのメリットである50mm側を使う頻度は少なく、望遠側がメインになってしまいました。
ガラス越しやフェンス越しの状態でもピントは合いやすく、撮影はスムーズにできるレンズです。特に動物園などの撮影の場合、網目のフェンス越しの撮影が多くなりピントがフェンスに合ったりして撮影しにくい場合が発生します。この様な撮影の場合にはレンズのフォーカスリミッターの設定を事前にしておくと撮影がより快適にできるようになります。
先に紹介したソフトで事前にカスタムし、手前にピントが合わないようにしておけば、網目のフェンスにピントを持って行かれることもなくなります。フォーカスリミッターの設定をどの程度の距離に設定するかは撮影する場所によって異なりますが、よく撮影に行く場所であれば設定をしておくのが良いでしょう。このフォーカスリミッターの設定は動物園などのフェンス越し撮影の他、スポーツなどのネット越しの撮影の際にも便利な機能です。
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■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF7.1 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影環境:シャッター速度1/250 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF6.3 ISO6400 焦点距離158mm
スナップ撮影
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■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF6.3 ISO6400 焦点距離381mm
続いて 「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」を持って街中スナップを楽しんでみました。さすがにお散歩スナップ撮影には大きなレンズですが、「ソニー FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」のような白レンズ固有の存在感の主張は感じられないので、スナップ撮影していても気楽に楽しめるレンズです。
また、持ち運びに時に大きなズームレンズによくある、自重によるレンズの伸びはありませんでした。もちろんロック機能もあるのですが、ロックを使うことは無く非常に快適に使うことができました。
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■撮影環境:シャッター速度1/60 絞りF10 ISO800 焦点距離50mm
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■撮影環境:シャッター速度1/60 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
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■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF19 ISO800 焦点距離51mm
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■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF6.3 ISO800 焦点距離400mm
基本的にどうしても望遠寄りを多く使って撮ってしまうレンズですが、50mmの画角と400mmの画角を同時にシームレスに使えるのは使っていて楽しいレンズです。100mmスタートのレンズと違い50mmが使えるゆとりが撮影に余裕を与えてくれます。
まとめ
50mmの視野を手に入れたズーム比8倍の超望遠「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」は、実際に使ってみると想像していた以上に使いやすく、その写りも満足できる描写をしてくれました。また、価格も考えると非常にコストパフォーマンスの高いレンズです。標準ズームレンズと「タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」があれば、かなりいろいろなシチュエーションの撮影に対応できるでしょう。400mmクラスの望遠レンズを持っていないαユーザーにはおススメのレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師