カールツァイス Zeiss Batis 1.8/85 レビュー|被写体を引き立てる柔らかなボケが魅力
はじめに
前回までは、広角・標準領域のバティスシリーズをレビューしてきましたが、今回はバティスシリーズ5本の中では、中望遠の画角になる85mmの「Zeiss Batis 1.8/85」の紹介になります。「Zeiss Batis 1.8/85」は、2015年8月に発売されたバティスシリーズの最初の2本のうちの1本です。中望遠の85mm単焦点レンズは人気のジャンルのレンズ。この「Zeiss Batis 1.8/85」もオートフォーカスで使え、手ブレ補正搭載のツアイス単焦点レンズとして魅力あるレンズの1本です。今回も様々なシーンを撮影してみました。
Zeiss Batis 1.8/85の魅力
「Zeiss Batis 1.8/85」の光学系はゾナータイプ。ソニーEマウント純正レンズの85mmとはスペック的には近いレンズですが、「Zeiss Batis 1.8/85」はツアイスレンズらしいナチュラルなボケの美しさと柔らかさを表現できるレンズです。焦点距離55mmにはなりますが、ソニーブランドのゾナータイプのツアイスレンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」も魅力あるレンズですので、少し一覧で比較してみました。ソニー純正のプレミアムレンズ”GMタイプ”では、中望遠の単焦点レンズは100mm、135mmしかありませんので、85mmの焦点距離では「Zeiss Batis 1.8/85」はその点を補完できる魅力あるレンズと言えます。
Batis 1.8/85 | FE 85mm F1.8 | Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA |
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焦点距離(mm) | 85mm | 85mm | 55mm |
画角(35mm判) | 29° | 29° | 43° |
開放絞り(F値) | F1.8 | F1.8 | F1.8 |
最小絞り(F値) | F22 | F22 | F22 |
レンズ構成 | 8群11枚 | 8群9枚 | 5群7枚 |
絞り羽根 (枚) | 9枚 | 9枚 | 9枚 |
最短撮影距離 (m) | 0.80m | 0.80m | 0.50m |
フィルター径(mm) | 67mm | 67mm | 49mm |
外形寸法 最大径x長さ(mm) |
92 x 92mm | 78 x 82mm | 64.4x 70.5mm |
質量 約 (g) | 452g | 371g | 281g |
焦点距離85mmの中望遠の効果と、絞り開放F1.8の効果が合わさってピントが合った後の自然なボケの表現が魅力的。絞り開放では全体的に柔らかな描写をするレンズですが、中心部はしっかりとした芯がありシャープ感があって柔らかなボケとシャープ差が両立しています。
F2.8など少し絞れば周辺部の光量落ちもほぼ解消され、このレンズの魅力がさらにアップします。もちろん大きく絞っても、被写体との距離にもよりますが自然なボケを演出できるレンズです。
「Zeiss Batis 1.8/85」は色味、ボケの表現などは申し分ないレンズなのですが、一つ気になる点があります。それは「糸巻き型収差」が大きくでることです。RAWで撮影していればRAW現像の際に、レンズのプロファイル補正を使用すれば「糸巻き型収差」も修正することができますが、JPEG撮って出しをする場合は「糸巻き型収差」が気になるところです。
直線基調の被写体をメインに撮影した時には、この歪みはかなり気になるレベルです。被写体にもよりますが、デジタルでの補正を使う前提で撮影をしないといけないかもしれません。
ツァイス Zeiss Zeiss Batis 1.8/85でお子様スナップ撮影
85mm単焦点レンズと言えば、やはりポートレート撮影用途をイメージする人が多いと思います。今回はお子様モデルさんで撮影をさせて頂きました。ピントが合った面のシャープさと、そこからの続く柔らかいボケは人物撮影にピッタリ。かわいいお子様の撮影にピッタリのレンズですね。
日中に絞り開放で撮影する場合は、カメラ側でシャッター速度の上限までいってしまうのは、さすが明るい単焦点レンズというところでしょうか。場合によってはNDフィルターなどを用意することも必要になってきます。ですが、絞り開放では周辺光量がやや落ちるので、空などの単調な背景の場合などは少し絞って撮影する方が良いでしょう。
ツァイス Zeiss Zeiss Batis 1.8/85で猫のいるイングリッシュガーデンでスナップ
「Zeiss Batis 1.8/85」を持って、猫がいるイングリッシュガーデンに撮影に行ってみました。撮影当日はあいにくの大雨でしたので、室内撮影がメインになってしまいましたが、開放F値1.8の単焦点レンズなので、少し暗めの室内撮影でも威力を発揮してくれました。
被写体にもよるかもしれませんが、後方の柔らかい自然なボケに対して、絞り開放では前ボケは少しだけうるさい感じを受けます。
狭い室内ですと、85mmの焦点距離は少し長すぎる感じもしますが、少し広い空間での撮影では、被写体とある程度距離を取ることで構えた写真になりにくく、猫の自然の表情が撮れるメリットがあります。
全体的に柔らかい表現ができるレンズなので、毛並みの柔らかさなどを表現できるペット撮影にもマッチするレンズではないでしょうか。
雨の野外撮影においても、「Zeiss Batis 1.8/85」は防塵防滴効果があるレンズなので撮影の際に安心感があり、撮影に集中することができます。色ノリの派手さは無く雨の日の撮影によく合った、しっかりと雨降りの空気感を表現してくれるレンズと感じました。
ツァイス Zeiss Zeiss Batis 1.8/85で街中スナップ撮影
85mmのレンズで街中スナップするのは少々焦点距離が長いのですが、気になったものを思い切って切り取る撮影ができます。下の写真は手前にあるチェーンの柵の前ボケ反射を狙って撮影し、写真にアクセント加えました。
遠景の描写も中心部から四隅までしっかりとキレのあるシャープさがあり、絞ることによって周辺光量不足も解消されます。
夜のスナップも開放F1.8の明るさがあるので、ISO感度を無理に上げなくても気軽にスナップ撮影ができるのもメリットです。
まとめ
「Zeiss Batis 1.8/85」は、とても魅力的な中望遠の単焦点レンズです。85mmという焦点距離は汎用性も高く、日常のシーンを少しアップで撮影するのに使いやすいレンズだと思います。今回「Zeiss Batis 1.8/85」で撮影して特に感じた事は、猫の毛並みの柔らかさ、子どもの肌の質感などの表現力が素晴らしく、ペットや人物を撮るのにとてもマッチしているレンズだと感じました。「Zeiss Batis 1.8/85」は、ズームレンズでは味わえないカールツァイス単焦点レンズならではの、ピント合焦部でキレのあるシャープさとその前後で柔らかなボケが両立するレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
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・カールツァイス Zeiss Batis 2/40 レビュー|シャープさと柔らかさが両立した標準レンズ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483904908/
・カールツァイス Zeiss Batis 2.8/18 レビュー|オールマイティーに使える超広角レンズ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483501133/
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https://www.kitamura.jp/shasha/zeiss/zeiss-batis-2-25-20210824/