日常風景ウォッチング
申し訳ないけれど「路上観察」って、
人の家の裏を覗いて歩くようなモノですよね。

 我々が路上観察活動をしていて、その地方では当たり前の光景なんかを珍しそうに撮影したりしていると、たいてい地元の人たちからはいぶかしげな目で見られますね。藤森さんなんかはそれでも臆せずガンガン行く人ですから、人の家なんかにも入っていって、犬に吠えられたりしてますけど(笑)。

 私なんかは、人に見つかると慌てて取り繕ってしまったりするんですよ。「あ、ちょっと取材で…」とか言って逃げてしまう(笑)。そんなもっともらしいコトを言うと、かえって怪しまれるんですよね。そのへんを藤森さんは心得ていて、「いやぁ、こういう古い建物を見るのが好きで、写真を撮っているんですよ」って正直に言うのが一番いいって。すると相手も「実はこの家は先代からの由緒ある云々…」なんて長い話が始まってしまって、閉口する場合もあるようですけど(笑)。


『洋裁学校』埼玉の古い民家・商家は、和風でも洋風でもそれなりに路上的な味わいを出している。この洋裁学校も堂々たるものだね。埼玉県知事公認!埼玉県の秩父にて。

『待ち構えるライオン』いつもは門番のライオンである。時にはドアから出てくる人をビックリさせることもある。香川県の高松にて。

『立体派の塀』直角のブロックに斜めの坂道。角と角とが合わなくなり、ブロックを切って合わせたら、とんがって船の舳先みたいになった。屋敷がこれから船出するみたいだ。香川県の豊浜町にて。

 申し訳ないけれども我々のやっている路上観察って、ある意味では人の家の裏口を覗いて歩いているようなモノでしょう。本来、その家の人が見せたいと思っている立派に飾り立てた玄関なんかは、逆に我々にとっては全く興味がわかないんです。それよりむしろ、玄関の脇の所がちょっとほころびていたりする方が、我々には面白いんですよ。持ち主にとってはあまり見られたくない場所とか物っていうのが、目立たないところにひっそりとあったりするのがいいんです。