●オリジナリティのある表現をするには、技術的にはどのような事がポイントとなるのでしょうか?
露出ひとつをとっても、カメラをAEにしておけば、撮影者が決めたシーンに対して「適正な露出」というものを自動的に割り出してくれますよね。しかしカメラが検出した露出通りに撮っていれば、必ず良い作品になるとは限らない。それはカメラの露出計の基準によるものであって、自分がその表現において欲しいと思った露出は、必ずしもそれとは一致しないからです。
表現上、極端に明るい画面や暗い画面にしたいような時など、「適正な露出」に大幅な補正を加えたとしても、撮影意図にその露出がマッチしていれば、それは自分にとって「最適な露出」なんです。だから私は、常に「適正な露出」ではなく「最適な露出」を心がけているんですよ。
また、フレーミングにおいては「形のバランス」と「色のバランス」というものを、私はポイントとしているんです。形だけに着目して表現しようとすると、色のバランスがくずれてしまう。
それはアマチュアの皆さんが犯しやすいミスでもあるんです。樹の形としてはベストな角度を見つけたとしても、その背景に不似合いな色が存在したら、総合的にはいい作品とはなりませんよね。であれば、ちょっとだけ角度をズラして、そのバックの色が目立たない位置に外した方がいい。しかし今度は樹の形がくずれてしまう。ここでどのように折り合いをつけて色と形とを調和させるか、それが最適なアングルを決めるということなんです。
だから素材の形としては平凡でも、色が良ければ色をメインに表現し、「何の変哲もない素材がこんなに美しく見える」という部分を引き出してやることもできるんです。結局、その被写体において色と形、どちらを強調すべきかという事が決め手になるんですが、それはその時々でも違うはずだし、撮影者の意図によっても違う。洋服のコーディネートと同じで、色や形のバランスを感覚的に判断してまとめ上げる作業ですから、それはなかなか理屈で人に教えられない部分ですね。
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