修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2008.02.27
同僚愛用の写真機が不具合だと助けを求めてきた。シャッターが切れないという。
専門外のコンタックスRTSであった。端から見ると何でも直せるとの誤解がある。
本体単独では作動する。暫く、手元に置くが原因が不明で返すことにした。
所がレンズを付けると作動しないと、再度の持ち込みとなる。
観察するとシャッターミラーは実線位置にある。之が正常な位置なのか?
シャッターミラーを跳ね上げるとおかしな事に気付いたのである。シャッターミラーが取り付けてある部品をチリトリと呼ぶ。チリトリに似ているからであるが、チリトリの端、実線から点線部迄シャッターミラーがズレ落ち、黄色○部に接着剤の痕跡が確認できた。
レンズの底部にぶつかり破損を招きかねない。
修理部時代は、全量京セラ依頼であるため、始めて目にする現象である。
???が頭を駆けめぐり、何故なのかの疑問でもある。長い職歴の中でシャッターミラーズレの経験は無い。剥離は経験済みだ。
レンズクリナーで拭くと黒い汚れになるが、あまり効果が無い。イソピルアルコールで拭くと良く落ちる。根気よくイソピルアルコールを隙間に流し込み、薄いヘラを差し込むと隙間が大きくなる。更にイソピルアルコールを注しながら慎重に作業を進めると剥がれた。
剥がしたシャッターミラーには、二条の両面テープで止めた痕跡がある。
両面テープの接着力が無くなり、粘性が増し、シャッターミラーの僅かな重さでズレたものと考える。触ると気持ちの悪いネバネバだ!!調べてみると、両面テープはアクリル系粘着剤で不織布を挟んでいる。製品試験では、トルエンに弱いようである。
イソピルアルコールでシャッターミラーとチリトリを清掃する。
何でこの様な仕様にしたのか理解できない。外したシャッターミラーは、エポキシ接着剤で取り付ける。
ジャンクのFX-3を思いだし、確認すると同じ現象が起きていた。剥離すると両面テープが使用してある。
ブログ「接着の剥離」で紹介した「トコトンやさしい接着の本」を開いたら「はく離エネルギー」の項があり、計算式が乗っていた。難しい計算は不得意だ。それ にしても、僅かなシャッターミラーの重ささえも支えられないのは如何なものと考える。それとも、シャッターミラーが跳ね上がったり、戻ったりした時の遠心力が原因か?
検索エンジンで「コンタックスミラーずれ」を入力するとコンタックスの持病として知られた現象のようだ。
「CONTAXのミラーは,接着剤でフレームにとりつけてあります.長年の使用により,これがボディー前面側にずれている場合があります.最悪の場合,ミラーがレンズに干渉します.テッサー45mmF2.8を取りつけて無限大にしたときにミラーが干渉するようなら話になりません 」と、あった。
修理可能機種を同現象で依頼しても、仕様が替わらなければ、又、起きるかと思うと吐息がでる。同僚の愛機は、同現象で修理をしていると言う。「歴史は繰り返す」と、又起きた。
日本橋店中古売場 田口由明
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