秋という季節は日本のためにあるのではないか、
そう思わせるほど、日本の秋は素晴らしい。
■日本列島の自然は世界でも
特殊な環境なのです。
●その恵まれた自然環境が、日本の素晴らしい秋の紅葉を生み出してくれているわけですね?
そうです。私は世界各地の秋を撮ってきましたが、やはり日本の秋、特に紅葉の鮮やかさは世界一です。落葉広葉樹というのは地球上の中緯度から北側に生えていまして、南半球を含むその他の地域は常緑広葉樹が多いのですね。その落葉広葉樹が繁茂している地域の中でも、こんなに樹種が多いのは、日本列島だけです。
日本人は日本の秋の紅葉が美しいということを知っていても、それは世界の秋と比べてのことではないのです。だから実感が湧きづらい。単に美しいと思っているだけで、外国にはない、世界にたった一つしかないという認識がありません。世界の秋を見てきた私には、秋という季節は日本のためにあるのではないかとすら思えてくるのです。
日本の秋を撮るということは、日本列島という、地球上でも特殊な環境の、中でも美しい季節を写真に撮るということなのです。
■もっと自由に秋を撮ってほしい。
●最近のキタムラの「秋の彩フォトコンテスト」で上位入賞される方々の作品は、技術的にも発想の点でも、非常に多彩になってきているように思うのですが、こうした傾向について、先生のご意見をうかがえればと思います。
写真の表現は自由です。写真はこう撮らなければならないなどということが法律で決まっているわけではありませんから、自分が感じたままを撮っていくことが大事だと思います。そのことを応募される皆さんも認識されるようになってきたのでしょう。そういう意味ではアマチュアの方々の表現力が高まってきたと言えると思います。今後もより一層、自由に撮ってもらいたいですね。
ただ一つ、注意していただきたいのは、自由に撮るということはとても大事なことなのですが、自分の感じたことが人に伝わるように、そのことを意識して撮らなければならないということです。自己満足はだめです。そのことには注意を払っていただきたいですね。
秋は空が美しい。PLフィルターを使って、大空の色合いを引き出していく。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF28-70mm F2.8L シャッタースピード:1/60AE フィルム:RVP PLフィルター・手持ち撮影 撮影地:北海道新得町
●先生は審査の際に、以前よりタイトルに注意してほしいと皆さんにアドバイスされていますが、これは具体的にはどのような点に注意すればいいのでしょうか。
タイトルというのは写真の説明ではありません。自分の主張の現れです。その主張を簡潔に明確に表すことが基本です。ですからあまり規制のイメージに捉らわれずに、自分の気持ちと写真の絵との調和をはかったタイトルを付けることに留意していただきたいですね。
もちろん、実際に語るのは写真であり、作品であって、タイトルが語るわけではありません。しかしタイトルは作品が語るのを手助けするのです。その意味で自分の思いをそっと伝える程度が調度いいのではないでしょうか。応募される方々の多くは年齢を経た大人なのですから、その人生体験が現れてくるようなタイトルならば、さらによいと思います。
また、当初に抱いた、日本の秋をどのような観点から撮ろうか、どの場所をどのように撮ろうかという撮影以前の自分の想像が、実際に撮影する現場に立ったときに、どう変化したのか、そのことをタイトルに反映させてもいいのではないでしょうか。
秋は太陽がかなり南へ移行する。そのために斜光線となり、立体感のあるライティングとなってくれる。
■カメラ:ペンタックス67 レンズ:SMCペンタックス67 300mm F4.5 絞り:f16 AE-2/3補正 フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:長野県鬼無里村
晩秋の風景。枯れ木の彼方に日が落ちていく。ややアンダー気味にして、情感を抽出したもの。
■カメラ:ミノルタα9 レンズ:ハイスピードAFアポテレ300mm F2.8G シャッタースピード:Sモード 1/60 AE+2/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:長野県信濃町
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