難しいのはライカを求めるライカファンの意見である。満を持して発売したライカM5は不評であったので、ライカは1978年に、今までのライカM4に若干の手直しをした過渡的なモデル、ライカM4-2を発表する。このモデルではライカワインダーが調整なしで装着可能で、これは報道関係のカメラマンなどには好評であった。1981年には、M4-Pに28ミリと75ミリのファインダーフレームを追加したライカM4-Pが登場した。
M5のTTLメーターで失敗した経験を生かして、従来のM型のボデイにメーターを組み込んだ、決定打が1984年に登場したライカM6である。
M5ではフィルム面の前に現れる測光素子であったのに対して、M6ではシャッター幕の白い丸の反射をカメラ内部で測光するという方式に改められた。
以来、M6は現行ライカの完成モデルとして実に15年以上のロングランになり、1998年のフォトキナでは、TTLのフラッシュ測光が可能なライカM6TTLとなった。
ところで、私がM6を使うようになったのはつい最近のことなのである。それまでは長い間M5を愛用していたのだ。M5とM6を比較すると、M5はライカの技術が最高水準にあった時代の製品だから、実に作りが良く出来ている。それに対してM6の場合には、お世辞にもその仕上げが最高であるとは言い難い。コストダウンの荒波はライカも例外ではないのである。ただ、実用のライカとしては文句の言いようがないのがM6である。私の最新刊の写真集【FROM RUSSIA WITH LEICA】(アルファベータ)は、モスクワをライカM6で取材したライカスナップの写真集だ。ライカM6一台にレンズはリコーGR28ミリと古いエルマー90ミリの2本だけで、取材した作品集だ。こういう仕事を離れた、フットワークの軽い撮影には、M6は最高の仕事をしてくれる。ただし、最近のライカファンの中には、M6は実用機だけど、愛玩するにはちょっとね、というので、傍らにライカM3を備えるというライカファンも居る。M3はライカがライカであった最高の時代のカメラなのだから、そういう趣味も悪くない。 |