大きくプリントして、しばらく眺めて見ることが上達へつながります。
――プリントしてみて初めて気が付くこともあるのではないでしょうか?

 大きくプリントしたら1ヶ月くらいは自分の部屋に飾って眺めてみるといいと思います。毎日見ても飽きなければ絶対にいい写真です。いろいろな人に見てもらって批評を仰ぐことも大切です。大きくプリントすることで僅かなピンボケもわかります。
 人間は習性として近くにあるものをしっかりと見ようとします。平面の写真を立体的に見せる工夫も必要です。ですから写真を撮る際も遠くにある山にピントを合わせる必要はありません。風景の場合は手前の方にしっかりとピントを合わせるのがポイントです。


【厳冬期の渋峠】群馬県と長野県にまたがる渋峠。厳冬期には写真ファンが集まる。夕方雲が焼ける時間帯に何人かは下のポイントヘ向かった。しかし僕は、この辺りで焼けると信じその瞬間を待った。梢のバランスと流れて行く雲の形がマッチし、雲がピンク色に染まった瞬間を撮った。
■カメラ:ペンタックスK10D レンズ: DA-12-24mm F4ED シャッタースピード: 1/125秒  絞り: f5 -1EV補正 C-PL ISO感度200 RAW 撮影地:長野県渋峠

誰かが撮った写真と同じものを撮ることは、写真をダメにすることになります。
人と違うものを撮るという考え方を持たないといけません。
――近年、写真愛好家が増えています。人気の撮影地は大勢の写真家でにぎわっていますが、それに伴いトラブルも増えているようです。こうした状況に対してはどのようにお考えでしょうか?

【春を待つ福寿草】雪の下から福寿草の蕾が膨らみ始めていた。福寿草がその暖かさで雪を融かし、表面のみが外気温で氷になっている様子に生命力を感じた。もうすぐ雪融け、春はすぐそこという感じがし、足許の冷たさを忘れてファインダーに集中した。
■カメラ:ペンタックスK10D レンズ: DFA-MACRO100mm F2.8 シャッタースピード: 1/60秒 絞り: f16 -0.3EV補正 C-PL ISO感度400 RAW 撮影地:福島県いわき市


 人気撮影スポットに出かけて撮るということは、誰かが撮った後を追っているだけです。それはその人の写真をダメにしています。人と違うものを撮るという考え方を持たないといけません。また、そのようなところで撮影した写真がコンテストで入賞したりするので、さらにカメラマンが集中するということになってしまいます。たとえそのような場所に行っても、人とは違う写真を撮ることです。それができないのならたくさん人がいるような場所には行かないことです。多くの人が写真を撮っているところに行って、その間に割り込んで撮るのは無神経なことですし、写真を撮るために集中している人のそばでゴソゴソしていたら、その人の集中力が切れてしまいます。写真を撮るときは自分の世界に入っている訳ですから、それを壊すようなことは慎まなければなりません。私も自分が撮りたいところだけれど先に撮影者がいる場合は、その人が居なくなるまで待っています。ましてやカメラを覗いているときは絶対にそばに行きません。


ルールやマナーを守らないことは、撮影以前の問題です。
――写真家同士だけでなく、一般の方にも迷惑な行為が問題になってきているようです。

【寒立馬】牧場主の許可を得て場内へ入れてもらった。凄い地吹雪で撮影できるのかと言われたが、馬に近づくと不思議に地吹雪が止んだ。馬は雪の中の牧草を食んでいた。カメラを馬の鼻先の地面につけノーファインダーでオートフォーカスで撮影した。
■カメラ:ペンタックスMZ-S レンズ:FA☆24mmF2 シャッタースピード:1/60秒 絞り:f11C-PL フジクロームベルビア50 ISO感度50 撮影地:青森県東通村


 以前訪れた八甲田山では信じられない出来事に遭遇しました。残雪の上を足で汚している人がいました。それはきれいな残雪を他人に撮らせないための行為のようでした。また、花を撮影した後に千切ってしまうなどの行為をする人もいると聞きます。まったく何を考えているのかと呆れるばかりです。「“マナーやルール”を守れない人は写真を撮ることをやめなさい」と言いたい。このことは写真の世界だけの問題ではありません。
 写真を撮っている人同士だけでなく、一般の人に対して迷惑な行為があると撮影禁止などの処置を受けることもあります。例えば通路に平気で三脚を立てる。それも長時間に及ぶこともあります。こうした行為は意外なことに中高年の方に多く見られます。普段は常識のある方々も写真を撮るときには非常識なことをしています。カメラを持つと何か特権を持ったように勘違いをするのでしょうか?撮影のルールを守らないカメラマンが問題になっていますが、これは写真を撮る以前の問題で社会的な問題です。アマチュアに指導する立場として大変心を痛めています。
 ですから、これまで自分の庭のような気持ちで通っている東京の新宿御苑でも“ルール・マナー違反”が目に余るようになり気分よく撮影できないために、最近はあまり足が向かなくなってしまいました。皆さんもマナー向上に努め、これからのフォトライフを一緒に楽しんでいきましょう。

――本日はお忙しいところありがとうございました。


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