カールツァイス ZEISS Batis 2.8/135 レビュー|撮影者のイメージを引き出す魅惑のレンズ
はじめに
バティスシリーズのレビューも広角~標準、そして望遠と今回で5本目の最後となりました。「ZEISS Batis 2.8/135」は2017年5月に発売され、カールツァイスではシリーズ4本目になるバティスです。135mmの焦点距離はポートレート撮影などに多く使われるレンズですが、ポートレート以外にも中望遠でのボケを活かした撮影にも幅広く使えるレンズです。
今回は、人物・動物・スナップの3つのシーンを撮影し、「Batis 2.8/135」の魅力をお伝えしたいと思います。
Zeiss Batis 2.8/135の魅力
Batis 2.8/135 | FE 135mm F1.8 GM | |
焦点距離 | 135mm | 135mm |
画角(35mm判) | 18° | 18° |
開放絞り(F値) | F2.8 | F1.8 |
最小絞り(F値) | F22 | F22 |
レンズ構成 | 11群14枚 | 10群13枚 |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 11枚 |
最短撮影距離 | 0.87m | 0.7m |
フィルター径 | 67mm | 82mm |
外形寸法(最大径x長さ) | 98 x 120mm | 89.5 x 127mm |
質量 | 約614g | 約950g |
「Batis 2.8/135」の光学系はアポゾナー設計。高次元の色収差補正により、非常に高性能な中望遠レンズに仕上がっています。また、撮影時のブレを防ぐための光学式手ブレ補正機構も搭載しており、様々なシーンの撮影に安心感をもたらします。
F値こそ変わってきますが、ソニーEマウント純正G Masterレンズ「E 135mm F1.8 GM」とは価格ラインも近く、135mmの単焦点を購入する際には悩むところです。
バティスシリーズの中では一番長い135mmの焦点距離。開放F値はF2.8と若干平凡な値ではありますが、レンズ自体の重量も614gと抑えられており、非常に扱いやすい筐体になっています。
望遠効果と絞り開放F2.8の効果が合わさって、ピントが合った後の自然なボケの表現がとても魅力的。「Batis 1.8/85」と同様に、絞り開放では全体的に柔らかな描写をするレンズですが、中心部にはシャープ感があり柔らかなボケとシャープ差が両立しています。
「Batis 2.8/135」も「Batis 1.8/85」と同様に「糸巻き型収差」が出ます。RAWで撮影していればRAW現像の際に、レンズのプロファイル補正を使用すれば糸巻き型収差も修正することができますが、JPEG撮って出しをする場合は糸巻き型収差が気になるところです。
上の様な写真をあえて撮ることは無いと思いますが、構図の隅に直線的なものが入るような撮影する際に、こういう傾向があると認識しておいて損はないと思います。
直線基調の被写体も、少し内側寄りに配置する構図にすると糸巻き型収差は目立ちにくくなります。
焦点距離こそ違いますが、写りの質は「Batis 1.8/85」と非常に似通っており、派手さが抑えられた鮮やかな発色と柔らかさを写す事ができ、カールツァイスらしさが非常によく現れているレンズです。
Zeiss Batis 2.8/135でポートレート撮影
「Batis 2.8/135」が魅力を一番発揮するのが人物撮影です。「Batis 2.8/135」は、カメラにレンズを装着しファインダーを覗いたときから、何か素敵な写真が撮れる事を感じさせてくれます。撮影していてワクワク感が止まらず、とにかくシャッターを切りまくる感じになっていました。ファインダー越しからでも分かる、ピントを合わせたところのシャープ感とそれ以外の和らかなボケ感が両立し、被写体を一層引き立ててくれます。
フルサイズ135mmという焦点距離は、APS-Cで使用すれば焦点距離約200mm相当の画角になり、フルサイズの高画素機で使用すれば、135mmと200mmの焦点距離を楽しむことができます。今回は撮影できませんでしたが、室内スポーツなどにも「Batis 2.8/135」をAPS-Cモード焦点距離200mmで使用する事もできるのではないかと思います。
Zeiss Batis 2.8/135でお子様スナップ撮影
大人の被写体を撮るのより難しいのが小さいお子さん。動き回る元気なお子さんを撮影するには、やっぱりカメラの性能が左右する部分も出てきます。「Batis 2.8/135」は瞳オートフォーカスにもしっかりと対応し、AF精度も高いので、カメラの性能を存分に活用できる力強いレンズです。
背景にあるイチョウの木からの木漏れ日の柔らかいボケが、被写体であるお子さんを柔らかく包み込むような表現をしてくれました。この一枚が撮れるだけでも所有したくなるレンズです。
焦点距離135mmで屋外にてお子様を撮る場合、丁度いい感じの距離感がありお子様もカメラを向けられた時の緊張感も和らぎ撮影もしやすくなります。
「Batis 2.8/135」の最短撮影距離は0.87mと決して短くはありませんが、十分にアップで撮影する事もできます。
Zeiss Batis 2.8/135で動物園撮影
動物園でのフェンスやガラス越しの撮影において、135mmの望遠効果+絞り開放F2.8効果で、フェンスやガラスの存在を薄くすることができます。上の写真の鳥の写真はガラス越し、ワオキツネザルの写真はフェンス越しに撮影したものになります。
カワウソなどの動物の速い動きにも、AF-C(コンティニュアンスAF)でしっかりとオートフォーカスが追随し、カールツァイスのレンズでありながらオートフォーカスが使える魅力を大きく感じます。
Zeiss Batis 2.8/135でスナップ撮影
さすがに中望遠「Batis 2.8/135」だけ一本持って街角スナップ撮影は難易度が高いですが、思い切って被写体を大胆にキリトルのは、撮影者の腕を試されるような感じです。たまにはそんな撮影も面白く、試行錯誤しながら撮影を楽しむことができました。
まとめ
「Zeiss Batis 2.8/135」は、バティスシリーズの中でも魅力的なレンズです。135mmという焦点距離は、日常的に使うには少し焦点距離が長く難しいかもしれませんが、人物撮影においては距離感、描写性、柔らかさ、味わいのどれにおいても撮影者のイメージを写真に表現してくれるレンズではないでしょうか。
今回のレビューでバティスシリーズも最後ですが、5本のバティスレンズを使って日常的な使いやすさは「Batis 2/25」がナンバー1でした。しかし、一番使いたい魅力的なレンズはと問われると、この「Batis 2.8/135」がナンバー1です。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。