モチーフに対する視点の違いが、撮影者の個性となる。


●花といえば、今年も「全国春の花フォトコンテスト」の審査を先生にお願いするのですが、毎年審査をされていてお感じになることや、応募者へのアドバイスなどがありましたらお聞かせください。

 毎回バリエーションに富んだ花々に出逢えるので、見ていて楽しく選び甲斐のあるコンテストだし、作品レベルもかなり高いと思います。花を撮るといっても、ただ優しく可愛らしく写しただけでは物足りません。ダイナミックでスケール感のある作品を、私はいつも期待しているんです。そして技術的に巧いだけでなく、見ていて内容的な奥行きが感じられる写真。「自分もその場所へ行って、その花が撮りたい」という思いをかき立ててくれるような作品に、私は魅力を感じますね。

キューガーデンのシャクナゲ(英国)。曇りの日に撮影。
■カメラ:ペンタックス645 レンズ:300mm 絞り:f16 AE フィルム:ベルビア 5月

 技術的なことでまず言えるのは、「緻密に撮っていただきたい」ということ。例えば「三脚を使う」「粒子の細かいフィルムを選ぶ」といった基本的なことがしっかりできているかどうか。さらにモチーフが桜だったら、花びら一枚一枚の色合いを引き立てるために、バックには山影など少し暗めのものを持ってきたり、あと光線にしても淡い光を選ぶと良いでしょう。また足下に咲く草花を撮るのなら、できるだけ低い位置からとらえることによって、撮る人の「優しい目線」というものが表現できると思います。

ペリー桜。岡でゆれるのを待って撮った。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:フジノンT400mm 絞り:f32 シャッタースピード:1秒 フィルム:ベルビア
撮影地:長野県清内路村 5月
 いずれにしても、モチーフである花に対する撮影者の視点の違いがそれぞれの個性となってゆくのですから、先ほども言ったように「自分らしさを被写体の中にしっかりと映し出す」ことが大切だし、今回もそうした作品が多く集まることを願いたいと思います。

●どうもありがとうございました。



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