最高峰のMFマクロレンズ|フォクトレンダー MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical Z マウント

水咲奈々
最高峰のMFマクロレンズ|フォクトレンダー MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical Z マウント

はじめに

 コシナから2022年11月24日に発売された「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical Z マウント」は、ニコンFXフォーマット(フルサイズ)ミラーレス機用の、大口径マクロレンズです。今回は本レンズをスナップとポートレートでレビューいたします。

高度な科学技術を採用したアポクロマート設計

■撮影機材:Nikon Z 6II + MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
■撮影環境:絞りF2 1/200秒 ISO100 WB:自然光オート ピクチャーコントロール:風景

 本レンズの名称にある「APO-LANTHAR」は、フォクトレンダー製のAPOレンズであることを指しています。高性能な光学設計により、レンズを通過する光の屈折率の違いによって起こるパープルフリンジや色にじみを抑えて、鮮明でクリアーな画が得られるのが、この名称のレンズの特徴です。

 F2の浅い被写界深度と、APOレンズの鮮明な描写力の組み合わせは非常に相性が良く、さらに最短31cmまで寄れるマクロ性能が合わさると、大きくボケるのは当たり前で、繊細で丁寧なボケのグラデーションを追求している設計と気概を感じます。

 こちらは、今年は咲くのが早そうだなと思いながら撮影した紫陽花。中心の真花にピントを合わせると、その周りを取り巻く装飾花はふんわりと溶けるようにボケています。装飾花は、青色に少し赤紫色が差し色のように入った色合いで、写真の奥に行くほど赤紫色の割合いが多く、趣を感じました。この、青色から赤紫色の微妙な色合いのグラデーションが、繊細に表現されているのはさすがです。

小さな点光源も優しく丸くボカしてくれる絞り機構

■撮影機材:Nikon Z 6II + MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
■撮影環境:絞りF2 1/200秒 ISO100 WB:5000K ピクチャーコントロール:ポートレート

 逆光での撮影が多いポートレートも、APOレンズの恩恵を受けることで、淡いボケとピント面のキリッとした高いコントラストの描写が両立した、印象的な作品に仕上げることができます。

 背景のイルミネーションは絞り開放時にはレモン型になり、少し絞ると丸くなりました。大きなボケの描写が欲しかったので、開放の描写を採用しました。絞り羽根枚数が10枚の偶数なので、小さな光源も優しい丸みのあるボケにしてくれるのが、本レンズのメリットでもあります。

電子接点搭載でMFのピント合わせがしやすい!

■撮影機材:Nikon Z 6II + MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
■撮影環境:絞りF2 1/200秒 ISO1250 WB:4700K ピクチャーコントロール:ポートレート

 本レンズはマニュアルフォーカスのレンズなので、ピント合わせは手動で行います。ピントリングは適度な粘りがあり、微妙なピントの調整がとてもしやすいです。これ、軽すぎるとスカッと狙ったピント位置を通り過ぎてしまうし、重すぎるとピント位置切り替えにタイムロスが生じて、シャッターチャンスを逃す可能性が高くなります。

 その点、本レンズのトルクは、この記事をご覧になっている皆さんにレンズをお渡しして、実際に触っていただきたくなるほど、丁度良い重さ、心地良い操作感なのです。触っていて高級感を感じられる総金属製のヘリコイドユニットも、撮影のテンションを高めてくれる重要なポイントと言えます。

 また、電子接点搭載なので、対応ファームウェアにアップデートしたカメラボディ(公式ボディリスト→https://www.cosina.co.jp/voigtlander/z-mount/macro-apo-lanthar-65mm-f2-aspherical/)でしたら、ボディ内手ブレ補正と、フォーカスポイント枠色変化、ピーキング表示、拡大ボタンによるピント合わせを使用できます。

 特に枠色変化は、フォーカスポイントの枠の色が赤色から緑色に変わると、ピントが合ったという指標になるので、等倍に拡大表示してもピントを合わせる被写体が小さい、この作品のようなシーンではとても重宝します。

被写体の質感まで表現してくれるレンズ

■撮影機材:Nikon Z 6II + MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
■撮影環境:絞りF2 1/200秒 ISO100 WB:自然光オート ピクチャーコントロール:スタンダード

 65mmという焦点距離は慣れない方には微妙な数値に思えるかもしれませんが、筆者は一眼レフ時代に60mmのマクロレンズを、水族館、スナップ、旅写真などすべてのシーンでの常用レンズとしていたので、とても馴染み深い画角のためスナップが捗りました。

 撮影日はフラットな光の状況で、被写体探しに苦労したのですが、街なかに少し傾きながらポツンと建つ昔の名残を見つけました。こんなサビの質感を丁寧に表現できるのも、本レンズの特徴のひとつでしょう。後ろのボケの綺麗さは筆舌に尽くしがたいですが、前ボケのグラデーションも美しく、触ったときの冷たさや、ザラザラ感までも表現してくれています。

高コントラストでドラマティックな画作りが得意

■撮影機材:Nikon Z 6II + MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
■撮影環境:絞りF2 1/200秒 ISO100 WB:自然光オート ピクチャーコントロール:風景

 筆者は最近、F値の小さな大口径のレンズを使用することが多いのですが、その中でも本レンズのピント面とボケのグラデーションのこまやかさは、かなり高いランクに位置しています。また、画作りは全体的にクリアーでコントラストが高めなので、フワフワとしたハイキーな写真よりも、彩度高めで露出アンダー目な写真のほうが、ドラマティックなムードがぐっと上がって楽しいです。

ピント面のクリアーさが物語る高い描写性能

■撮影機材:Nikon Z 6II + MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
■撮影環境:絞りF2 1/200秒 ISO100 WB:自然光オート ピクチャーコントロール:ポートレート

 前ボケが綺麗なので、積極的にボカす被写体を探して撮影しました。物も光も大きくボカしながら、ピント面の被写体は、花びらの筋や蜘蛛の糸までクッキリと描き切る、高い描写性能を有しています。あってほしい性能を高い精度で実現した、まさにマクロレンズの最高峰と言えるレンズでしょう。

 

 

■モデル:山上ひかり

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

 

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