特集

■月島の古い街並みを、モノクロの
ポジフィルムで記録しています。
●先生は日本の街並みには、ご興味がないのですか?

 パリは建物の高さが概ね揃っていますから、たとえば屋根が並んでいる景色を撮ってもきれいなのですね。ところが日本の場合、どこを向いても高層建築が見えますし、建物の高さもマチマチですから、街並みがガタガタしている。パリを見慣れた私には、なかなか絵にしづらいのです。
 ただ、まったく興味がないというわけではありません。最近は東京の月島をよく撮っています。月島には古い街並みがところどころに残っていて、そうした懐かしい路地裏などを記録しておきたいと思って撮っています。昔の東京の下町っぽさを出すために、モノクロのポジフィルムを使っています。
●モノクロというとネガフィルムの方が一般的だと思うのですが、ポジフィルムというのは、ネガフィルムやカラーのリバーサルフィルムと比べて、撮影上で違いはあるのですか?

 モノクロの場合、当たり前ですが色はありません。絵柄を白から黒に至る無限のグレーのトーンで表すわけですが、ポジフィルムの場合は、この階調の調子を出すのが非常に難しいですね。
 撮ろうとする絵柄が、光の当たっている部分と影になっている部分とのコントラストが強いと、どちらかに露出を合わせないといけません。モノクロでもネガフィルムの場合はそれほど気にすることではないのですが、ポジフィルムの場合は、フィルムが光に対してずっとデリケートなのです。黒い部分は真っ黒に潰れやすくなりますし、白い部分は真っ白に飛んで質感が失われやすくなってしまいます。
 ですから撮る前に絵柄をよく見て、コントラストのあまり強い被写体は避けた方がいいでしょうね。そうした難しいフィルムなのですが、うまく撮れたときにはネガフィルムとは一味違った、独特の味わいがあります。
昔懐かしい風情を残す月島の街並み。人も入れて撮りたいのだが、すぐに隠れてしまう。モノクロフィルムはアグファのスカラ。
■カメラ:ペンタックスMZ-S レンズ:24-90mm 絞り:f4 シャッタースピード:オート フィルム:アグファSCALA200X 撮影地:東京都月島
 
 
 
モノクロのポジフィルムはコントラストの強い絵柄には不向き。使用する場合は絵柄を充分に検討した方がよいだろう。
■カメラ:ペンタックスMZ-S レンズ:24-90mm 絞り:f11 シャッタースピード:オート フィルム:アグファSCALA200X 撮影地:東京都月島
路地にはたくさんの植木が並んでいる。狭い露地に少しでも緑を取り入れようとしているのだろう。以前は東京のそこここで見られたこうした景色も、今となっては貴重なものとなってしまった。
■カメラ:ペンタックスMZ-S レンズ:24-90mm 絞り:f4 シャッタースピード:オート フィルム:アグファSCALA200X 撮影地:東京都月島
 
 
 
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