タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)|初のZマウント望遠ズームで撮る沖縄闘牛とスナップ
はじめに
2022年9月29日に、タムロンから初めて、ニコンZマウントシステム対応のレンズが発売されました。今回は、70-300mmの使いやすい望遠画角を実現しながら高画質な描写性能を有し、かつコンパクトな形状の「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」の魅力を、沖縄の闘牛と街歩きスナップでお伝えします。
素早いAFで捉えられた戦う牛の表情
筆者は東京在住ですが、いずれは沖縄に移住したいと思っているほどの沖縄好き。ちょっと時間ができると、すぐ沖縄に飛んでしまうのですが、最近はまっているのが沖縄闘牛です。沖縄県本島、中部の東海岸にあるうるま市には、ドーム型の闘牛場「うるま市石川多目的ドーム」があり、年間約20回の闘牛大会が開催されています。
そんな、闘牛のまちうるま市に通うこと数え切れず、本レンズで闘牛を撮影したら絶対に楽しいだろうと思って持っていきましたが、これが期待以上でした。
沖縄闘牛は牛と牛との戦いで、この写真は、1トンクラスの大型牛同士の対戦でした。ぶつかり合う牛の表情を、素早いAFのお陰でしっかりと撮ることができました。
本レンズは、ステッピングモーターユニットRXD (Rapid eXtra-silent stepping Drive)を搭載しており、望遠画角で動きの激しい被写体の撮影でも、静かに正確にピントを合わせ続けてくれるというのが謳い文句ですが、その看板に偽りなし!戦う牛の目にピントを合わせ続けてくれたので、構図に集中して撮影が行えました。
牛の毛の質感をリアルに描写する高い描写性能
沖縄闘牛の一大会の対戦数は10番前後で、若手や実力下位の牛から順に試合が進みます。入場は一頭ずつ行われるので、戦いが始まる前の牛の動作を撮影するのも、また楽しみのひとつです。
本レンズはLD (Low Dispersion: 異常低分散)レンズを使用した、10群15枚のレンズ構成で、軸上色収差を抑え、望遠側も画面の隅々までクリアーに描く性能に仕上がっています。お陰で、牛の毛の質感や模様まで、実にリアルに表現してくれました。
激しく動く被写体との相性の良さ
沖縄闘牛では、牛のそばで「ヒーヤイ!ヒーヤイ!」と掛け声をかけて、牛を鼓舞させる「勢子(せこ)」という闘牛士がいます。この掛け声を「ヤグイ」といって、対戦中の場内にはこのヤグイが響き渡り、観客のボルテージを上げてくれます。
戦っている牛は、円形の場内をぐるぐると走り回ることも多く、牛とカメラの間を闘牛士が横切ることも多々あります。それでも、Nikon Z 6IIと本レンズの組み合わせで、一度は闘牛士の背中に隠れて見えなくなった牛の目が、再び見えるようになったときに、スルッとピントが合うのは感動モノでした。
望遠ズームにしてはコンパクト!
ニコン用の本レンズの長さは150.3mm、重さは580gと、2020年10月に発売されたソニー用(長さ:148mm、重さ:545g)よりは長く、重いのですが、ストレートでシンプルなデザインのお陰もあって、それほど重量を感じません。レンズフードをつけると長くはなるのですが、筆者はレンズフードがついているレンズは、絶対に使用する派なので、それに関するデメリットもそれほどありませんでした。
今回の沖縄闘牛は、午後1時から試合が開始されて、終わったのは15時半頃。それまで座りながらとは言っても、ほぼカメラを構えっぱなしでしたが、このクラスのレンズにしては疲れが蓄積されませんでした。
沖縄闘牛に興味を持たれた方は、こちらの「闘牛 in Okinawa」をご覧いただくと、闘牛初心者講座などもあって面白いですよ。私が撮影したのは、1月2日に開催された「新春華牛大闘牛大会」ですが、その試合結果も掲載されています。
好感の持てるナチュラルなボケ味の広角端
沖縄も国際通りの裏側に入ると、撮り歩きが楽しい場所が沢山あります。70mmの広角側のボケはナチュラルで、スナップでよく使用するF5.6の絞り値での描写は、とても自然で筆者好みのものでした。
大きく、優しいボケを実現した望遠端
300mmの望遠側は、開放値F6.3とは思えないほど大きく、優しいボケ味で、料理やテーブルフォトなどへのポテンシャルを感じました。
7枚羽根の円形絞りと、BBAR(Broad-Band Anti-Reflection)コーティングを採用して、フレアとゴーストを大幅に低減しているという本レンズは、思いっきり逆光でのポートレート撮影も、楽しそうだなと思いました。
アンダー部の描写は控えめに言って最高
沖縄の街歩きスナップで楽しいのが、影と日向のコントラストの強さです。冬の沖縄は、東京と比べたらとても暖かく、日差しも日焼けを心配したくなるくらい、太陽を近くに感じる強さです。明暗の差を楽しむスナップ撮影地としては、これ以上ないくらい最適なのです。
そして、本レンズのアンダー部の描写が、筆者的にとてもしっくり来ました。潰しすぎないアンダー部の黒色の描写は、このような望遠ズーム系のレンズとしては秀逸。撮りたいものが撮れる望遠ズームレンズとして、旅のお供におすすめできる一本です。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。