路上観察紀行
路上観察をして、はじめて出会えるいい町並み、
いい景観というものも、たくさんあるんです。

「路上観察」という言葉だけにとらわれてしまうと、路上にある変わったもの、きれいなもの、不思議なものにばかり目がいってしまうけれど、街そのもの、街全体の景観もまた、その観察の重要な対象なのだ──そんなことに気づかせてくれる藤森氏のお話。さらに氏は、ただ路上の面白い写真を撮ることだけが、路上観察の魅力ではないと言います。

 私にとっての路上観察の魅力は、ふだんは行ったことのないところ、行こうとも思わないような場所へ行けることです。路上観察をしようと思って、はじめて足を向ける場所というのがあるのです。路上観察をしていて気がついたことは、特に地方へ行くと、日本にはまだまだいいもの、いい町並み、いい景観がたくさん残っているということですね。これは路上観察をきっかけに、偶然訪れた場所の景色が教えてくれたことです。
登米はスレートの産地でもある。このお寺は屋根にスレートを用いていて、雨を受けるとシットリとした趣が出る。(登米)
蔦がからまる、ならぬ干柿が連なる家。おいしそうな家である。(金成)
登米は元水沢県の県庁所在地で、西洋建築がたくさん残っている。東北大学に在学している頃に、私が研究のために足しげく通った場所でもある。左の建物は、元は警察署だった。(登米)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
登米で見つけた自販機。何も自販機に屋根やナマコ壁をつけなくてもよさそうなものだが。(登米)
 私たちが知りつくしている町並みも、日頃は曲がることのない路地をひとつ曲がってみれば、私たちの知らない新鮮な景観が広がります。そうした身近な発見の喜びも、路上観察の大きな魅力なのです。
 足下に転がる捨て去られた物、建物や看板、電信柱の貼り紙から、町並みそのものにいたるまで、路上観察の被写体は、すぐそこに大きく広がっています。そんな路上観察の豊かな世界を、みなさんもカメラを片手に、一度体験されてはいかがでしょう。今まで気づかなかった写真の魅力に、出逢うことができるかもしれません。
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