田中達也先生が撮影した「自然の色彩美」


四季折々の表情の中に、豊かな色彩を見せてくれる自然の美。草花から天体まであらゆる自然の姿に目を向け、独自の視点と感性でとらえ続ける写真家・田中達也先生に、様々な自然がもつ色彩美の魅力を、ご自身の作品で紹介していただきました。


初夏の湿地帯にはシダ類をはじめ多くの草花が群生する。色鮮やかな緑葉の群れと湖沼を組合せ、画面構成した。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF28〜70mm F2.8L 絞り:f16 AEマイナス1/2 補正 フィルム:ベルビア PLフィルター・三脚使用 撮影地:北海道上川町

山肌を飲み込むように襲いかかる雲。夜間、低空に滞留した雲が上昇気流に乗って一気に舞い上がる場面を高所より撮影した。この動きは連写も追いつかない程の速さである。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF35〜350mm F3.5〜5.6L 絞り:f14 AEマイナス1/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:群馬県六合村
火山の噴煙による影響で大気層が汚染されたために起きた深紅に染まる夕焼け。そこに浮かぶ「月齢1」の極細の月。二度と撮影できない組合せかも知れない。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF500mm F4.5L 絞り:f4.5 AEマイナス1/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:ハワイ島

話題を集めた巨大彗星ヘール・ボップ。青と白のV字型に伸びる尾が印象的だった。星の動きを追尾する赤道儀による撮影のため、長時間露出でも星は点像に写っている。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF300mm F2.8L 絞り:f2.8 シャッタースピード:バルブ6分 フィルム:プロビア100 プラス1増感 赤道儀使用 撮影地:長野県根羽村


暖冬といえども気温はマイナス30度。極北の夜空を舞うオーロラは、何時どんな形で現れるか予測が難しい。この日は7時間待機してエメラルドグリーンの彩りが現れた。
■カメラ:キヤノンT90 レンズ:FD20mm F2.8L 絞り:f2.8 シャッタースピード:30秒 フィルム:プロビア1600 三脚使用 撮影地:アラスカ・チェナホットスプリング
日没直後の東の空は、薄い紫色から群青色の闇に包まれていく。白樺の木立は残照を受け浮き上がり、背後には昇り始めた月が丸い光を放っている。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF28〜80mm F2.8 〜4L 絞り:f5.6 AEプラス2/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:岐阜県高根村

微風もなく静まり返った大正池の辺には、朽ち果てた枯木が水面から伸びている。その木肌の質感と周辺の湿っぽい朝の空気感を再現してみた。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF80〜200mm F2.8L 絞り:f11 AEマイナス1/3 補正 フィルム:ベルビア PLフィルター・三脚使用 撮影地:長野県上高地

どんよりした空模様が一日中続いた夕暮れ。薄くなった雲の切れ間から、日没直前の太陽が顔を出した。黒い薄雲と太陽の組合せは、どこか渋く憂鬱な気配を漂わせる。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF600mm F4L プラス2×エクステンダー 絞り:f11 AEマイナス2/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:長野県南木曾町


沖縄で撮影した海上の夕焼け。水平線上に漂う積雲は、南国の空模様である。そして天空にかけての彩り豊かな諧調は、何層にも区切られた雲の演出によるものである。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF35〜350mm F3.5〜5.6L 絞り:f11 AE フィルム:プロビア100 三脚使用 撮影地:沖縄県読谷村

シダの群生美を広角ズームで狙った。縦位置構図でバックにある白樺林を入れ、前景から遠景にかけて広がる奥行感を強調した。BR> ■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF20〜35mm F2.8L 絞り:f11 AEマイナス2/3 補正 フィルム:ベルビア PLフィルター・三脚使用 撮影地:長野県志賀高原

夜明けの空高く昇ったヘール・ボップ彗星。肉眼で見た印象に近づけるため、広角レンズで狙った星空風景である。山並がブレているのは追尾撮影のためである。BR> ■カメラ:ペンタックス67 レンズ: SMCペンタックス67 75mm F4.5 絞り:f4.5 シャッタースピード:バルブ30秒 フィルム:プロビア1600 赤道儀使用 撮影地:長野県平谷村

自然を撮るなら環境や近隣への配慮を忘れずに
−−田中達也先生からアマチュアカメラマンの皆さんへのお願い−−
自然を撮影する中で最近しばしば目にするのが、他人の土地に平気で踏み込んだり、朝早くから民家の軒先へ行って勝手に撮影を始めたりするカメラマンです。また、撮影中にフィルムのパッケージなどを地面に投げ捨てて、そのまま帰ってしまうカメラマンも見かけます。こうした人たちの存在は、自然やその土地の方々にとって、ひとつの公害といっても過言ではありません。だから皆さんも自然をモチーフに写真を撮られるなら、最低限のマナーやモラルをもって、環境の保護や近隣への配慮を心がけていただきたいと思います。


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