日常風景ウォッチング
今まで見えなかったものに気がついた時の
「目からウロコが落ちる瞬間」がたまらないんですよ。

 こんな感じで京都を手始めに路上観察活動を始めたんですが、全国をいろいろ回ってみても、路上物件の質ということでいえば、はっきりと色分けされた地域性っていうのは意外と見られないんですよ。ただ、その場所ならではの特徴的な光景というのが時々あって、例えば四国の香川県ではとにかく瓦屋根が多いんです。ものすごく手の込んだ鬼瓦なんかが各家の屋根にあって、よく目立つんですよね。また山形の銀山温泉の方では戸袋に屋号や住んでいる人の名前が彫っているところが多くてね。最初にどこかの家が始めたのを他の家の人が見て、「じゃあウチも」って感じて広まったんじゃないかなぁ。

 あとは埼玉でよく見かけた擬木ね。よく公園なんかに擬木ってあるでしょう。あれで見映えのいい門柱なんかを作っているんですよ。それまで僕らは擬木ってものは、「本物の木を使えないから作り物で済ませてる」って感じである意味でバカにしていたんですが、これだけ立派にやられちゃったら認めざるを得ないと思いましたよ。中には木の皮がはがれたような質感をきれいに細工していたり、わざわざ板の形に作っているものなんかもあって、こうなるともう、芸術の域ですよ。ポップアートの世界ですね(笑)。


『三日月湯』豪華絢爛なしっくい細工でできた銭湯の戸袋。その後「三日月湯」は跡形もなく整地され、路上伝説に語り継がれる存在となってしまった。香川県の土庄町にて。

『大福湯』左の「三日月湯」からほど近い、こちらは今も現役の「大福湯」。明治初年の建造物で、ゆうに一世紀を越える、おそらく我が国最古の銭湯。香川県の土庄町にて。