タムロン 17-50mm F/4 Di III VXD レビュー|ストリートからネイチャースナップまでこれ1本でOK
はじめに
今回紹介するレンズは2023年8月に開発発表され、同年10月に新発売になったタムロンのソニーEマウントレンズ「17-50mm F/4 Di III VXD」です。フルサイズに対応する超広角17mmから標準50mmをF4通しでカバーする広角ズームレンズは、他には無い焦点距離のレンズになります。小型で軽量な「17-50mm F/4 Di III VXD」は、ミラーレス機のαにジャストフィットするサイズ感で、非常に使い勝手が良さそうな感じです。実際にいろいろなシーンに持ち出して撮影をしましたので、気になるスペックとその写りをご紹介します。
基本スペックと魅力
タムロン「17-50mm F/4 Di III VXD」の魅力は他にはない焦点距離です。17mmの超広角から標準50mmまでシームレスに撮影が可能な点がポイント。超広角ズームレンズの代表的な焦点距離は16~35mmですが、それと比べると「17-50mm F/4 Di III VXD」はワイド端が1mm(画角にして約3度)小さいですが、標準域50mmまでの焦点距離を有しているのは大きなアドバンテージになります。
手元にあるレンズと比較してみようと思いましたが、そもそもこの焦点距離のズームは初めてなので比較対象が少々難しいですね。超広角16mmスタートのF4通しレンズという点で比較的近い性格の、ソニー純正レンズ「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」と「FE PZ 16-35mm F4 G」で比較してみました。タムロン「17-50mm F/4 Di III VXD」は最大径は小さいものの、全長は少し長めのスタイルです。
タムロン 17-50mm F/4 Di III VXD |
Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS |
FE PZ 16-35mm F4 G | |
焦点距離 | 17-50mm | 16-35mm | 16-35mm |
レンズ構成 | 13群15枚 | 10群12枚 | 12群13枚 |
開放絞り | 4 | 4 | 4 |
最小絞り | 22 | 22 | 22 |
フィルター径 | 67mm | 72mm | 72mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 7枚 | 7枚 |
最短撮影距離 | 0.19m (WIDE) 0.3m (TELE) |
0.28m | 0.28m (WIDE) 0.24m (TELE) |
最大撮影倍率 | 1:4.6 (WIDE) 1:3.8 (TELE) |
0.19倍 | 0.23倍 |
手ブレ補正 | 無 | 有 | 無 |
全長×最大径 | 114.4×74.8mm | 98.5×78mm | 88.1×80.5mm |
重量 | 約460g | 約518g | 約353g |
発売 | 2023年10月 | 2014年11月 | 2022年5月 |
こうして比較してみると、最短撮影距離がワイド端で0.19mと短く、非常に寄れるレンズである事が特徴として見えてきます。カメラのボディとレンズの長さ、フードの大きさを加味すると、かなり被写体に近いところまで寄って撮影できます。また、テレ端での最短撮影距離も0.3mとソニー純正の50mm単焦点レンズよりも短いので、非常に使い勝手のいいレンズになっています。
同じタムロンレンズで、人気の高倍率ズームレンズ「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」と大きさを比較してみると、ほぼ同じぐらいの大きさです。タムロンのレンズの多くがフィルター径67mmに統一されており、複数のレンズを同時に持ち歩いても携帯性が高いことに加え、PLフィルターをはじめとした各種フィルターも共用できるほか、レンズ交換時に径の異なるキャップを探す手間が省けるなど、ラインアップ全体で高い利便性を発揮します。
フィルター径67mmのタムロンレンズラインアップ
・17-28mm F/2.8 Di III RXD
・17-50mm F/4 Di III VXD
・20mm F/2.8 Di III OSD M1:2
・20-40mm F/2.8 Di III VXD
・24mm F/2.8 Di III OSD M1:2
・28-75mm F/2.8 Di III VXD G2
・28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD
・35mm F/2.8 Di III OSD M1:2
・50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
・70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2
・70-180mm F/2.8 Di III VXD
・70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD
タムロンのレンズをより快適に使いこなすためのポイントとして、「TAMRON Lens Utility」というソフトがあります。パソコンまたはスマートフォンを使用して、コネクターポート(端子形状: USB Type-C)を搭載したタムロンレンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行える専用ソフトウェアです。レンズを使いやすいように設定することで、撮影がもっと楽しく、もっとクリエイティブになります。
「TAMRON Lens Utility」で設定できる各種機能は、A-B フォーカス・フォーカスプリセット・フォーカスリミッター・フォーカスリング設定・AF/MF切り替え・フォーカス/絞り・リング機能切り替え・カメラボディ機能割り当てなど様々な設定が可能です。
タムロン「17-50mm F/4 Di III VXD」でスナップ撮影
「17-50mm F/4 Di III VXD」を持って、東京駅周辺でスナップ撮影をしてみました。超広角レンズを使用する場合、普段であればもう一本標準域のレンズを合わせて持って行くのですが、「17-50mm F/4 Di III VXD」はズームのテレ側が50mmまであるのでレンズ一本で交換しなくても撮影ができ、少ない荷物で軽快なフットワークで快適な撮影ができました。
超広角の焦点距離17mmも魅力的なレンズですが、テレ側の50mmの焦点距離がスナップ撮影には凄くマッチしています。フィルムを使って50mm標準レンズでマニュアルカメラを使っていた世代の筆者にとっては、使い慣れた焦点距離なので軽快に撮影をする事ができました。超広角17mmと50mmの焦点距離を持った「17-50mm F/4 Di III VXD」は、これからの常用レンズになりそうな予感がします。
この「17-50mm F/4 Di III VXD」の魅力の一つが最短撮影距離の短さです。焦点距離17mm側で0.19m、焦点距離50mm側で0.3mと寄れるレンズなので、気になった被写体にぐっと寄って撮影することができます。
下の写真は17mm側と50mm側の焦点距離を使って、それぞれ最短撮影距離で撮影をしてみました。同じ被写体でも一本のレンズで大きく変化の富んだ撮影をする事ができるレンズです。
タムロン「17-50mm F/4 Di III VXD」でネイチャースナップ撮影
次に「17-50mm F/4 Di III VXD」を持って昆虫や花などを撮影してみました。広角端で驚異の0.19m(最大撮影倍率1:4.6)、望遠端で0.3m(最大撮影倍率1:3.8)を実現しているので、気になる被写体にグイグイと寄って撮影する事ができます。特に広角側では、被写体との距離に気を付けないとフードが触れてしまうような距離感です。被写体に寄って撮影する事で、背景の大きなボケも演出できます。
「17-50mm F/4 Di III VXD」は、「α」とのバランスもよく重さも軽量な部類のレンズです。ワイド側の最短撮影距離の短さを活かしバリアングルモニターなどを使用して、被写体の真上から撮影するのも簡単にできるので、撮影構図の自由度が非常に高いレンズになります。同じ場所で同じ被写体を撮影する際にも大きな変化をつけて撮影できるのは、このレンズの大きな魅力です。
下の写真は「α7R V」を使用して蝶々を撮影したものです。「α7R V」のAiオートフォーカスの被写体認識[昆虫]を使用して撮影しています。「17-50mm F/4 Di III VXD」は、こういった最新のオートフォーカスにも対応しており、被写体をしっかりと捉えてくれています。
超広角レンズでは、その画角の広さから太陽が入り込むシーンは必然的に多くなってきます。上の写真は、画面左上に太陽を入れ込んで逆光の状態で撮影をしてみましたが、逆光耐性は良好と言えると思います。
まとめ
今回、タムロン「17-50mm F/4 Di III VXD」を使用して、絶妙な焦点距離の便利さに感心させられました。なぜ今までこの焦点距離のレンズが無かったのか不思議に感じるくらいです。超広角と標準域を同時に一本で撮影でき、最短撮影距離も短いレンズは、旅行・スナップからネイチャースナップまで幅広く活躍できるレンズです。常用レンズとしてカメラボディに装着しておくレンズとしても使い勝手が良いと思います。また実売で10万円を切ってくる価格も魅力のポイントで、非常にコストパフォーマンスの高いレンズではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師