カールツァイス Zeiss Touit 2.8/12 レビュー|APS-C超広角レンズの本命
はじめに
今回のレンズレビューは、APS-C用のツアイスレンズ「ZEISS Touit 2.8/12」です。Touit(トゥイート)は、APS-C専用のツアイスレンズとして、ソニーEマウント・フジXマウントで12mm、32mm、50mmマクロの3種類の単焦点がラインナップされています。
Eマウント仕様とXマウント仕様では絞りリングの有無の違いがありますが、今回はソニーEマウント仕様の「ZEISS Touit 2.8/12」で実際に撮影した作例を紹介し、その魅力をお伝えいたします。
ツァイス Zeiss Touit 2.8/12の魅力
ZEISS Touit レンズは、SONY「α」EマウントシリーズのAPS-Cカメラ、およびFUJIFILM Xシリーズ向けに特別に設計と構築が行われています。
ソニーEマウント仕様の「ZEISS Touit 2.8/12」の魅力は、純正レンズではラインナップの無い超広角単焦点ということです。このレンズの最大の特長は、実際に撮影してみると驚くくらい直線が綺麗に写ること。ビル群などで見上げて写真を撮ってみても、ディストーションがなく気持ち良いくらいにストレートな描写をするレンズです。
そしてカールツァイスT*反射防止コーティングにより、様々な光の状態でも素晴らしい描写をしてくれるレンズになっています。超広角レンズゆえの画角の広さから太陽が直接構図内に入ってきて、ゴースト・フレアが発生しやすいシーンも多くなってきますが、カールツァイスT*反射防止コーティングのおかげもありゴースト・フレアがよく抑えられています。
以前にレビューしたフルサイズ用の超広角レンズ「Zeiss Batis 2.8/18」と、描写される色ノリ・シャープ感を含めレンズの性格は同じ印象です。レンズの名称はTouitですが、レンズを正面から見てみると「Distagon」と表記されています。これも「Zeiss Batis 2.8/18」と同様で、ディスタゴンタイプのレンズです。
■参考:カールツァイス Zeiss Batis 2.8/18 レビュー|オールマイティーに使える超広角レンズ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483501133/
Touit 2.8/12 | |
焦点距離 | 12mm |
35mm判換算 | 18mm |
画角(35mm判) | 99° |
開放絞り(F値) | F2.8 |
最小絞り(F値) | F22 |
レンズ構成 | 8群11枚 |
絞り羽根 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.18m |
フィルター径 | 67mm |
外形寸法 最大径x長さ | 88 x 81mm |
質量 | 約260g(ソニーE) |
「ZEISS Touit 2.8/12」は発色、解像度、ボケのどれをとってもレベルは高く、歪みも少なく、最短撮影距離が短い寄れるレンズなので使い勝手はとても良いです。
あえてこのレンズの不満点を挙げるとすれば、使わないときにレンズフードを逆向きにして収納すると、大きめの花形フードとカメラのグリップ部分との隙間を圧迫してしまい、カメラグリップを握り込む事ができなくなってしまう事です。花形フードの長い部分が上部にくるように収納できればいいのですが、残念ながらできません。
このレンズをα6000系に装着している時は、収納向きの装着は諦めて、レンズフードは常に正常な方向で装着しておくのが良いでしょう。
ツァイス ZEISS Touit 2.8/12 で街中散策スナップ
「ZEISS Touit 2.8/12」を持って街中スナップをしてきました。35mm換算で焦点距離18mmという画角は都会のビル群などを撮るのにマッチしています。特にディストーションが見られない非常にシャープな描写をするレンズですので、直線的なビル群を被写体として撮影すると気持ちの良い描写をします。
全体的にコントラストも高く、非常に濃厚な色ノリをしています。
周辺部まで非常にシャープで歪みのない描写なので、建物などを含む風景・スナップ撮影には使いやすいレンズです。
超広角レンズは寄って撮影すると、パースペクティブ効果を楽しむ事ができるレンズなので、積極的に被写体に寄って撮影をしたくなります。
また室内での撮影において、超広角レンズは大きな威力を発揮します。標準レンズの画角では表現しきれない領域を写し込む事ができます。建築物などをよく撮影する方、旅行などのおともに是非持っておきたい画角のレンズです。
ツァイス Zeiss Touit 2.8/12で風景撮影
仕事で移動途中に「ZEISS Touit 2.8/12」を使って撮影してみました。普段フルサイズ機をメインに使っているので、あらためてAPS-C機とAPS-C専用レンズの組み合わせはとても軽くて快適だと感じました。重量が軽いのもメリットですが、フルサイズ機に比べ全体的に小さいので、小さなバックに忍ばせる事もできるのがとても快適です。
高速道路で名古屋方面に移動途中、富士山が綺麗に見えたので途中でICを降り、富士山撮影の定番スポットの薩埵峠(さったとうげ)、三保松原に寄ってみました。さすが定番の撮影スポット、現地に到着した際は駐車場に入るのに15分程待機するような状態でした。
「ZEISS Touit 2.8/12」の絞り羽根枚数は9枚なので光芒の線は倍数18本。太陽が構図に直接入ってくるシーンですが、フレア・ゴーストは非常に抑えられています。
さらに寄り道をして愛知県豊川市の豊川稲荷に立ち寄ってみました。寄り道をしすぎて到着したのは17時。辺りもだいぶんと暗い状態でしたが、単焦点レンズの明るさを活かして少し撮影してみました。
薄暗くてコントラストが低い状態でしたのでオートフォーカスも少し迷うシーンもありましたが、特に問題なく撮影できました。この辺りの問題はボディの性能によるものが大きいと思います。今回使用したカメラはボディ内手ブレ補正が無いα6400なので、低速シャッターでの手ブレが少々心配でしたが、ホールディングしやすいレンズの形状のおかげもあって、低速シャッターでも手ブレはほとんどありませんでした。
仕事が終わった後日、朝の河川敷公園を「ZEISS Touit 2.8/12」を持って散策。水滴の付いた枝と葉の隙間から現れる光芒を狙って撮影してみました。
超広角レンズの特長を活かして、ローアングルからの撮影。
高く伸びた竹が気持ちよくストレートに描写されています。
「ZEISS Touit 2.8/12」は超広角レンズですが、絞りを開放でメインの被写体に寄った状態で撮影すれば、適度なボケも演出できます。
まとめ
「ZEISS Touit 2.8/12」はAPS-C機のサイズにピッタリのAPS-C専用設計のレンズなので、レンズを装着した際のまとまり・バランスが非常に良い感じになっています。トータルの重量もフルサイズ規格のレンズよりも軽いので、旅行や長時間の撮影や気軽なスナップ撮影に常時携帯したいレンズの一本です。
「ZEISS Touit 2.8/12」ならではのZEISS「T*コーティング」による、クリアな描写と被写体を繊細に捉える描写力。EマウントAPS-C規格の純正レンズ(単焦点レンズ)でラインナップしていない焦点距離なので、APS-Cのαユーザーにとっては是非使ってみたいレンズだと思います。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。