様々な被写体にレンズを向けてみる。
それが自分の表現への第一歩だと思います。
■ベトナムの大きく変動してゆく様子は
デジタルで記録しています。
●先生は以前から「凝視展」というタイトルの写真展を開催され続けておられますが、今年(2001年)の3月にも東京のオリンパスギャラリーで、「可愛い女越南からの便り」という写真展を「凝視点(25)」として開催されました。ベトナムにもよくお出かけになるのですか?
ベトナムには5年くらい通っています。ベトナムは戦争が終わって急激に変わっています。国民が勤勉なのですね。朝から晩まで働いていますよ。少し前まで通りは自転車の洪水だったのですが、今は50ccのバイクの洪水です。貸自転車と同じように、貸バイク屋というのもあるんです。タクシーのように、指示したところまで乗せてくれるバイク屋もあるんです。そうした変わっていくベトナムの姿を記録しようと撮っています。ベトナムはまだ変わっていくでしょうね。きっと、そのうち、車の洪水が見られるようになるんじゃないでしょうか。
パリから300キロほど離れたオンフルールという海岸街。400〜500年前の古い街並みで、建物ごとに表面の素材が違っているのは、建築された時代が異なるため。また、同じ建物でも階が変わると素材が違っているものもある。画家にも人気が高い街。一軒だけライトがついているのが面白い。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:100-400mm 絞り:f8.0 シャッタースピード:オート フィルム:フジクロームトレビ400 撮影地:オンフルール
●この写真展では、タイトルが「デジタルカメラによる凝視点(25)」とされていましたが、先生はデジタルカメラに力を入れているのですか?
デジタルカメラは、もう使いはじめてから4、5年になるでしょうか。ことさら力を入れているというわけではありませんが、通常の一眼レフと併用しています。
私は毎年、夏になると高知の「よさこい祭り」を撮っているのですが、今年はその後で熊本県の山鹿で行われる「千人灯籠踊り」を撮りに行ったのです。千人もの女性が頭に灯籠を乗せて踊るのですが、それはデジタルカメラで撮りました。
灯籠の小さな光を、千人のスケールを写せるほど高くて遠いところから撮りますから、ストロボはもちろん届きません。スローシャッターにならざるをえないのですが、それでも高感度のフィルムを使わなければ撮れない。通常のカメラの場合、一度高感度フィルムに交換してしまうと、1本取り終えないといけません。デジタルカメラの場合はフィルムがありませんから、感度はカメラの方で設定します。現在のデジタルカメラは機種によっては感度を1600まで設定することができるので、とても便利なのです。いつでも感度を変えることができますから、このときも大変、助かりました。
オンフルールのカフェにて。片づけた椅子を美しく並べていた。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:100-400mm 絞り:f8.0 シャッタースピード:オート フィルム:フジクロームトレビ400 撮影地:オンフルール
パリの公園。ソフトフォーカスレンズで公園を照らすライトを写し込んだ。
■カメラ:ペンタックスMZ-3 レンズ:28mmソフトF2.8 絞り:f5.6 シャッタースピード:オート フィルム:フジクロームトレビ400 撮影地:パリ
オンフルールにて。どこでシャッターチャンスに恵まれるかわからない。
■カメラ:キヤノンEOS-1V レンズ:100-400mm 絞り:f5.6 シャッタースピード:オート AEB露光 フィルム:フジクロームトレビ400 撮影地:オンフルール
■先生に頼ってばかりいたのでは、
自分の写真が撮れなくなります。
●先生の今後の予定を教えてください。
来年(2002年)の8月に「凝視点(26)」として、デジタルカメラで女性の踊っているところを、動的な踊りと静的な踊りの写真を並べて展示する写真展を企画しています。銀座のキヤノンギャラリーでやります。良い言葉が思い浮かばないので、タイトルはまだ未定です(笑)。
東京の古い街並みは、月島ばかりでなく、新宿なども撮り溜めています。これらのいずれ失われていくであろう東京の風景は、今後も撮り続けていきたいですね。
●先生からアマチュアの方々に、アドバイスをいただきたいのですが。
自分の写真を目指してほしいですね。写真教室などへ行くと、当然のことですが先生方から指導を受けるわけです。もちろん、最初はそれは大事なことですし、必要なことでもあるのですが、いつまでも先生に頼ってばかりいたのでは、自分の写真が撮れなくなってしまいます。何を撮っても先生の作風になってしまう。
先生の影響を受けるのはかまわないのですが、影響を受けすぎないように注意していただきたいです。いつかは先生から離れて、自分の写真、自分の表現ができるようになってほしいですね。
そのためには、とにかくたくさんの、違った被写体を撮ってほしい。少しでも面白いと思ったものには、躊躇なくレンズを向けて、シャッターを押してほしいですね。そのうち、徐々に自分の作風に、自分自身が気づいてくると思うのです。私のように故郷とも言える場所を撮り続けるのもいいでしょうし、気に入った街、気に入った場所を撮り続けるのもいいでしょう。自然だけが風景写真ではありません。街にも、もちろん人にも風景はあるのですから。
上のモン・サン・ミシェルの島の中にはホテルもある。
そのホテルの屋根裏部屋から朝陽を撮った。
■カメラ:ペンタックスMZ-3 レンズ:28mmソフトF2.8 絞り:f8.0 シャッタースピード:オート フィルム:フジクロームトレビ400 撮影地:モン・サン・ミシェル
名高いモン・サン・ミシェル。ソフトフォーカスレンズで光を強調し、幻想的に撮ってみた。
■カメラ:ペンタックスMZ-3 レンズ:28mmソフトF2.8 絞り:f5.6 シャッタースピード:オート フィルム:フジクロームトレビ400 撮影地:モン・サン・ミシェル
●最後になりましたが、カメラのキタムラに期待すること、希望することがあったら教えてください。
お客さんに細かいアドバイスができるように、店員の皆さんにもっと商品知識を深めていただきたいです。カメラもデジタルが登場して、次々と機種が増えていますから、お店の方も大変だとは思いますが、ぜひ頑張ってほしい。そうすることで、今より一層、お客さんに新しい情報を提供できるようになると思いますし、写真文化の発展にもつながっていくと思います。
●ありがとうございました。
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