フォトワールド

「折り紙」を撮る

一枚の紙に命を与え、豊かな心のふれあいを表現したい。

末廣和子氏〈写真家〉 

折り紙「鶴」 鶴の素材は透明なポリエチレン、バックには白黒模様の化繊のマフラーを使用。
照明の角度で夢幻の妙を表現。

■カメラ:ペンタックスLX レンズ:マクロ100mm 絞り:f32 AEマイナス1/2 補正 フィルム:コニカLV200 PLフィルター・偏光板・カラー用ブルーランプ使用

 私たちにも子供の頃から馴染みの深い、日本の伝統文化のひとつである「折り紙」。一枚の紙が様々な形に変化した姿には造形的な美しさが感じられるが、その折り紙の面白さをカメラのファインダーを通してとらえることにより、独自の写真作品を創り出しておられるのが、今回ご紹介する末廣和子氏だ。

 もともと大学の教授をされていた末廣氏が、写真自体を始められたのはすでに60才の頃。還暦を迎えた時に、息子さんからカメラをプレゼントされたのがきっかけだという。

折り紙「ネズミ」 ガラスの小皿の水に、花形ロウソクを浮かべて点灯。ネズミが明かりに誘われて…という設定。特に折り紙ネズミのラインライトと質感に注意した。

■カメラ:ペンタックスLX レンズ:マクロ100mm 絞り:f32 AEマイナス1/4補正 フィルム:コニカLV200 カラー用ブルーランプ使用

 「写真家の上野千鶴子先生が講師を勤める写真教室に通った後で、毎年の干支の玩具を撮影して作った年賀状を差し上げていたところ、それをご覧になった先生が個展の開催を勧めてくださったんです」と語る末廣氏。老後の趣味にと写真を始められる方は多いが、60才からのスタートで写真展を開くまでになられたというお話には、感嘆せざるを得ない。そしてその個展で末廣氏の作品を見た方から思いがけなく「被写体の干支玩具も自分で作られたのですか?」と尋ねられたことから、何か自作のものを撮ってみたいと考え、思い当たったモチーフが“折り紙”だったという。

 被写体としての折り紙の魅力は何かとお尋ねすると、「紙の重なりや折り目と光とが醸し出す面白さ、つまりラインライトがくっきりと浮かび上がった様の美しさ」だと末廣氏は答える。材料となる紙もごく一般に市販されているものだが、和紙だとか洋紙だとかの素材によってそれぞれ違った質感をもち、「写真に撮っても“柔らかさの出る紙”“冷たさの出る紙”といった特徴が表現できて、大変味わい深いんです」と語る末廣氏。また時にはビニールやセロハンのような素材によって透明感を出したり、トレーシングペーパーを用いて光の出方に独特の効果を施したりと、素材選びや作品創りには、常に独自の工夫やアイデアを取り入れているという。

折り紙「馬」 馬の姿が洋風なので、あえて幻想的な世界を狙った。雪景色のセッティングは綿を白ジョーゼットの布で包み、背景の木は花束の包装紙を利用。

■カメラ:ペンタックスLX レンズ:マクロ100mm 絞り:f32 AEプラス1/2 補正 フィルム:コニカLV200 カラー用ブルーランプ使用