修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2008.09.17
過去記事「婿殿(中村主水)不足の対処方」で書きましたペンタプリズムの交換は何とかこなすことが出来ますが、専門外の機種の入院です。
3本のネジを外すと巻き上げ部組み品が分離できる。
軽量化の為に素材の軽薄が見られます。
巻き上げレバー戻りの際の緩衝剤としてポリウレタン?が使用されているようです。
このポリウレタンはヤシカエレクトロ35にも使用され、経年劣化により損傷します。
筒状ポリウレタンの入手は出来ませんで、ズームレンズに使用してありますコロを加工しまして緩衝剤と致しました。
クション(ポリウレタン)が破損しますと制限盤が赤点線を越え、クション止めネジに直接当たりますので、衝撃音が大きくなると推測します。実用には問題が無いと思います。
巻き上げるとカム爪がカム歯車に咬合し、次々に動力が伝わりフィルムを送ったり、シャッターをセットします。
当初、二重巻き上げになるのはクションの損傷による制限盤のズレ量と考えました。
しかし、代用素材で補修したにも関わらず二重巻き上げは改善されませんでした。
原因が解りませんので、他のOM-1の巻き上げ部組み品を仮移植しました。
当然、クションは破損をしていますが、二重巻き上げにはなりませんでした。
そこで、両者の巻き上げ部組み品を比べて見ます。
比べた結果、カム爪がカム歯車に咬合する動作が緩慢であり、脚気の病に冒されたのです。
即ち、カム爪がカム歯車に瞬時に交合せず、カム歯車の山を幾つか越えてから交合します。
飛び越えてしまった角度だけ送り量の不足が原因となるのです。
脚気検査を受けたことがありますでしょうか?
足を組み、膝蓋腱を医師が木槌の様な器具で叩くと、足がピ~ンと跳ね上がるか?跳ね上がらないかで脚気の診断をします。
では、ビタミンB1を与えればとなりますが、OM-1には効果がありません。
巻き上げ部組み品をAベンジンの中で洗浄し、組み込みましたら二重巻き上げが完治したのです。
推測の域を出ませんが、クションの破片が悪さをしたものと思います。
因みにポリウレタンの経年劣化の原因は、加水分解とのことです。
ポリウレタン弾性繊維「スパンデックス」は衣料品にも多く使われています。
その性質はと言いますと、下記にてお勉強下さいませ。
http://sentaku-shiminuki.com/seni/gouseiseni-2.html
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