「最適な露出」を心がけ、「色」と「形」を調和させる。



落下する滝の清涼感を表現するために、前景に緑の枝を配し、滝と正面から向かい合うポジションを選んだ。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF35〜350mm F3.5〜5.6L 絞り:f11 AEプラス2/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:熊本県泉村



朝夕の空色は、大気の澄み具合や雲の種類によって、無限の彩を披露する。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF300mm F2.8L プラス1.4 ×エクステンダー 絞り:f8 AEマイナス2/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:長野県志賀高原



朝靄のかかる落葉松林の上空に、細くなった月が昇る。パープル色に染まる夜明けの空気が、夢心地のようなイメージを見せてくれる。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF80〜200mm F2.8L 絞り:f5.6 AEプラス2/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:長野県平谷村
●オリジナリティのある表現をするには、技術的にはどのような事がポイントとなるのでしょうか?

 露出ひとつをとっても、カメラをAEにしておけば、撮影者が決めたシーンに対して「適正な露出」というものを自動的に割り出してくれますよね。しかしカメラが検出した露出通りに撮っていれば、必ず良い作品になるとは限らない。それはカメラの露出計の基準によるものであって、自分がその表現において欲しいと思った露出は、必ずしもそれとは一致しないからです。

 表現上、極端に明るい画面や暗い画面にしたいような時など、「適正な露出」に大幅な補正を加えたとしても、撮影意図にその露出がマッチしていれば、それは自分にとって「最適な露出」なんです。だから私は、常に「適正な露出」ではなく「最適な露出」を心がけているんですよ。

 また、フレーミングにおいては「形のバランス」と「色のバランス」というものを、私はポイントとしているんです。形だけに着目して表現しようとすると、色のバランスがくずれてしまう。

 それはアマチュアの皆さんが犯しやすいミスでもあるんです。樹の形としてはベストな角度を見つけたとしても、その背景に不似合いな色が存在したら、総合的にはいい作品とはなりませんよね。であれば、ちょっとだけ角度をズラして、そのバックの色が目立たない位置に外した方がいい。しかし今度は樹の形がくずれてしまう。ここでどのように折り合いをつけて色と形とを調和させるか、それが最適なアングルを決めるということなんです。

 だから素材の形としては平凡でも、色が良ければ色をメインに表現し、「何の変哲もない素材がこんなに美しく見える」という部分を引き出してやることもできるんです。結局、その被写体において色と形、どちらを強調すべきかという事が決め手になるんですが、それはその時々でも違うはずだし、撮影者の意図によっても違う。洋服のコーディネートと同じで、色や形のバランスを感覚的に判断してまとめ上げる作業ですから、それはなかなか理屈で人に教えられない部分ですね。

●その感覚の違いが、撮影者の個性として表現されるのですね。

その通りです。だからたまたま私は写真という手法を用いているだけで、そこに表現されているのは「自分の視点や感覚」なんです。先ほども言ったように、写真というものはきっちりと決まった撮り方をしないといけないものではありません。

 たとえ写真教室の先生に「こう撮りなさい」と言われても、自分は別の撮り方がいいと思ったら、そのように撮ればいいんです。そういう人は、やはりオリジナリティのある作品を残せるし、伸びてゆくでしょう。「表現力」というのは、そうしたことが基本になっていると思うんです。

●どうもありがとうございました。


雲間から覗く夕日をバックに、枝先に止まる川鵜を超望遠で狙う。鳥のポーズによって絵柄の善し悪しが決まるのも「影絵表現」ならではである。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF600mm F4L プラス1.4 ×エクステンダー 絞り:f5.6 AEマイナス1/3 補正 フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:愛知県美浜町

早朝、山の稜線から沸き上がる雲を逆光で狙う。朝の光を浴びて透過する雲の繊細なディテールが美しい。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF500mm F4.5L シャッタースピード:1/500 AE フィルム:ベルビア 三脚使用 撮影地:長野県上宝村

生い茂る緑の木々と水の流れ。こうした場面では作画意図を明確にしないと曖昧になる。ここでの主役はあくまでも木々の重なり、流れは動感を醸し出す脇役である。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF35〜350mm F3.5〜5.6L 絞り:f16 AEマイナス2/3 補正 フィルム:ベルビア PLフィルター・三脚使用 撮影地:青森県奥入瀬渓流村


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